ある少年
17年前フィガロとカールに出会ったホームセンターが閉店しました。
映画スタジオに隣接していたホームセンターは長きにわたり撮影に必要な材料なども揃えていたので、そことは抱き合わせで、経営が経ちいかなくなると、その都度オーナーが変わりつつ続いていたのですが、今回は次に何になるかもわからず閉店。日が暮れる前に散歩の途中でちょっと寄ってみました。
広い駐車場も車が入れないようにパイロンとか置いてあります。
その間を抜けて小学3年生くらいの男の子が一人自転車をぐるぐると8の字を描いて乗り回しています。確かに今なら、広くて、車も来ないし、のびのびと自転車で蛇行もできる。
柵の閉まったホームセンターの前で空っぽの商品棚が並んでいるのを見ると、賑やかに花の苗が並んでいた時のことが思い出されます。
初めてウィンドーで飛び跳ねていたフィガロとカールを見つけた時のことも、、、
思い出に閉店のお知らせを入れて写真に撮っていると
自転車の少年がスッと私の横へやってきて止まりました。
ふと横を見ると少年と目が合いました。
感じのいい素直そうな少年。私の顔を覗き込んで黙っているので
ここ閉店しちゃったね
というと、
「うん」
と、少し私の寂しさに合わせるように返事をして、彼も閉まったホームセンターに目をやりました。
「BMXの練習してるの」
え?突然なに? ああ、あの自転車の蛇行はBMXの練習だったのか
へえ、BMXの選手になりたいの?
「うん」
そうか、オリンピック出られるといいね。頑張ってね!
「うん」
でも、もう日が暮れるし、ここ危ないから気をつけてね
そういって私が帰り道につくと、後ろから
「じゃあねー」
と少年は大きく手を振りました。
私も手を振り返し、また背中を向けて歩き出しました。
なんだったんだろうあの子。見れば自転車は新品だったみたい
誰かに見せたかったのか?
それにしても、見ず知らずのおばさんに寄ってくるのか?
なんだか、ドラマのシーンみたいだった不思議な出来事