虎に翼最終回前日にあった判決とともに
袴田さんに無罪判決
2024年9月26日
58年前に静岡で一家4人が殺害された事件の再審が行われ、一度は死刑判決を受けた袴田巌さんが無罪になりました。
捜査機関によって証拠が捏造された。
捏造されたことを認められるまでに58年。
虎に翼開始以来 法というものがどのように生活と関わり合っているのか
初めて知ったことばかりでした。
私は、法律とは何か事件が起こった時に、その善悪を決める基準なのだろうと思い込んでいましたが、こんなにも多くの人が一つの事の正義について考え、時にその結論が正反対の方向へ動く。人間が人間として、性別も出生地も年齢も身分も関係なく、正しいのか?正しくないのか?を問い続けるものだと知りました。
ヒロインらしからぬヒロイン
このテーマを背負うヒロインに伊藤沙莉さんが起用されたことは、いっそう
共感を強くしました。
失礼ながらいわゆる典型的な整った容姿の朝ドラヒロインではなく、むしろ
そんなお人形さんのようなタイプでは到底表現できない、痛快な明るさと強さ。
初回の自己紹介で自分の名前を完全に不貞腐れて言うインパクトは衝撃でした。
あわてんぼう、おっちょこちょいなんてありがちな設定ではなくて、澱みなく正論をぶちかます長台詞。世間の常識でも違和感があると「はて?」と言って食いついていくその一途さ。
間違っていれば自分の先生であっても面と向かって異議を唱える。
穂高先生を叱責するシーンはXを見ていても視聴者が本気で「あれは失礼だろ」と
感じてしまうほどの勢い。
私にとってその強さは毎回痛快で、気持ち良くて気持ちよくて。よくぞ言った!と心で拍手を送っていました。
女子部の仲間たちと家庭裁判所
そして主人公を取り巻く仲間たち
貧しさに子供の時家を出た よね
韓国からやってきて理不尽な差別を受けるヒャンちゃん
夫と嫁ぎ先から道具のように扱われていた梅子さん
華族として一見満たされているように見えて実は孤独だった涼子様
戦前から戦後にかけてそれぞれの境遇が目覚ましく変化する中でたくましく生きながら、また法を中心に集まってくる仲間たち
新憲法のもと多岐川、工藤、桂馬たちが奮闘しながら作り上げていく家庭裁判所
実際のモデルである三淵嘉子さんもきっとこんな風に強く逞しく頑張っておられたのだろうとリアルに思えました。
そして寅子の家族
インテリかつ柔軟でいつも寅子を愛し続ける父
厳しく寅子の行く手に立ちはだかりながらも、最後まで娘を信じて協力する母はる
父親譲りなのか楽観的で前向きな兄直道
親友で賢く思慮深いアドヴァイザー兄嫁花江
素直で一途な協力者弟直明
一人一人の個性が織りなす家族のシーンの立体感は優れた俳優陣ならではの最高の世界でした。
中でも直言の亡くなるシーンは印象的で、次々懺悔が出てくるセリフは死に際と思いつつ面白い。でもそこに花江ちゃんが
「生きてるうちにお別れできるんだから」と突っ込んでくる一言の重さは本当に突き刺さりました。
優三さんとの変顔の別れのシーンは言うまでもなく、悲しく切なく
航一さんと結ばれるシーンは言うまでもなく、美しく
何もかもが楽しみな毎日でした
知らなかった数々の裁判
その中で語られていく
尊属殺人重罰規定 違憲判決
原爆裁判 国際法違反判決
どちらの判決もそれに至るまでの経緯の長さを知った時、マスコミでは忘れ去られた事件でも解決していないことは無数にあることをこのドラマは教えてくれました。
その最終回を迎える1日前に袴田さんの無罪判決のニュース
証拠を捏造されて、死刑判決を受けて58年。
彼の人生を思うとたまらなく切なくなります
それでも、どんな小さなことであっても法は問われ続けなければならない。
そして人間として正しく認められる答えはなんなのか、問うことをやめてはいけないのだと教えてくれました。
半年間素晴らしい作品を作ってくださってありがとうございました。
Bravi!!!