
白いトロイカ 水野英子作
水野英子作品で、私の心に深く刻まれている作品は「白いトロイカ」
革命家の夫を持つプリマドンナが、夫と政府に追い詰められ逃げる時に一人娘を農家に預けて行き、のちにその娘が歌手に成長し、再び革命の渦の中に巻き込まれていく物語。
歌手になっていく主人公の姿に憧れを持って読んだ作品でした。
ロシアの風景、気候、富裕層と貧しい人の生活の差、通貨、交通手段、
知らない国の情報が目に飛び込んでくるまんが。
そして星のついている目に、クルクルの縦に巻かれた髪型、大きく裾の広がったドレスに毛皮がついたコート。真っ黒に日焼けしてパンパンの小学生だった私は、いつの間にかこの華奢で可愛い主人公になったような気分で、まんがの世界に入り込んでいました。
展示にはかつての単行本や連載していた週刊マーガレットが並んでいて、どれをみても懐かしい。かつて私の枕元や本棚に無造作に放り込まれていたまんがが、今はガラスのケースに収められ、「触らないで」とバリアをはられているなんて、ずいぶんと遠くへ行ってしまった。
白いトロイカだけでなく「星のたてごと」「ハロードク!こんにちは先生」見ると思い出す作品もたくさんあります。そして壁にかけられた名場面のパネルを見た途端に、読んだ頃の自分が戻ってきました。1コマ、1コマのセリフを言う登場人物が私の脳内でいきいきとよみがえり、なんだか胸がいっぱいになりました。このまんがを毎日毎日寝っ転がって読んでいた時代ってなんて幸せだったのだろう。
この物語の中で、母親がいつも主人公に歌って聴かせていた子守唄があります。
それが何回か出てくるのですが、歌詞だけでメロディは分かりません。
当時私は脳内で勝手に作曲して、その歌のところに来ると心の中で歌っていました。実体のない曲。試しに頭の中で歌い出してみると、今でも最後まで覚えていました。
まんがが大好きだった私はかなりの蔵書がありましたが、いつだったか処分してしまいました。その時残したものがあっただろうか?
白いトロイカ、実家の押し入れを探してみようか?
半世紀ぶりに再会した作品がまた無性に読みたくなってしまいます。
昭和40年から階下におり、ショップに立ち寄ると、記念グッズのポストカードなどと一緒にお薬手帳が!
思わず吹き出す私!
そうだよねーこれが欲しいのはお薬手帳世代だよねー
白いトロイカが遠くへ行ってしまった分自分は歳をとったのだな
あたたかい陽の光の差し込む洋館は、私の思い出もあたたかく包んでくれました。