OKR徹底入門|『Measure What Matters』の紹介 #プロダクト筋トレ
先日 #プロダクト筋トレ コミュニティの図書館LTという会で、OKRを広めた立役者ともいえる、ジョン・ドーア氏の『Measure What Matters』を紹介しましたので、簡単に記事でもご紹介をしたいと思います。
※OKR=Objective and Key Resultsの略
OKRの父、アンディ・グローブ
ご存じの方も多いと思いますが、OKRはインテル創業3人目の社員である、アンディ・グローブにより考案されたものです。アンディ・グローブはすでに亡くなられていますが、製造業で用いられていた管理手法をホワイトカラーに適用しようと、行動科学や認知心理学など読み漁り、OKRの前身である、iMBOをインテルで導入、運用していたといいます。
OKRは、MBOの進化系としてアンディ・グローブが考案したものであると、本書では紹介されています。MBOとは、Management by Objectiveの略で、ドラッカーの『現代の経営』(1954年)で、「目標と自己統制による管理」と呼ばれていたもので、これはそれまでに主流と言われていた科学的管理法のアンチテーゼ的に提唱されたもので、結果重視、人間重視のマネジメント手法(思想)です。
アンディ・グローブも同様に、アウトプット(成果)を重視する環境を作ったことで有名で(『ハイアウトプットマネジメント』)、さらに当時はHPもこのMBOを取り入れていたということで多くのシリコンバレー系企業がMBOを採用していたと思われます。
MBOの問題点
このMBOには様々な課題がありました。
●目標を本社が中央集権的に決め、
それが末端まで降りていくのに恐ろしく時間がかかった
●頻繁に更新しないために停滞したり、たこつぼ化してしまう
●MBOが給与と連動させてしまうことで、
リスクを取ることがマイナス評価になりかねない状態を作った
確かに、自分自身も会社の制度として、MBOを設定が義務付けられ、マネジャーはそれをレビューすることが義務付けられていた環境にいたのですが、よく言われていたのは、「達成できる目標を書いておけ」や「形式的なものだから‥」のような言葉です。なんとなく違和感を持っていましたが、まあ給与の一部だったので、(オーバー・アチーブしたほうが得だろう)くらいに思っていました。
OKRの威力を発揮する基礎 FACTS
OKRの威力、として本書では、4つのポイントで紹介しています。これを実際にジョン・ドーア氏は、Focus、Alignment、Commitment、Tracking、Stretchingの頭文字をとってFACTSと呼んでいます。FACTSという略称については本書では紹介されておらず、Harvard Business Reviewのインタビュー記事で見つけました。
本書の中では、大企業、スタートアップ、NPOなどあらゆる組織でOKRを導入することによるポジティブな変化が紹介されています。実際のOKRの例なども紹介されていますので、詳細については、ぜひ読んで確認してみてください。
血を通わせるための手段、CFR
目標設定はOKR、OKRに血を通わせる方法として、Conversation、Feedback、Recognitionの頭文字をとったCFRというフレームワークが本書では紹介されています。
OKRに飛びついて表面的にObjective and Key Resultsを書くだけでは駄目だということで、もともとMBOの課題点であったタコツボ化、トップダウンで別部署との連携できないなどのことを防ぐ手法であるとも言えるかと思います。
アンディ・グローブは著書『ハイアウトプット・マネジメント』の中で、
マネジャーが面談に90分かけるとそれから2週間にわたって部下の仕事の質を高められる
と語ったそうです。「1on1なんて会話することもないし」「時間がもったいない」などのコメントはありそうですが、1on1やマネジャーとコントリビューターとのミーティングを効果的に実施できれば、アウトプットを最大化できる、というのがアンディの主張することだと思います。そのためにマネジャーも日々学習し、適切にコントリビューターを方向づけできる、そんな手腕が必要になってくるのだと思いました。
Recognition(承認)に関しては軽視されがちだと説明されています。承認というより、認知、評価、という方がしっくりくると思います。
『ありがとう』と口を出していうのはチームのエンゲージメントを高める最高の手段だ。(中略)積極的に社員を承認する企業は、そうではない企業と比べて社員の自発的退社が31%少ない
ーDelloite Review, issue16
上記のように、Recognitionにより「良い行動をした」ということが行動した本人にフィードバックされることにより、そのような行動を継続させることが狙いであるかと思います。
また、このRecognitionには、「この会社ではこのような行動が評価される」といった明確な基準なども持っておくと良いということです。
文化の重要性
ここまで読んでくるとOKRはただの目標設定をするためのフォーマットである、という誤解がなんとなく解けてくるかと思います。更に感の良い方は、「む・・。このCFRとやらを回すのかなり難易度高いのでは?」と思うでしょう。
そこで文化の重要性が本書では語られています。OKRの威力を発揮するためのFACTS、そしてCFRを実施すればほとんどの問題が解決しそうですが。「積極的透明性」をもったコミュニケーションやフィードバックは、心理的安全性がない文化では、なかなか難しいものです。直接的なコミュニケーションや、ポジティブ、ネガティブ両方のフィードバックができる文化にしていくためには、マネジメント層の教育、現場への教育、小さな積み上げでしか成り立たないものではないかと思いました。
まとめ的なもの
以下の図のように、Measure What Mattersで書かれている全体像をざっくりとまとめてみました。
今まで説明してきたように、OKRはOKRのみならず。それを浸透させるためのコミュニケーションプラン、プロセス改変、文化のレイヤーへの介入、などなど様々なことを気にしなければなりません。
体系的な目標設定を定着させるには、まず経営幹部がそのプロセスにコミットする必要がある、ということだ。幹部クラスがOKRへの抵抗感を克服し、そのプロセスになじむには1~2四半期はかかる。
上記の文章にあるように、幹部クラスでさえ慣れるのに半年かかるものを現場に3ヶ月などの短期間で浸透させる、と考えるのはやめたほうが良さそうです。また、まずは幹部クラスからOKRのプロセスになれ、自社の文化を活かした上での工夫を考え、実装していく必要がありそうです。さらにはコントリビューターとのコミュニケーションを適切に行うためのトレーニングなどを受けたり少しでも準備しておく必要があるかもしれません。
さいごにジョン・ドーア氏が本書の冒頭と末尾で書いている名言をご紹介します。
事例豊富で、何度も読みたい本になりました。まだ読んでいないかたはぜひ読んでみてください。
資料
発表した資料を公開します。誤字脱字があるかもしれませんが・・。