プリテンダーなチョコ
食品表示検定協会からメールが届いた。
上級の受験には二の足を踏んでいる。
合格率10%台の民間試験で、検定料2万円はもはや博打だ。
メールには、2022年の食品表示検定の案内と、チョコレート類の表示に関する公正取引規約が改正された、という情報が書かれていた。
規約のリンクを開くと、40ページのPDFがぬりかべのように立ちはだかった。
要は、食品表示基準との内容統一、原材料の表示規定追加、アルコールを多く含む/香辛料を多く含む場合に注意表示が必須になったという。
より消費者にとってわかりやすく、安心安全に。
40ページのPDFも、より製造者にとってわかりやすく、安心安全にしてくれることを願う。
バグかと思うほど「この規約において」という枕詞が出てくる。たまには「ここだけの話だけど」とか「他の規約は知らんけど」とか仕込んでおいてほしい。
事務的な説明はコンパクトに、親しみやすくを心掛けたい。
関西で働くひとへNewDaysを説明するのに、「ハートイン」とひとこと言ったら伝わった。どちらも、JRが運営するエキナカのコンビニエンスストアである。東のNewDays、西のハートイン。
ハートイン、知らぬ間に、セブンイレブンに塗り替えられていた。この説明もいつか通じなくなるのか。
先日、極寒のバス待ちの間、暖を取るために思わず飛び込んだNewDaysで目についたのがこれだ。
JR西日本岡山支社が手がける「ふるさとおこしプロジェクト」の一環として販売されている、せとうち産の果物や、岡山産の食材を散りばめたチョコレートだという。
首都圏のNewDaysでは2021年から取り扱いしているそうだ。電車に乗る機会もめっきり減り、エキナカをじっくり見ることもしない1年だったので、気づかなかった。
コンビニのチョコレートにしてはお高い600円~800円でも、わたしはせとうち産オレンジという響きに弱い。知らないせとうち産オレンジでも、すぐ着いていってしまう。
味はほかにも<岡山産イチジクとせとうち産オレンジの紅茶チョコレート>や<岡山産雲海ピオーネとせとうち産キウイのピスタチオチョコレート>など、全9種類。
お札サイズの外函はおそらく全種共通で、味ごとに可食部の写真や裏面表示のシールを貼り変えている。
このやり方だと、食品表示基準や公正取引規約が改正されたときに函の改版をする必要がないし、すぐ対応できていい。
見事としかいいようのない、ドライフルーツの配置バランス。
金色のトレイが額縁のようで、絵画のようなプリテンダー。ドライフルーツをひとつひとつ手作業で並べないと、こうは収まらない。
ちょっとオレンジの皮がかためで、割ったときにオレンジの皮一枚でチョコレートが繋がっている状態になってしまった。ドライフルーツだからそういうもんだ、と割り切る。
オレンジとキウイの酸味は思ったよりも控えめで、まろやかなビターチョコレートによく合う。
チョコレート生地が少しサクサクしていて食べやすい。原材料を見ると、「焼き菓子」とあるから、細かいクランチが入っているようだ。商品説明には書いていないのだが、芸が細かい。
表示に()が多すぎて、因数分解のようなプリテンダー。
原材料は、使用した重量が多い順に表示するルールになっている。この場合、一見するとチョコレートもしくはカカオマスが一番多いように見える。
実際は砂糖が一番多いだろう。チョコレートにも、サクサク要因の焼き菓子にも砂糖が使われているし、ドライフルーツにはグラニュー糖が使用されている。因数分解を展開したら、最初に砂糖がくるはずだ。
コンパクトにまとめると、わかりやすいような、わかりにくいような。
辛いけど否めない。答えは分からない。君の運命のヒトは僕じゃない。
たったひとつ、確かなことがあるとするのならば「全種類食べたい」。
もとい
「ホワイトデーにいただきたい」。
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