アイスは厚着するのに
食欲の秋、芸術の秋、スポーツの秋。
ひとは、なにかと秋に詰め込みがちだ。
だがここまで気温が上下すると、なんなの秋、と思ってしまう。
そもそも秋側も、なぜ自分にばかりアクティビティやアイデンティティを押しつけてくるの?なんなの?とプレッシャーを感じているかもしれない。
ついつい腕まくりをしてしまう間は、まだまだ冷たいアイスが心地いい。
ただ、アイス側はすでに衣替えをしている。
なにかとコーティングしている、重ね着や厚着のアイスが増えてきた。
明るいグリーンのボトムスに、マットなピンクのトップスに、ラメ入りブラウンの羽織り物。
こういう服のひとが歩いていたら、前世は南国の鳥だったのかな?と思ってしまうくらいの華やかさ。
アイス部とラズベリーチョココーティング部。
なにその部活入りたい。
浮かれたライングループの名称感は否めないものの、わたしもラズベリーチョコ塗装したい。放課後スプラトゥーンしたい。
ナッツ感満載、断面がっつりピスタチオ。
ピスタチオの香ばしさと、チョコレートのコクのある甘みがバランスよく、後味は比較的さっぱりしている。
見た目のはなやかさのわりに、上品な甘みでシンプルな味わい。クラッシュピスタチオのザクザク食感も、食べごたえがある。
ラズベリーチョココーティング部は、その色のわりに酸味がひかえめで、ほのかに香り感じる程度だ。
このアイスはピスタチオが主演で、ラズベリーチョココーティング部は衣装部なのかもしれない。
といいながら、下のほうはラズベリーチョココーティング部が主役の装い。
しかしあくまでコーティングなので、マイルドな酸味と、彩りを与えるにとどまっている。
わざわざ「ラズベリーチョコの色が見えるよう、セミスイートチョコで全面を覆っていません」と注意書きがある。
ラズベリーチョココーティング部から、「われわれの仕事が見えないではないか」という抗議でも入ったのだろうか。
似たようなコーデのアイスが、時を同じくして他メーカーから出ていた。
こちらは茶色のロングコートに薄緑のワンピース、そうね誕生石ならルビーなのといった装い。
柔軟剤のCMのワンシーンかと思うくらい、ピスタチオやラズベリー、チョコレートの破片がふわりと飛び交っている。
天面から開けるタイプの紙箱に、アイスバーが収まっている。プレミアムガーナの名のとおり、出会ったことのない高級感。
マットなこげ茶でくるまれた、シンプルなチョコバー。
チョココーティングがとても薄くて、パリッと音が気持ちいい。
外観のシックさとは打ってかわって、さわやかで分厚いグリーンの中に、真紅のラズベリーソースがとろり。
こちらはラズベリー果汁7%ということもあり、ラズベリーが主役に感じた。ピスタチオのアイス部分に比べて、量はさほど多くないのに。
主張の強いはなやかな酸味を、ピスタチオの香ばしくやわらかな甘味がどーんと受け止める。
パリパリのチョコレートコーティングも口の中の熱でとろりと溶けて、するりと食べ終えてしまう。
しっかり味が濃くて、小悪魔的な味わいだ。
パルムはピスタチオや香ばしさをしっかり味わいたいひと向け、プレミアムガーナはラズベリーの風味と酸味がたまらないひと向け、といったところだろうか。
そろそろ、暦の上では雪見だいふくが冷凍ケースを牛耳ってもおかしくない。
アイスはさらに厚着する。
まだ半袖の腕のうえでは、文鳥だって大福と化している。
人間の衣替えは、一体いつになるだろうか。
このままだと、薄着の秋で終わってしまう。
どこなの、秋。
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