【準備編】R7年度京大理物院試体験記①(天体核)
はじめまして。Naoです。
猛暑が続く8月末。京大理物修士課程の院試がありました。
それまで院試はやってこないと思って生きてきたので、8月に入ったときは院試が現実のものとして迫ってきてビビりました。人生は時間発展しており、院試はObservableです。
院試対策は油断と準備不足の連続でした。正直院試なめてた。。。院試でも大学受験並みに勉強することになり、8月に入ってからはストレスマシマシでした。ですが、院試勉強の甲斐あって、宇宙・重力理論で日本トップの天体核研究室に合格することができました。
自身の院試対策を振り返るとともに、皆さんが参考にできる情報を院試体験記としてここにまとめます。
院試を経てつくづく感じることは、
院試は情報戦
だということです。院試を経験した先輩から話を聞いたり、同級生で情報を共有するなどして、常に情報をアップデートすることを心がけましょう。
先輩は院試の裏話を知っていることもあり、自身の戦略に活かせるとともにモチベーションの向上にも繋がります。この記事もその役に立つことを目指しました。長くなってしまったのでコーヒーでも飲みながら気楽に読んでください。
目次は以下の通りです。自身の体験に合わせて、時系列に沿って並べています。院試を攻略するには、時期に合わせて適切な行動を選択していくことが重要です。
院試は落ちるときはまじで落ちます。事前に出来る限りの対策をして、悔いのない学部生活を送ってください。
院試所感
まず初めに院試の感想を。
院試対策は苦しいです。
学部入試のときとは違い、院試には模試も赤本もありません。研究者の素質として必要なことではありますが、自分の到達度を理解して常に適切で効果的な学習を続けることが求められます。院試勉強を続けていると、この勉強法で問題が解けるようになるのか、このままでいいのか、他の人はもっと賢いのではないか、という不安に悩まされることになります。
また、「院試は落ちない」「院浪するなら働け」というような世間の認識からのプレッシャーも焦りや不安につながります。
院試経験者ならわかると思いますが、自分の立ち位置がわからない中で合格の期待を感じるので気分は最悪です。
この種の悩みは尽きることはありませんが、ここで助けになるのが友達(ゼミ仲間)の存在です。一人で院試対策を続けていれば、大抵の人は病みます。長期的な戦いを乗り越えるためにも、院試ゼミなどの精神安定&相互成長のシステムを利用することが肝要です。
研究室の先輩が言っていたことですが、院試勉強からは周りの賢い人の考え方から学び成長する能力も求められます。自分の力だけだと限りがあるので、院試ゼミを組んで対策を進めることが院試を乗り越える重要なポイントです。
春休みから4月ごろ
院試を受験するほとんどの学生はこの時期から院試を意識し始めます。僕の周りにも、春休みから院試ゼミを開いている人たちがちらほらいました。春休みは自由な時間がたっぷりあるので、この時期に院試合格を目指した分析を徹底的に行っておくことをお勧めします。
一般的に実験よりも理論分野の方が合格の難易度は高いので、その分より多くの対策が必要です。僕の研究室の先生も理論分野に受かるためには春休みから対策しても遅くない、という意見でした。しかし、どの分野を受けるにしても合格を目指すために考えるべき主なことは、以下の3つです。
出願する研究室
受験に必要な書類
各分野に対する理解度
それぞれについてどれくらい対策できたかが、合否やその後の進路に直結します。
出願する研究室について
この項目は研究室選びについて現実的な内容が多いです。面倒くさくて後回しにしがちだと思います(僕もそうでした)。しかし、後の人生を大きく左右する内容なのでできるだけ早めにたくさん調べて深く考えておくことをお勧めします。
ほとんどの大学で同じだと思いますが、院試は研究室単位で出願することになります。学部の頃とは違い、修士課程で進む研究室はその後のキャリアに大きく影響する可能性が高いです。そのため、自分の人生がかかっていることを強く意識して研究室を選ぶことが大事です。
研究室を選ぶ基準
僕はまだ学部生なので研究室の内部事情には詳しくないですが、研究室を選ぶ基準はいくつかあると思います。まず、スタート地点として、自身の興味に沿った研究室を調べてみましょう。少なくとも学部卒業後の2年間は選んだ研究室で過ごすことになるので、自分が興味を持ち続けられるということは最低条件です。その上で、研究室の候補が出揃ったらできるだけ早く研究室訪問をしましょう。
多くの人は春休みから5月あたり、遅くても6月までに研究室を訪問しています。距離が近い場合は直接伺うのが良いです。合格ラインギリギリとかだと、人となりを知っている方が選ばれる可能性が高いはずです。また、大学が遠くて直接赴くのが難しい場合は、オンラインでの訪問を申し込むのが良いと思います。いずれの場合でも、大抵の研究室は快く訪問を受け入れてくれます。
研究室を訪問した際に確認すべきことは、以下の通りです。
自分のしたい研究ができるかどうか
研究室の雰囲気・教育方針
修士・博士課程後の進路
自分のしたい研究
まず、自分のしたい研究ができることが大前提です。分野として一致していたとしても、自分のしたい研究がそのままできるとは限りません。僕の場合だと、量子情報に関連してブラックホールの情報パラドクスのような、量子系を量子情報的に解析する研究に興味がありました。しかし、基礎物理学研究所の量子情報研究室を訪れた際には、そのような研究は行っていないと言われました(京大にも物理よりの量子情報の研究室があってほしいですね)。研究室に入ってからでは遅いので、研究室訪問の際に興味のある研究に取り組めるかどうかを見極めましょう。
研究室の雰囲気
また、研究室の雰囲気も重要な要素です。語弊があるかもしれませんが、興味のある研究ができるかどうかより、
指導教官との相性が大事
ということをよく聞きます。大学院は学部よりも精神的に病みやすい場所です。そのため、精神的に健やかに研究を続けるためにも、研究室の教授や大学院生と馬が合いそうかどうかも確認しておきましょう。研究室訪問で大体の雰囲気は掴めるはずです。さらに、研究室によって放任主義なところもあれば、丁寧な指導がモットーなところもあります。自分がどちらの教育方針に合っているのかも意識しながら研究室を選ぶと良いです。
卒業後の進路
最後に、大学院を卒業した後の進路についても確認しておくと良いと思います。卒業後の進路がアカデミアに偏っているところもあれば、就職に強い研究室もあります。卒業後の進路の様々な可能性に対して、どの研究室が適しているかも考えるべき大切な事柄です。これも研究室の教授に聞けば大体わかると思うので、研究室選びの参考にしましょう。
また、別の要素として、僕は志望する研究室を選ぶ際に
「夢か現実か」
ということも意識しました。僕は昔から重力や時空の構造に興味があったので、その分野で日本トップの天体核研究室を第一志望に選びました。この研究室を選んだ要素としては、上記の事項に加えて夢を追う部分が大きいです。
これに対して、第二志望に選んだのは量子情報研究室です。もちろん分野に対する興味はありましたが、将来的な就職のしやすさを考慮して選びました。
第一志望に受からない場合は自分に才能がないことを認め、コンプレックスを抱きながら似た分野で研究するよりも、きっぱりと「就職で強くなる」という方向性で人生を進めようと考えていました。このような考え方も研究室を選ぶ際の参考にしてみてください。
この方は高校の部活時代からの先輩で今でも仲が良いのですが、この点に関して僕と同じような考えをしていて驚きました。この方の記事も参考になるので是非読んでみてください。
おまけとして、研究室を訪問した際のメリットについて述べます。実際に研究室に足を運んで教授や院生と話をすると、様々な情報が得られます。
その研究室の研究内容について詳しくなれるのは当然ですが、研究室側も学生が院試のことを気にしていることを知っています。そのため、院試に関する情報も提供してくれることが多いです。年度によっても異なりますが、研究室の足切りラインや(天体核だと7割とか)、もしかしたら先輩が解いた過去問の解答がもらえる場合もあると思います。研究室訪問はやるだけ得です。
受験に必要な書類
次に、院試を受験するために必要な書類についての理解も深めましょう。僕が受けた京大理物の場合は、特に注意を払うべき書類として以下の3つがありました。
TOEICの成績証明書(紙)
志望理由書(A4で2ページ)
物理学に関して特に関心を持った内容(A4で2ページ)
TOEIC
まず一つ目は、TOEICの成績証明書です。京大理物は今年度から、TOEICの成績証明書の締め切りが出願書類と同じ6月末になりました。TOEICは試験を受けてから結果が書類で送られてくるまでに一ヶ月ほどかかるので、5月末頃の試験がラストチャンスということになります。しかし、試験の申し込みは一ヶ月半ほど前に締め切られるので、遅くても4月には試験を申し込む必要があります。
この辺りのスケジュール事情はとても重要なのですが、内部生でも大学側から通知が来ることはありません。そのため、TOEICの情報も同級生で共有し、春休みに一度試験を受けるくらいの余裕を持って対策することをお勧めします。僕はワンチャンスで5月末の試験を受け、成績証明書が出願に間に合うかでヒヤヒヤすることになりました。余計な心労を減らすためにも、事前の準備を心がけましょう。
志望理由書
二つ目は、志望理由書です。京大理物の場合は、大体第四志望まで研究室を選ぶことができます。第一から第四までまとめてA4で2ページ以内に志望理由書を書くことになります。正直、研究について詳しくない状態で志望理由書を書くのはとても難しかったです。興味のある研究分野やその拡がりは一朝一夕にまとめることはできません。そのため、長期的に少しずつ情報収集をすることが大事です。研究室訪問をするとまとまった情報を得られるので、早め早めに情報を集めて出願前から少しずつ自分なりにまとめることをお勧めします。
関心を持った内容
三つ目が関門なのですが、今まで物理学について学んできた中で特に関心を持った内容についてA4で2ページ以内にまとめる必要があります。これも直前になって考えるのでは間に合わずにボロが出てしまう可能性が高いので、事前の準備が重要です。物理について学ぶ中で興味を持った内容は書き留めておき、普段から深く考える姿勢を持っているかどうかが試されています。
過去問を解いたり教授の発言を聞いた上で感じるのは、京大側の意図としてこれくらいの文章はサラッと書ける人材でないと修士に入るに値しない、ということです。試験だけの一発勝負と思わず、普段から修士課程でやっていける素質が試されていると思いながら勉学に励むことが大事です。
院試と自身の分析
最後に、本格的に院試勉強を始める前に、院試の問題や自分自身の習熟度について総合的に分析することが合否につながる要素になります。
まずは自分の立ち位置を理解することが大事なので、近い年度の過去問一年分を解いてみることをお勧めします。過去問を解いてみると、出題される問題の種類や癖、量などを身をもって把握することができます。試験の特徴を少しでも捉え、解いた結果を踏まえて問題と自身の現状の分析に繋げます。院試に出そうで自分が苦手な分野を理解し、その後の4ヶ月ほどの計画の出発点にしましょう。
僕の場合は量子統計や量子力学のブラケット、剛体、電磁気学全般など、理解が足りなかったり忘れてしまっている部分が多くありました。これらをしっかりと補うために、院試対策の前半は腰を据えて本を読むことに重点を置きました。これもよく言われることですが、院試勉強において教科書を読み直すことは非常に大事です。時間がかかることを恐れて教科書を拾い読みするよりも、しっかりと読んで基礎を盤石にすることが重要です。
これとは対照的に、院試対策では過去問を進めながら足りない部分を補うという勉強法も効果的です。院試前半では教科書に重点を置き、後半は問題演習に力を入れるのが物理のより深い理解と問題を解く能力の向上につながると感じます。
勉強方法は自分に合ったものを選ぶにしても、この時期に徹底的な分析ができているかどうかが合否につながります。
4月以降の院試対策
4月以降の対策については次の記事にまとめます。そこでは主に、具体的な院試勉強の方法や読んだ教科書、院試ゼミや試験本番の体験などについて語ります。
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