ひっくりー(しゃっくり)に関する小話
うちの息子は小さな時、しゃっくりのことをうまく言えなくて、ひっくりーと言っていた。それ以来、我が家ではしゃっくりのことは通称『ひっくりー』である。
私は今でも「ひっくりーが止まらない」と言っていることが多い。
あのしゃっくり特有の、「ひっく、ひっく」という感じが”ひっくりー”という呼び方の方が個人的にはしっくりくる。
「ママ、ひっくりーが、、、
(ひっく)とまらない、、、(ひっく)(ひっく)・・・(泣)」
と言って絶望的な表情と涙目でママを見上げていた息子ももう10歳である。
しゃっくりが止まらないと死んじゃうんじゃないかと思っていたうちの息子。
今はもう、そんなかわいい言い間違えもあんまりしてくれない。
まだ私の身長より低いけれど、背だって追い抜かれるのは時間の問題なんだろう。
だからこそ、このかわいい言い間違えを私の中で永遠に保存したい、そんな気持ちがはたらくのかもしれない。
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むかしむかし、まだ私が妊婦だったころの話。
たった一人で家の中にいるはずなのに、何だか小さな音がする。
ひっく。ひっく。
私一人しかいないはずなのに、どう考えたって誰かがしゃっくりをしているっぽい音がする。
ひっく。
最初は空耳かと思ったけど、やっぱり嘘じゃない。
ひっく。ひっく。
赤ちゃんはお腹の中でしゃっくりをするとは聞いていたけれど、はじめて聞いたときは本当にびっくりした。
そして私は思う。
この、お腹の中を縦横無尽に私のお腹を蹴りまくる、ぐにょぐにょした物体はやっぱり人間だったんだな、と。
だって、しゃっくりするんだもの。
エコーの検査で何度となく見て、そして3Dの画像で見て、やっぱりどうやら人間が入っているらしい、ということは認識したものの、あまりにうにょうにょとうごめくこの物体は本当に赤ちゃんなんだろうか。
そう思うときが何度かあった。
私はとっても赤ちゃんがほしかった。
そして体質的にとてもできにくかった。
赤ちゃんができたかな?と思って病院に行ったとき、エコーで胎嚢が確認できてとても嬉しかった。先生にもおめでとうございます!って、ちゃんと言われた気がする。
けれど、私は何だか喜び過ぎてはいけないと思っていた。
エコー写真を見せながら診察の結果を夫に話そうと思って出てきた言葉は、
「これは卵で、これが白身。そしてこっちが黄身。
だから、つまり私のお腹に赤ちゃんがいるんだって。」
大喜びとは全く正反対の無表情で、実験の結果を説明するように、そういったような気がする。
それが私にとっての精一杯だった。
その日から、私の体は何ものかにに浸食されていった。
胸から下は、私の身体だけどあきらかに自分だけのものじゃない。
なんだか私とは違うものの意思を、はっきりと感じる。
でも小さな小さなしゃっくりを聞いた時、確かに私のお腹にいるのは人間なんだと、そんな風に思ったことを覚えている。
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しゃっくりの治し方にはジンクスも含めていろいろあるけれど、最近とっても効果的な方法を教えてもらった。
水を飲んでいるのと反対の手で、大きく外側に手を上げ下げしながら水を飲むとしゃっくりは止まる、というもの。
しゃっくりとは、つまるところ横隔膜の痙攣である。
だから横隔膜を動かしながら水を飲むと痙攣は止まる。
ということで次にしゃっくりが起こったとき、運よくこの方法を思い出した方はぜひ試してみてください。
私はこの間この方法を試してみたところ、腕を上げること2回でピタッととまりましたよ、ひっくりーが。
どうぞお試しあれ。
今日も読んでくださって、どうもありがとうございます。
写真は散歩の途中に見つけた合歓の木の花。