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『鷲は舞いおりた』(1976)チャーチル拉致作戦

こんばんわ、唐崎夜雨です。
今日の映画は『鷲は舞いおりた』。原題、The Eagle Has Landed。
1976年ジョン・スタージェス監督作品。
原作はジャック・ヒギンズの同名小説。細かいことですが、小説は『鷲は舞い降りた』で、映画は『鷲は舞いおりた』と表記が微妙に異なります。

先日『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(2017年ジョー・ライト監督)を鑑賞したので、今度もチャーチルがらみです。とはいえ『鷲は舞いおりた』では、ほとんどチャーチル首相の出番はありません。

『鷲は舞いおりた』は、ドイツ軍によるウィンストン・チャーチル拉致計画を描いた映画なので、チャーチルは拉致される対象に過ぎません。

タイトルになっている「鷲は舞いおりた」とは、落下傘部隊が英国本土の上陸に成功した暗号です。このドイツ落下傘部隊のリーダーであるシュタイナーを演じているのが、マイケル・ケイン。

どう見ても英国人なんだけどなぁ。
マイケル・ケインとマギー・スミスは似てると思うんですが。

あらすじ

1943年、イタリアで幽閉されていたムッソリーニをドイツ軍が救出する作戦が成功する(これは事実)。これに気をよくしたヒトラーは情報局のカナリス(アンソニー・クエイル)にチャーチル誘拐を計画させる。
ヒトラー総統の指示なので、実行する気はないがとりあえず部下のラードル(ロバート・デュバル)に作戦を立案させる。そこへ英国にいるスパイからチャーチルが英国東海岸のスタドリー村へ静養に入るという情報が届く。重なる偶然に本気で作戦に取り組もうとしたラードルだが、バカげた作戦だとカナリスは計画の中止を命じる。
しかしこの計画を知ったヒムラー(ドナルド・プレザンス)はラードルに作戦を極秘裏に遂行するよう命じ、本件に関する全権をゆだねる。
大学で教鞭をとっているアイルランド独立運動家でもあるデブリン(ドナルド・サザーランド)の協力を得て、スタイナー(マイケル・ケイン)率いる落下傘部隊がこれを実行するという作戦。
先発として英国内に潜入したデブリンの手引きによりスタイナーたち落下傘部隊は英国東海岸スタドリー村近くの海辺に舞い降りたーー。

無謀な作戦に翻弄される人々

ハリウッドの戦争映画などでは、おおむねドイツ人は杓子定規に描かれる。悪人であるとか、冷酷であるとか。あるいは米軍に倒されるためにそこにいるとか。

ところが『鷲は舞いおりた』のマイケル・ケイン演じるスタイナーたちは、そうゆう杓子定規なドイツ軍人ではない。ユダヤ人の女性を助け、親衛隊に反抗して軍法会議にかけられる。

またチャーチル誘拐計画が映画の中盤で頓挫しそうになるが、きっかけは川に落ちた村の少女を落下傘部隊の若者が救出したことによる。

ドイツ人にも優れた人はいる。当たり前なことだが英米の映画ではあまり顧みられることはなかったと思う。
一方で対する米軍側には実戦経験がない指揮官が登場し、事態を悪化させる。

この作戦を立案したロバート・デュバル演じるラードルは片目を黒の眼帯、腕も片腕が不自由というドイツ版の丹下左膳。歴戦のつわもの感がにじみ出ているが、彼もまた非情な人間ではない。
思えばラードルほど、この作戦に翻弄された人はいないかもしれない。

英国の田舎の村の景色が美しい

この映画の好きな点のひとつに、後半の舞台となる英国の田舎にある。
物語と直接関係ないが、英国の田舎の風景が好きなのだ。

スタイナーたちがドイツ側にいるときは暗い厚い雲に覆われた寒そうな風景が続いている。
中盤からの舞台となる英国のスタドリー村は、戦時中といえども田舎のほのぼのとした風景が広がっている。人ものんびりしていそうだ。

映画のロケ地はイングランドのメープルダーラムという村で、テムズ河の上流に位置している。映画に出てくる教会や水車小屋が現存している。ミスマープルが住んでいてもおかしくない。

ドイツ側の女性スパイは長年この村に住んでいる。イギリス人は嫌いだが、この村は好きだという。

ありふれた田舎の村は、時のたつのがゆっくりとしていそうだ。
前述の教会や水車小屋がある。居酒屋がある。赤みを帯びた古びた屋根が素敵である。
馬を走らせたら気持ちがいいかもしれない牧草地や森があり、海が近くにある。
おっと、映画の中の設定では海浜の寒村だが、ロケ地のメープルダーラムは内陸の地にある。海は無い。

この日向ぼっこが趣味みたいな村で、スタイナーたち落下傘部隊と米兵とが衝突し銃撃戦が始まる。
戦争は人が犠牲になるが、街も犠牲になる。

好きな役者が出ているので

ヒトラーのたわごとから生まれた作戦なので、是が非でも成功させねばならない強い使命感のようなものがこの作戦にはない。

たとえば孤島の要塞を破壊しなければ味方が全滅するとか、密林の中の敵国の鉄道を爆破しなければ味方が不利になるといった要素がうすい。

実行不可能な作戦を実行させる面白さはあるけれど、そこに重要性がないために洒落や遊びでやっているように見えてしまう。

たとえばグレゴリー・ペックがリーダーだったらそうはみえないかもしれないが、マイケル・ケインやドナルド・サザーランドではユーモアが顔をのぞかせてしまう。

マジでヤバいときでもジョークを発しそうな顔ぶれでは、どうも緊張感が、ねぇ。
英国系の俳優ってどうもそうゆうイメージ強くてね。

唐崎夜雨として魅力的な役者ばかりではあるので、好きな映画のひとつ。

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