#053 スカンノへの旅 (その1) 濃厚な時間
イタリアのスカンノという町へ旅をしてきた。ローマから約185キロ。その町で4日間、朝から夕方まで絵を描いてきた。4日間連続で、一日中絵を描いたことは初めてのことで、私に一日中絵を描くなどということができる力があったのかと驚いてしまった。
そのようなことができた理由の一つはスカンノの町の魅力。絵になる箇所が多いこと多いこと。帰国してから数日経つが、興奮冷めやらぬといった感じ。あの道、あの坂、あの石段、あの石畳、あの窓、あの建物、あの広場。様々な所に座って絵を描いた。
濃厚で濃密な時が流れた。
絵を描くことは楽しい反面、辛いことも多い。しかし、屋外でのスケッチの場合、絵を描くという「時の過ごし方」は好きだ。自分を非日常の時空の中に置くことができる。いつもとは違った自分になることができるのだ。
日本でも時々スケッチに出掛けるが、だいたい1時間程度。それなのに、スカンノでは朝8時半過ぎから午後の7時前まで、ずっと描いた。4日間連続で。
私の心と身体は、あの4日間を未だ引きずっているようで、しばらくは浮遊している状態が続くことだろう。