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#069 スカンノへの旅 (その13) 仲間の存在

 画家でもなく、絵を描くことが特別好きというほどでもない私が、4日連続で、朝から夕刻まで絵を描き続けることができた。その理由の一つはスカンノの町がもつ魅力であることは間違いないが、もう一つの理由は仲間の存在であった。
 仲間と言うと、いつも群がる粘っこい関係を思い浮かべる人も多いかと思うが、そのような関係ばかりではない。同好の人。同行の人。物理的な距離は遠くとも、心が近い人。このような人も仲間と言える。

 私は今回、株式会社トラベルプランの「万年筆画家・古山浩一と描く中部イタリアの隠された村」というツアーに参加した。参加者は古山さん、添乗員さんを含めて15人。馴染みの人もいたが、初対面の人もいた。
 スケッチツアーと言っても、皆で、同じ場所で、肩を並べて、同じものを描くわけではない。それぞれにホテルを出て、それぞれ気に入った場所で描き、それぞれにホテルに戻る。ホテルでの食事以外、1日中、同行の人と会わないこともある。
 それなのに、この仲間がいなかったら、4日連続で絵を描くことなどできなかっただろうなと確信をもって思う。
 一人旅で描いていたとしたら、途中で投げ出してしまった絵もあっただろう。疲れたぁ〜と言ってホテルに戻ったり、カフェやBARで油を売ったりしたことだろう。
 しかし、それをせず、朝から夕刻まで描き続けた。もうちょっと頑張ろう。ファイト! ファイト! 自分を励ましながら描いたが、実は励ましてくれていたのは、時々遠くに見掛ける、町角に座り込んでひたすら描いている仲間の姿だった。おぉ、あの人も、あのポイントで描いている。あそこはいいスケッチポイントだもんね。後で絵を見せてもらおっと。そう思って、再びペンを走らせる。
 
 一人ではやれなかった。仲間がいたからやることができた。
 ああ、これって、人生そのものじゃないか。仕事も組合活動も、萬年筆くらぶもフェルマー出版社も、仲間がいたから微力な私がなんとか取り組むことができた。一人ではできなかった。
 帰国後数ヶ月、スケッチツアーの同行の人たちの存在を改めて感じながら、スカンノで過ごした時間を思い出している。
(写真撮影は岩間敏彦さん)


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