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#100 フランスの村々へのスケッチ旅(その3) カフェにてのスケッチ

 ホテルを出たら雨。空を見上げたら部分的に青空が見えはするが、パラパラと雨が降っている。狐の嫁入りかあ。フランスでは、このような雨のことを何と言うのだろうか、と少々落胆しながら傘をさして歩いた。少し寒い。この寒さの中でスケッチをするのは辛いだろうと段々テンションが下がってきた。
 ホテルの近くにカフェがあり、屋外の席にはオーニングがあった。そこに座って、正面に建っている民家でも描くか。特別な魅力があるわけでもない普通の民家だが、仕方がない。まあ、急がず、のんびりと構えようとカフェに入り、マスターに屋外の席で絵を描いてよいかと尋ねて許可を得た。
 机の上にスケッチブックを広げ、ペンを出し、熱い紅茶を口にする。すると、ジワジワと穏やかな幸福感が心に湧いてきた。異国のカフェで絵を描こうとしている私が、ここにいる。体調は悪くない。これから5日間、毎日絵を描く。このようなことは日本ではやったことがない。今の、この時こそが私の人生なのだ。
 描いていたら、近所の人らしき人がカフェにやってきた。日常的に来ているのかもしれない。その会話が耳に入ってきた。何を話しているのかは分からないが、フランス語だということは分かる。また一人やってきた。明るく楽しそうに話し始めた。その音の響きを耳にしながら、ポットに残っている紅茶をカップに注いだ。
 異国の地で、紅茶を飲み、頬に風を受け、地元の人たちの会話を耳にしながら2枚の絵を描いた。これを幸福と言わずして何と言おうか。このような機会をもてたのもパラパラ雨のお陰だと狐の嫁入りに感謝した。

 空の青さが広がってきた。青が濃くなってきた。気温も上がってきそうだ。大丈夫。スケッチできそうだ。でも、雨が降ってきたら、またここに来ればいい。次はコーヒーにしよう。

*** カフェで描いた絵です。 ***