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#114 フランスの村々への旅(その7) 絵を持った男性が現れた

 フランスの村エスタンでスケッチをしていたら、「ハロー」と声を掛けられた。英語だ。顔を上げたら、作業服姿の男性が絵を持って立っていた。何事かと思ったら、「この絵は日本人の女性が描いたものだ。私はこの家に住んでいる」。そう言って、絵の中の建物を指差し、そして現物の建物を指差した。そして、「仕事をしていたら絵を描いている日本人が目に入った。声を掛けたくなって仕事を中断してやってきた」と言う。
 そこに偶然にもトラベルプランの添乗員Oさんが通りがかり、絵のサインを見て「私はこの絵を描いた人を知っていて、来月に会うことになっている」という。まるで偶然を絵に描いたような光景だった。
 その後、男性は何枚かの写真撮影に応じてくれて、笑顔で仕事に戻っていった。

 それにしても・・・と思う。
 フランス人て、人と関わることが好きな人が多いのではなかろうか。絵を描いている私に声を掛けるだけではなく、今までに描いた完成作品を見せてくれと言う人がいたかと思えば、今回のように、仕事を中断してまでして絵を持ってきて見せてくれる人もいる。そう言えば、昔、庭で収穫したというブドウを差し入れてくれたのもフランス人だった。

 それぞれのスケッチポイントの素晴らしさが心に残っている。自分の描いた絵を見るとき、それは、より鮮明に心のなかに蘇ってくる。そのとき、声を掛けてくれたフランス人の笑顔も思い出される。

 いい旅だった。
 しみじみと振り返る。