四社目の話 ブラック企業
前回の続き
前回のあらすじ
さて、始めに言っておくがまたブラック企業である。
またしても受けては落ちてを繰り返す就職活動。
とにかくたくさん落ちた。
でもなんとか生きた2009年、25歳。
今の20代は給与が安いだの、やりがいのない仕事だの、未来が無いだの言っているが、まあ私の25歳の時に比べればだいぶマシだろう。
当時の私が使えるソフトはadobe全般、特にイラレ。3DCG全般、特にメタセコ。ゲーム制作会社でのインターン歴もある。web系も手打ちも出来る。SQLもパールもちょっと出来る。でも仕事は無い。あと数年経てば何が足りなかったか分かる事になる。
運命の四社目
もうダメかと思ってたらやっと受かった。
失業給付にはだいぶお世話になった。
内定(バイト)を貰った会社の話。
ネットショップの会社だ。
運命というのは現在につながるECのスキルの基礎を会得したからだ。
当時、設立から3、4年くらいのネットショップ専業の会社が台頭してきていた。創業者の手に負えないリアルな増員でバイトの募集がかかり始めた年代。本当は退職者が出たのに求人票に業績好調!増員!とかとは違う。
今回も他社では落ちてきたが、退職する前任者の代わりということでillustrator、photoshpが使えるというとこですぐ採用。当時ネットショップは求人市場では規模がかなり小さく、EC関連の求人は出始めた頃で全体の比率からするとほとんど無いに等しい。県で区切ってみれば数か月に1件程度求人が出るかどうかのレベルだった。この時点でネットショップ専業で起業した人間は余程のキレモノである。
その会社はアパレルショップで実店舗が数店舗あり、EC部門はT氏が一人店長だった。T氏退職に伴い欠員補充ということでillustratorとphotoshopが使える私が採用された。
さあ書くで
実店舗のバックヤードがECの仕事場だった。
販売員が2人、表の売り場に出ている。
その裏でT店長と私、そして社長の3人が詰めていた。
よく覚えてないが、仕事の引継ぎは1カ月か2カ月だったと思う。
主な登場人物
・社長 38歳
・T店長(EC) 28歳
・私 25歳
・A君(幹部) 32歳
・Tさん(幹部) 29歳
・Mさん 28歳
・U君 30歳
・T君 23歳
・M君 23歳
・Kさん 16歳
・・・他多数
※ここまで書いたけどA君以下は出てきません。エピソードはたくさんあり過ぎるけど・・・。
あらかじめ書いておくが、全員パートタイマーである。正規雇用は無い。
初日から異様な光景
普通に挨拶したりなんやかんや引継ぎで仕事を教えて貰ってたと思う。よく覚えていない。
だが、昼休憩は覚えている。
全員集合して狭いテーブルで「いただきます」だ。
机は1m×1mくらい。これに6人~8人くらいがみんなぎゅうぎゅうで食べる。
なんやこれ・・・これも何かの教えだろうか。
やっとありつけた仕事、疑念はあるが何も言えない。
1カ月でほぼ仕事は教えきってもらい、のこり1カ月はT店長がサポートという感じで私がメインで業務をこなした。
仕事内容は仕入れ、受注、撮影、ページ作成、梱包出荷作業とEC業務全てである。
そしてついにT店長の退職が迫ってくる。
なぜ辞めるのか等、色々と話をした。
私が入社時は確か月商30~50万程度だったと記憶している。
T店長は最大で200万までいったそうだが、どうやら社長が口を出してきたから売り上げが落ちたそうで腹が立って辞めるとのこと。
すっごいどこでもある話なんだけど、無能な社長ってなんで口出すんだろう・・・。理解に苦しむ。大人しく社長業だけやってればいいのでは?実務は実務担当に任せときゃいいんだよ。平社員が社長の商談に口を出すの変わらんで。
腹が立ってもいきなり辞めないところは偉いねと思ったが、社長は過去に突然辞めた販売員に対して弁護士を雇って脅しをかけて賠償金を払わせたことがあるという話を聞いて頭がおかしいと思った。
ちなみに私が遅刻した時に反省文を書かされ、全店舗にFAXで送るという見せしめを受けさせられた。遅刻した私が悪いんだけども、やってることが異常。
社長(38)とは
派遣社員で貯めた資金でワゴンカートでの販売を始め、成り上がった商才ある人物。著者Sを妄信しておりその通りにやって成功したらしい。男は女と遊べ、車はベンツ、社長たるもの月に100万の報酬を貰うべしとか。やってたことが全部教えの通りで笑ってしまう。ちなみに社長は既婚者で子供居ましたがいつも違う金髪ギャルと遊んでました。
ついに独り立ち
T店長が退職し、私が一人店長だ。
誰も頼れないし、社長はノウハウを持っていない。持っていたのはT店長だ。
1か月目 月商 50万
2カ月目 月商 70万
3か月目 月商 90万
確かこんな感じ。
100万いかないと全然利益が残らない。
何せ田舎なのに事務所の賃料が60万以上ある。
何店舗もある実店舗をあわせるとこの時点ではネットショップが最下位だった。
3か月目、社長が結構怒ってもっと頑張ってくれよ!と言って来た。
そうか、頑張らないとなぁなんて思って頑張ってしまった。
6か月目 月商 100万
ここで売れる「波」というものを感じ取る。ベテランなら分かると思うが、売れる物とどうやれば売れるかが見える。
すぐに今から売り上げがどんどん上がるからすぐに人を雇ってくれと社長に言う。
9か月目 月商 300万
ここでようやく1人補助が入るが、時すでに遅し。ECとはそんな業種。遅い会社は負ける。
私は9時~19時まで1分の休憩も取れない状態に陥っており、教える時間もまったく無い。撮影~商品ページ作成完了まで20分で終わらせる超人になっていた。
新人案の定、1日で辞める。
主な理由は前述の昼休憩が気持ち悪かったとのこと。
この時点でどの実店舗よりも売り上げが高くなっていた。
10か月目 月商 400万
かなり物理的に限界が来ており、意図的に売上が上がらないように抑え始める。上がる方法が分かっているので抑える方法も分かっている。
1人雇ったが「メモしたと思うけど、メモを無くしました」というタイプで辞めてもらった。
更に1人雇ったがもう私は何もできない。忙しすぎる。
そんな中、社長に「あんたのせいで人が辞めたじゃないか。求人費用天引きしとくからな」ということで給与から2万円ひかれた。100%違法だろ。
ちなみに採用面接は社長が担当していた。
私は横でほぼ見てるだけ。
現場で欲しいと思う人材が選ばれないのはどの企業でも同じなんだろうとい感じた。
12か月目 月商 550万
もはや売上を抑えるのも限界が来ている。
前述の新人は辞めた。フォトショップを数日でほぼマスターするという激レア人物でかなりの才能があったのだが・・・教える時間が無かった。
辞めるきっかけ
ある時、販売員の人が教えてくれた。
「こないだ見たんスけど、社長、〇〇〇〇万円の〇色のポルシェ乗ってますよ」
おう、それ俺が稼いだ金な!
あえてここで書くが私の時給は"750円"だ。
ここで辞める決心がつく。
最後の新人
ここでまた新人が入る。カメラ専攻の若者N君だ。
見た目はイカツイが真面目でしっかりと仕事を覚えてくれたからこれで辞められると思っていた。
そう思っていたら・・・
新人「あの、ちょっとお話が」
ん?
新人「やっぱりカメラがやりたくて、ごめんなさい」
おまえもか・・・
私「いや、実は俺も辞めるんだよね・・・」
私は新人が辞めるのを無事見届けた。
決戦の時
もうこれしかない。
後任は居ないが社長に辞めると言う。
社長に話があると言い、定食屋に連れて行かれた。
何か昼膳みたいなのを注文。
単刀直入に辞めると言うと、「あんたの力が必要なんだよ」とかなり引き留められたのは覚えている。でも辞める。
借入
そのあと、すぐに銀行を呼んで2000万の借り入れをしているのを見た。私が辞めなければそんな借金しなくて済んだのに。ポルシェの値段分かっちゃうね。
引継ぎ
忠犬の幹部Aは販売員だけども社長に飼いならされて辞めないので、こいつに引継ぎをした。かなり生意気だったが教えるところは全部教えた。慣れない業務でイライラしてたのはかわいそうだが、幹部Aは幹部Tとの色恋沙汰で他の従業員を何人も貶めてきたからその報いを受けろ。
EC業務は「幹部A+新人5人の計6人」で再出発。
人件費6倍だねやったね、あばよ!
4社目編 完 26歳
次回
次回、いよいよ折り返し。