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敗戦真相記を読んで
敗戦真相記は、第二次世界大戦と同時代に生きた実業家永野護という著者が敗戦の原因につき考察した本だ。
挙げられている主な敗戦の原因は3つ。
ひとつめは国の基本政策方針が誤っていたということ。
ふたつめは敵を知らずまた自らを知らずということ。
みっつめは世論に従わなかったということ。
史料にもとづいて書かれている本は、軍閥と日本政府を中心にして決定された事項だったり、当時の事件、そしてそれらの変遷とともに、戦後に生きた人が分析している。この本では同時代に生きた人が、自ら考えて思ったことを言葉にしているし、他の本と違って読みやすくおもしろかった。
特に印象に残ったのは、メインの話から少し脱線したところだが、教育においても文化的な成熟がみられないといった部分だ。そこでは明治維新前には武士としての人間の完成というのが目標とされていたが、明治維新の後には、技術的な面ばかりが注目されて、立身出世主義が目立つようになったと書かれている。この大戦時期に他国と比較しても傑出した人物があらわれなかったことも敗戦の原因として触れられているが、この教育の変化というのが関連しているのではないかと思えた。
外国人から、日本官僚の上級職は責任回避能力だけはすごく実務は下級職のほうが詳しいと揶揄されたりするような部分は、まさにその通りで、色褪せない。むしろ今の時代は、官僚だけでなく、大企業を筆頭に会社でも立身出世主義が強く、保身にはしるようになっている気がする。
他の人に何か人間として憧れられるようなものを持つ人は、スキル以外の大事な部分をもっているように思える。その大事なものが明治維新前の武士としての人間の完成として著者が掲げるところになにかヒントがありそうだなと思った。