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「考えることの楽しさ」を実感させる体育授業づくり

はじめに


 思えば、自分スタイルの授業、個性的な授業を創り上げることこそが指導力の証であるように思い込んでいた頃があった。
 そこには学習者としての子どもの「こころ」をくみ取った授業ではなく、自分の「こころ」を満足させる独りよがりの授業だったと今深く反省している。運動させ、話し合わせ、書かせていた指示型授業であり、楽しかったか?わかったか?技能の上達は確認できたかろの答えを求める押しつけの授業だった。
 子どもが「楽しい」と感じ、次への期待感をもって参加してくる「こころ」をはぐくむ授業には、個性に応じた楽しみ方を認める視点も大切である。

楽しさの広がり

 そんな私が、とある文献を読んでいる際に、高田典衛氏の「楽しさの4原則」論が注目された時代があったと知る。高田氏は授業の楽しさを「①動く楽しさ②集う楽しさ③わかる楽しさ④伸びる楽しさ」に分類し、それらをどう満たすかが授業づくりのポイントであり、4観点を子どもの評価によって分析する授業づくりを提唱し、全国の体育教師に大きな影響を与えた。

 学習指導要領の改訂のたびに教材観や構造論が語られる。今は、12年間を見通した4年間区切りのまとまりの教育課程構想であり,子どもの体力の低下が毎年の話題となり,運動に対する二極化現象の解消が叫ばれている。

学校体育の究極的に目指すところを,生涯にわたって運動・スポーツを自発的に実践する国民になることと押さえたなら、運動実践の日常化の入り口のところまで子どもを導くこととも言い換えられる。

 入り口までとは、運動の「楽しさ」の記憶を子どもの「こころ」に残すことであり、楽しい記憶を積み重ねられれば、いつか主体的に行う可能性が期待できる。高田氏の4原則で、「動く楽しさ=運動量,集う楽しさ=仲間,伸びる楽しさ=記録・結果」は、目に見えやすく評価もしやすい。「わかる楽しさ=理解」は考える楽しさにつながる。

 

大人になると、観る、応援する,評論することでスポーツを楽しむ層が圧倒的に多い。

 プロ野球・Jリーグ等がそれである。間違いなくスポーツを楽しんでいる。頭や「こころ」で楽しんでいる。学校体育でも、考える楽しさから運動する楽しさに広がっていく授業実践が発表されることを期待している。

おわりに

 教師自身が運動・スポーツの楽しさの多面性を肯定することで、運動好きな子どもをさらに増やせるだろう。「みんな違って、みんないい」の広い「こころ」で子ども一人一人の「楽しさ」のツボを褒め、将来に向けて運動に積極的に関わる大人づくりをしたい。

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