人生の転機ってやつ
なかなか ふたりのおうち が決まらない我々ですが
実家から離れることよりも
職場から離れることによる日々の負担を考慮すると
ただでさえ行ける方角が決まっているというのに、どんどん選択肢が狭まってしまう。
そして、個人的に「これぐらいなら大丈夫なのにな」と思っているレベルと、タミオ君や母が私を心配してくれる気持ちを添えたレベルの距離感には、差がある。
もどかしいねぇ。
我が家にはかつて、犬がいた。
18年間も青春時代をともに過ごしてくれた愛犬。
数年前に虹の橋を渡り、今は動物霊園で眠っている。
最初はいつでも会いに行けて、申告すれば連れて帰ってこれる祭壇に並んで座っていたが
1周忌を機に母の意向で合同慰霊の大きなお墓に埋めてもらったため、気持ち的に会いに行くことはできても、もう連れて帰ってくることはできない。
そんな動物霊園が、社員の募集をかけているのを見つけてしまった。
場所はちょうど今年引っ越す場合の、吉方向。
先週のSMC(サンデーモーニングサイクリング)で30分かけて行ったお気に入りの物件にも、10分かからずに行けちゃう距離にある。
本能的にそう思ったものの、募集要項が掲載されたSNSからはすぐに記事が消えてしまった。
黄金週間中、お参りに行った時にもし敷地内に貼り紙があれば聞いてみようかなと思ったが(パジャマ同然の格好だったため、あらかじめ知っていたテイではさすがに声がかけられないと考慮した。大人だから。)
結局、隅々まで確認したものの案内はなく
きっともう人が見つかって記事も消したんだろうな、と思った。
***
今の仕事(忙しすぎるオフィスレディ)に就いて、来月で丸17年。
心身の危機を感じて提出したものの見事に封印された2度の退職願も、今の上長なら受け入れてくれるかもしれない。
いろいろと運用が変わり、メンバーも落ち着き、仕事も忙しすぎるどころか余裕が出てきた今日この頃。
離島への出張 および 現地での誇り高きミッションが唯一のやり甲斐となった今、仕事に執着はなくなったものの 他に特別やりたいことがあるわけでもない。
社員ではないにしろ 大手の会社で積み上げた経験と信頼を手放すことが怖くて、現実的に転職を考えてはいなかった。
でも、引っ越しを考えている現在
生活環境や人生設計に変化が及ぶであろう今年
仕事が足枷になっている なんて表現してしまうのは少し違うけど
なかなか手放せなかった今の仕事から手を引くチャンスなのかな、と思ったりもしている。
一発目の求人案内発見時に
タミオ君にも 面接を受けてみてもいいかどうか、相談した。
結果一発目は出遅れてしまったけど。
この先一緒に暮らそうと考えている以上、自分の収入や業務スタイルが変わると何らかの影響も与えてしまうから という意図で。
『興味があるならやってみればいいし、全然いいよ!』
と、即答してくれた。
『でも御子ちゃんメンタル耐えられるかな?みんなと一緒に泣いちゃうんじゃない?』って。よくわかってらっしゃる。
それはたぶんそうだろうけど、それはそれでいいような気もしてる。
業務に差支えがあるほど余韻を引っ張らなきゃ、送り出す立場を経験している気持ちとしては、一緒に泣いてくれる葬儀屋さんなんて 愛しかない。
ばあちゃんの葬式を担当してくれた人がそうだった。
事務的になりがちな仕事だけど、こうやって一瞬しかかかわらない他人でも心に寄り添ってくれる人っているんだな と思った。
いつも手厚くケアをしてくれている動物霊園で
亡骸とはいえ愛犬のそばで仕事ができるなんて
これまでのキャリアを手放すには十分な理由だった。
長年、動物霊園のアカウントはフォローしていて
この5年以上、愛犬に寄り添うような気持ちでいつも見守らせて頂いておったものの、社員募集の内容を目にするのは初めて。
元々、命に関わる仕事がしたい とボンヤリ思い描いていた部分はあった。
若かりし頃に抱いていた看護師や保母さんの夢は、資格が取れる前提条件がないことから諦めざるを得なくなったけど
恵まれない子供やその親を助ける施設だとか
葬儀場での仕事だとか
間接的な「命」に纏わる場所も含めて。
生きている人にも亡くなっている人にも感情移入しすぎてしまう自分にとって、それが実質相応しいのかどうかは想像が追い付かないけれど
どちらにも心底寄り添ってあげられるであろう、という自負は 有り余る動機になると思っている。
ただその対象に、動物が入っていなかった。
ここに来て初めて、その手があるか!と思った。
お世話になっている霊園で
命を送り出すお手伝いが出来て
遺族の心にも寄り添ってあげられるなんて
素晴らしい以外の言葉が見つからない…
と、思っていたが
投稿が消え、現地でもアピールされておらず、その後物件が遠すぎるというサイクリング結果に陥り
きっとご縁がなかったんだな・・・と一旦諦めた。
*****
しかしながら、サイクリングを終えた日曜日の夜
再びSNSに社員募集投稿が上がってきたんである。
お寺の公式サイトにも正式な募集要項が載っており、再び希望の光が見えた。
「電話してみようかな」
それなりに年齢もアレだし
まずすぐに今の仕事が辞められるわけじゃないから、逆にいつまでなら待って頂けるのかわからない、、
「若い力を発揮できる方」なんて文言もあるもんだから
若い部類にはもう入らないであろう自負をどうしたらいいものか。
あれやこれや考えながらページを彷徨っていると、口コミなんかまで目に入れてしまう始末となり
まぁそうなると隅々まで読んでしまったりして
霊園を利用したお客さんの立場からは、あまり悪い意見はなかったものの
過去に面接を受けた人や
実際にそこで働いていた人の意見があまり良くなくて
まぁそれは目を伏せたくなるようなものも含まれていて、落ち込んだ。
自分が入ることによって風紀を変えるという手もあるぞ… なんて少々無謀な想像もしてみたり
もし、本来知らずに済むはずの知らない方がよかった内部的な部分を知ってしまうことで、結果的に辛い思いをすることになってしまったら
どんなに精神的に苦しくなっても、もう合同慰霊で他のペットちゃんたちと一緒に眠っている愛犬を取り返すことはできない。
知らないままでいる方が良いことも
世の中にはたくさんあるからな・・・
このまま参拝客として、美しい優しい部分だけに触れておいた方が、心安らかに愛犬を弔い続けることができるんじゃないだろうか・・・
いささかマイナスな思考回路に陥ったが
私を奮い立たせたのは些細なきっかけであった。
翌日、5月16日は 愛犬の誕生日であった。
迷いながらも何度も確認したSNSの募集投稿から
問い合わせリンクにメールアドレスがあるのを見つけた。
なかなか仕事の都合上、営業時間内に電話をするのが難しかったこともあり 前回迷っている間に投稿が消えたので
もう 今日連絡しなかったらきっとずっとしないな と思って
問い合わせアドレスにメールを送ってみた。
愛犬が眠っていることは伝えず
現在の年齢でも可能かどうか
今の仕事をすぐに辞められないため、募集の期限があるかどうか
それでも面接してもらえるようであれば伺います!
と、簡潔に記して
送信ボタンを押した。
仕事もお家も結婚相手も
ご縁があれば、事態が動くよね。
ダメならダメで
今後も参拝客として 愛犬に会いに行くだけの話。
どうなるかな。
メール送信から5日間。
今のところお返事は頂けておりませんが
私にしかできない仕事のマニュアルを密かに作りながら、返信を待ちたいと思います。
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