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人生の前提が変化しても、“楽しみながら働く”を諦めない
映像制作を軸に、デジタルマーケティング、ITスキル特化の就労移行支援スクールの運営を行う株式会社ファストモーションの働くメンバーの半生と仕事への想いに迫るインタビュー企画。
第4回は人事・採用担当の鈴木紗恵子です。
代表の藤沢に映像を仕事にする機会をつくった恩人とも言うべき人物の一人。
“楽しみながら働く”という信条を持ちながらキャリアを築いてきた彼女はなぜ再び藤沢と仕事をするようになったのでしょうか。
理想であり原点の場所で運命の出会い
横浜出身で4人姉妹の末っ子として生まれた鈴木。
中学、高校は他の競技で活躍する姉たちに負けたくない気持ちで厳しい指導者がいるバレーボール部に所属し、打たれ強さを磨きました。
鈴木は“楽しみながら働く”という価値観を持った理由を、育った家庭環境から来ているものだと分析します。「小学1年生の頃に多忙だった父が他界して、母は私たちを一人で育ててきました。
だから母は生きるために働くという意識が強くて、その反動なのか私は楽しみながら仕事をしたいと思うようになったんだと思います。」
高校卒業後は岩崎学園横浜Fカレッジのブライダル課に進学し、新卒でウェディング事業を展開する株式会社ブライダルプロデュース(現・株式会社BP)に就職します。
ブライダルの専門学校だったので、本物の結婚式をつくるカリキュラムが組まれており、それを一生懸命やっていましたね。あとはアルバイトを掛け持ちしたり、友達と遊んだりしていました。
いよいよ就活も終盤になり、先生からブライダルプロデュースの2次募集があるから行くように勧められたんです。それがすごくよかったんですよね。私がイメージしてた“楽しみながら働く”が体現されていて素敵だなと思って受けた結果、入社が決まりました。
私の人生にとってブライダルプロデュースに入れたのは本当に大きかったです。」
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その時一緒に入社した同期2人は鈴木にとって大切な財産になりました。それぞれ転職や結婚、出産などで環境が変わって互いに忙しくなっても今も月1回ペースで会っていると言います。鈴木はこの頃の上司と結婚しており、ブライダルプロデュースは運命的な出会いの場所でもありました。
代表・藤沢にチャンスを与えた恩人
ブライダルプロデュースに入社した鈴木は映像制作の部署に配属されました。担当の結婚式場で撮影・編集をやりながらカメラマンの教育、アサインと組織づくりを任されるようになります。その頃に弊社代表の藤沢と出会います。
「アルバイトに応募してきたのが藤沢でした。実は私がいなければ彼はブライダルプロデュースに入れてないし、一番最初に映像を教えたのも一応私なんですね!(笑)
最初は私の先輩が面接したのですが、藤沢だけ私服で来たんです。仕事柄固い服装が求められる職場ですから、それが理由で不採用になるところでした。ただとにかく人がいないので私の方で預かりますとストップをかけたんです。というのも式場のカメラマンは上は50代くらいまでいますから、当時の私と同年代というだけでとても貴重な存在でした。
藤沢には常勤アルバイトとして入ってもらったのですが、私と同じモチベーションで仕事をしてくれましたね。いい結婚式を作りたい、いいものをお客様に提供したいというマインドが伝わってきて、それが私にとって大きな力となりました。仕事はすごく忙しかったですが、彼は私のことを助けようとしてくれました。」
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鈴木がいた会場は比較的新しく、藤沢をはじめとした若いいいメンバーが集まったことでチーム作りがうまくいきます。その結果会場全体で一貫したブランディングを実現させ、社内でも高い評価を受けることになりました。
代表の藤沢が既出の記事で話していた“カメラマンである前に、サービスマンであれ”というマインドセットもここで学んだことでした。
葛藤の中で揺らぐキャリア選択
ブライダルプロデュースで5年間、多忙な日々を送りながらも楽しく過ごしてきた鈴木でしたが、ある日朝礼中に意識を失って倒れてしまいます。
「結婚式は人の幸せのお手伝いをする仕事なのに、当の本人が不健康で自分の家族を不安にさせていることにその時気づいたんです。」
父が早くに亡くなったこともあり、家族全員が私の働き方に疑問を感じていました。
自身のキャリアを見直す機会と捉えて、鈴木はまずブライダルプロデュースを辞めることを決断します。しかし、退職後に同期と出かけた海外旅行で今度は外国のウェディングに惹かれてしまいます。
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「ウェディングはもうやりきったと思っていたのですが、旅行先でたくさんのチャペルを見てすごく魅力的に感じてしまったんですよね。『ここで働きたい!』と思った1年後には本当にそこに勤務していました。」
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それから鈴木は年に2~3回、1ヶ月ほど海外に滞在する生活、日本ではウェディングプランナーとして働く生活となります。仕事は再び多忙を極め、当時の彼氏である今の夫からまた心配されるようになってしまいます。
その声に鈴木は再度キャリアを考え直し、次は婚礼業界以外の企業への転職を目指し、ブライダルプロデュース時代の同期からの誘いを受け、不動産会社に転職します。
「でも私には不動産業界は向いてなかったですね。
ウェディングの仕事では丁寧さが評価されますが、不動産ではそれよりもスピードや多少の無理を通すことが求められていて、私が頑張りたい方向と会社が必要とする力のベクトルが違ったんです。
お客様に寄り添い、近い距離で接することで成果を上げてきた私の経験がここで活かせるイメージが沸きませんでした。」
キャリアに疑問を持ちながら鈴木は第1子の妊娠に伴い、産休・育休に入ります。
諦めないためにファストモーションへ
一度は不動産会社に戻る方向で準備を進めていた鈴木。復帰日も決まり、いよいよ仕事が始まると思っていた矢先、藤沢から連絡が入ります。
「藤沢は電話口で退職代行で退職されてしまったと自虐交じりで笑いながら話していました。[1] 当時のファストモーションはまだ数人規模ですから、私も『従業員が少ないのに何やってんの?』なんてツッコミを入れていたのですが、そのうち真剣に助けてほしいという話をされました。
私も働き方を考えているタイミングでしたし、経験を活かせる部分がありそうだったのでファストモーションへ入社することにします。
もう私も20代の頃のようにがむしゃらに仕事ができるわけじゃなくて、あくまで子育てしながらで以前と前提が変わったんです。
でもそれを理由に仕事は楽しめないのかと考えた時、私はそうではないと思いました。
もちろんファストモーションで可能かどうかは分かりませんでしたが、少なくとも不動産会社よりは実現できそうだと感じたんです。
過去に藤沢と一緒に仕事していましたからね。働くイメージがしやすかったですし、子どものための時短勤務などの条件も飲んでくれました。[2]
藤沢は決めたらあまり嫌そうにしないというか、返答が快いのが彼のいいところだと思います。
どちらか微妙な反応をされるのが私は好きじゃないので、その点分かりやすくて接しやすいです。そんな人柄も入社の一つの理由になっていると思います。」
しかし、入社当初メインで任された営業では1子目の不慣れな子育てとの並行で苦労を強いられます。ときには子どもの送迎中に自転車に乗りながら電話対応することもありました(笑)
案件の規模もクライアントの業界も幅広くなり、自身の力だけでは賄えきれないことも出てきます。
それでも鈴木は他のメンバーの助けを借りながら、入社数ヶ月で大手企業から数百万円の案件を獲得します。
「今までの営業はある程度大きい企業の看板を背負ってやらせてもらっていたことです。一方でファストモーションは名も知られていない小さな会社で、そこで0から1を作れたことに新たなやりがいを感じました。」
2子目の妊娠を機に営業メイン継続が難しくなってから、現在は人事・採用をメインで任されています。それも藤沢との相談で新たに決まったポジションでした。
2子目の育休からの復帰に向けて、私の活かし方としていろいろな提案や研修をしてくれて、人事として戻ることになりました。
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まだベンチャー企業で人数も多くないのでその分求められるものは大きいですけど、子育て世代の理解もあり、まだまだ体制が整ってはいないものの歩み寄ってくれるのはとても有り難いと感じています。
だからこそ今度は私自身が先頭に立って、これから入社してくる人や結婚・出産する人のために仕組みづくりをしていきたいです。家庭があるから特別扱いしてほしいわけではないのですが、どうしても他のメンバーの力を借りないと難しいことはあるので。
そういう意味では単身の人や子どもを持たない人も納得できる形を考えたいです。
いずれにしても重要なのは適切な評価がされることだと思います。」
代表との近さはみんなのために
ファストモーションが抱える課題として鈴木は事業所間の交流の希薄さと評価の難しさを挙げ、自分がそれを埋める存在でありたいと語ります。
「新橋と横浜それぞれで業種も人の層も全く異なっていて、交流も少ないので評価が難しくなっている部分があります。
なので私は週1回は横浜の営業所に行ってコミュニケーションを取りたいと思っています。
やってみて気づいたのは人事としては藤沢の元同僚であることがマイナス要素になり得るということです。
私が藤沢と距離が近すぎるんですね。でもそれで『一般社員とは違う』『鈴木さんは特別だから』と思われてしまうと、何か意見があっても言ってくれなくなってしまいます。
その点は私が自覚を持って、むしろ藤沢にも意見が言える立場としてみんなの味方でいたいし、間に入っていけたらと思っています。
私自身も人事は初めてですし、手探り状態ではありますが今は新しいことに挑戦していく楽しみがありますね。
だからこれから一緒に組織もものづくりもしてみたいという人にぜひファストモーションに興味を持ってもらえたら嬉しいです。いいものを作りたいというマインドを持てる人にとってはすごく楽しい職場だと思います!」
会社が大きくなり、人数が増えてくれば社内には徐々に直接関わらない人も出てきます。
そのフェーズに差し掛かったファストモーションの中で、鈴木は客観的な視点を持って組織に向き合い、動き回れる潤滑油としての役割を果たしつつ、“楽しみながら働く”を体現していきます。
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※ 記載内容は2024年9月時点のものです