痛みについて勉強しなおす(23)---新刊「Bodily relearning」の詳細レビュー---

2023年6月に痛みの科学の研究とそのセミナーで有名なNoi Groupから新刊がでました。さっそく1度ざっと目を通したのでレビューしていきます。ほとんどが「痛みについて勉強しなおす」シリーズで紹介した内容でしたが、復習的な意味合いと変わった目線からの説明という意味では買ってもいいのかもしれません。興味のある人は以下にNOIグループのリンクを貼りますが、まだ電子版は発売されておらずFBのグループで聞いた所、あと1年は電子版の発売はない模様ですので、英語が苦手だけど買おうと思った人は辞書をひきつつなんとかしてください(笑)。

さてこの本の題名「Bodily Releaning」の意味するところですが、Bodilyは「身体の」でRelearningは「再学習」というのが辞書的な意味です。で、なぜそういう題名になっているかと言うと、過去のブログ(リンク)で書いたように神経は痛みというよりは防御反応を脳に伝えるだけなので、その防御反応をなくすように「再学習」させるということが主題だからです。神経の「防御反応」という事からここ数年私が考え実践してきたぎっくり腰の治療も正しかったのでは?とも感じました。その辺は最後のあたりに少し紹介します(私の手法が科学的に正しいかどうかは不明ですが。)

その「再学習」させる方法をこの本の中では多数の例を挙げながら説明されています。その中の一つとして日本でも日本語翻訳がついて発売されている神経系モビライゼーションとか、英語版のみですがNOI goupのThe neurodynamic techniqueとかと同じようなことを紹介しています。



まずこの本の前半は「Explain pain supercharged」(リンク)からの生理学の内容と重複しています。ただそれを違った形で説明しているだけのように感じました。特に違った”例え”で説明し、より印象づけようとしている感じがしました。youtubeでこの本で紹介されている”例え”についての情報が共有されているのでシェアします。(ご存知のようにyoutubeでは自動字幕と日本語翻訳もだせます。ただ翻訳はそこまで正確ではないです。)



以前のブログでも紹介しましたが、徒手療法家のほとんどが忘れているというか知らない「痛みを伝える神経はない」、「神経は危険信号を脳に伝えるだけ」ということもかなり強調されていました。以下の画像は過去のブログ「痛みの治療に役立つ71ナゲット+追加ナゲットの計77ナゲット!」の一つです。有料読者以外の方々で知らない人達はいわゆる情弱にならないようぜひご自身でお勉強されてください(笑)。

(注)この画像を見ればわかるように肩が痛い患者さんに肩に鍼を打ったりマッサージしたりするのはベストな手法ではないとわかるはず

そしてその危険信号を脳に伝える媒体としての例として番犬(下の動画)、スピードメーター、信号、ツインピークモデルを使って説明していました。患者さんにもわかりやすい例だと思います。



また、体の中の神経の役割としての説明がこの動画でもわかりやすいです。


次に印象的だったのは患者さんへの「説明」のこと。過去のブログ「痛みについて勉強しなおす(13)---患者さんの比喩的表現に気をつけろ!---」でも少し触れていますが、もっと具体的に例えば患者さんが医師に坐骨神経痛と診断された後に来院するケースも多いと思います。そういう時にどういう話し方をすればいいかが具体的に挙げられており、非常に参考になりました。そう、患者さんを怖がらせたり、不安にさせないように痛みの科学とエビデンスに基づいた説明の重要性を説いていました。

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