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コップの虚空

詩を書くことを始めて
もう20年以上になる

詩人たちのやりとりを眺めて
虚空に長く息を吐く

まるで冬の長門峡にでも
訪れたかのような心持ち

取り戻せないものがあるとしたら
それは覚悟だったのかもしれない

彷徨えども部外者
淡水に流されど泳げぬ
瀬戸の赤鯛

深傷を負って
浜辺に打ち上げられて
息苦しくも生き長らえて

虚空に弧を書くカモメも
この赤鯛だけは喰わぬ
何が気に喰わぬのか

はた目を上げて風を聞く
詩人たちのやりとりは続く

過ぎ去った日々は帰らず
淡水のように流れた

気の利かぬ給仕が
水の入ったコップを

いつまでも
持って来ぬように

毎度
慣れた手つきで
ウォーターサーバーと向き合う

お互い何も語ることなく
水が流れ落ちる先
コップの虚空

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