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「プロイセン人」天文学者の生誕450周年を記念して刊行された記念誌

コペルニクス / ヘルマン・ラウシュニンク編『抄訳:天球の回転について』
独語訳 1923年 ポーゼン刊
Coppernicus, Nicolaus, Über die Umdrehungen der Himmelskörper. Aus seinen Schriften und Briefen. Posener Drucke. Hrsg. von Hermann Rauschning, Erster Druck. Zur 450. Wiederkehr des Tag der Geburt von Coppernicus in Thorn am 19. Februar 1473. Aus dem ersten der Sechs Bücher über die Umdrehungen der Himmelskörper.Posen, 1923.<R22-234>
German edition, 4to, engrave of author, title page, 77pp, original soft bound, untrimmed edges

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コペルニクスの版画及びタイトルページ

本書はコペルニクスの生誕450周年を記念して刊行された彼の主要著書『天球の回転について』のドイツ語抄訳です。底本には、1873年の生誕400年を記念書籍として刊行された同書のラテン語版が使われています。

第一章:宇宙は球形であること、第二章:地球も球形であること

本書の解説において、コペルニクスはドイツ人家系のプロイセン人であり、『貨幣論』をドイツ語でも起草したこと、東プロイセン出身であり哲学の「コペルニクス的転回」をもたらしたカントとの知的活動における類似性を指摘するなど、コペルニクスをドイツ人ないしドイツに属すべき人物であることを示そうとする内容となっています。

第四章:天体の運動は一様で円形で不断であること、並びに円運動からなること

コペルニクスがポーランド人かドイツ人かという論争は、彼の記念碑建立などを巡って、19世紀前半のナショナリズムの勃興と共に既に始まっていました。本書の記述もその両国のナショナリスティックな抗争の歴史の流れに属するものであります。1920年代という時代的背景から考えられることは、コペルニクスが存命時に活動していたヴェスト・プロイセン州(王領プロイセン)をはじめとするドイツの領土がヴェルサイユ条約の帰結としてポーランドへ割譲されたことは不正であることを訴えるため、ヴァイマル期の修正主義的外交をコペルニクス著書の翻訳という文化活動により援護しようというのが本書発行の目的であったものと思われます。

本書解説ページ

本書の解説を添えているヘルマン・ラウシュニンクはトルン出身の政治家で作家、1932年に国民社会主義ドイツ労働者党に入党しますが、後に党批判に転じアメリカに亡命を余儀なくされます。亡命先でヒトラーとの個人的対話を記録したという『ヒトラーとの対話』(邦訳題『永遠なるヒトラー』:後に偽書と判明)を刊行してセンセーションを巻き起こした人物として知られています。

参考文献
近藤孝弘『国際歴史教科書対話 ヨーロッパにおける「過去」の再編』中央公論社、1998年、72-75頁

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