エラ・ヤング自伝『花ひらく黄昏』|許されざる罪
わたしはまた神意に思いを巡らすようになった――暗い思いを。天国があり、地獄がある。天国は終わりのない安息日である。ウィルソン博士がそうだと言っている、教会の高い説教壇からそう言っている――毎週日曜には、わたしは陰鬱で退屈な長老会派教会の家族専用席に妹のジェニーとモードと腰かけ、くすんだ単調な壁や、反対側の家族席や、ウィルソン博士の黒いガウンの肩で気をまぎらしていた。
「天国は終わりのない安息日である!」
わたしは地獄に耐えられないだろうかと考えた。ひょっとして、炎には慣れるかもしれない。それはおおぜいの人たちが地獄にいる。わたしはキッチンの熱いストーブにおそるおそる指先で触れ、天国に行くしかないと判断した。ただし、それには天国にふさわしい人間でいなければならない。罪を懺悔する必要がある。昼間はなんとか気をつけていられそうだったが、夜は不安だった。夜に死んで地獄に落っこちるかもしれないではないか。寝る前に懺悔をしなければならない。わたしはベッドの横にひざまずいて涙を絞り出そうとした。涙一滴でじゅうぶんだろう。自分の罪を悔いる気持は一度も湧いてこなかったので、かわいがっていた小鳥が死んだとか、だいじなものをなくしただとかの悲しいことを考えなければならなかった――一滴でも涙が出れば、ベッドに入れる。ときどき夜中に目が覚めて、きちんと懺悔しなかったような気がすることもあった。身の安全を図るため、わたしは眠りに落ちるまで賛美歌を唱えた。わたしは賛美歌を憎んだ。
まさに神が人を追いつめるのだ。神は人間を世界に送り、世界を人間にとってつらいものにし、できるだけ楽しみから遠ざけ、死ねばそれっきりになるのさえ許さない。人は天国に行かなければならないし(もし地獄に我慢できないなら)、ずっと神を讃えていなければならない。その神を讃えるということについて、わたしはくりかえし考えずにはいられなかった。懺悔については気にならなかった。それは神を出し抜くようなものだった――けれど神を讃えるというのは! わたしは神を憎んだ。
イエス・キリストはそれほどきらいではなかった――なんと言っても、イエスが神の子であるのは本人にはどうしようもないことだし、父に似ているようにも見えない。讃えられるべきは神である。毎晩、懺悔をするたびにわたしの心に決意が育っていった。神を讃えて永遠に過ごすなんて、まったくもってわたしには無理だ。
「ともかく」とわたしは自分に言い聞かせた。「神にもできないことがひとつある。わたしに神を讃えさせることはできない。それだけは諦めてもらう」
それが地獄行きを意味するのは承知していた。わたしは耐える必要があるだろう。何百万という人たちがどうにか耐えているのだ。地獄にはわたしが好きになれるような人もいるだろうと考えた――天国に行った人たちを好きになれないのは、はっきりしていた。わたしの心は決まった。わたしは最後に懺悔をした。つぎの日、こっそり客間に忍びこんだ。部屋には誰もいなかった。扉を閉め、声に出して言った。
「神よ、わたしはあなたを憎みます。悪魔があなたに反逆したとき、悪魔が勝っていたらよかったのに。悪魔のほうがあなたよりまし!」
わたしはやりとげた。わたしは許されざる罪を犯した!
わたしは部屋を出て扉を閉めた。後悔はなかった。もう、親の言うことを聞かない女の子がどうなるかという脅しでわたしをびくつかせることは誰にもできない。わたしの人生はわたしのもの、その考えにはなにかすばらしいものがあった。
THE UNPARDONABLE SIN
Ella Young
館野浩美訳