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エラ・ヤング自伝『花ひらく黄昏 正確にまた不正確に記憶にあることども』
白いユニコーンに
そして
黄褐色のライオンに
挨拶を
目次
第一巻:エーレ
子供の世界
知恵の木
サーカス
花ひらく黄昏
喪失
許されざる罪
新たな地平
劇場
いさおし
新たな田舎
ウェールズはグラモルガンのアリグザンダー・アーカート氏に、またカリフォルニア州コーヴィーナにある神智学協会の C.J. ライアン氏に、ケネス・モリスの著作からの引用をお許しいただいたことを感謝いたします。
夢の中でわたしは北のさびしい湾岸を歩いており、ひとけのないプラチナ色の浜にのろのろと潮が忍び寄ってきた。あたりを照らす光は深い水をくぐってきた陽光のようだった。わが姫がかたわらを歩いていた。
彼女は言った。「あなたが富と名誉を得たら、わたしの国に情けをかけてくれますか」
彼女が言うのはわたし自身の国のことではなかった。わたしが愛情を抱いていないその国のために彼女は悲しんでいた。涙が頬を伝っていた。
「もしわたしがあなたの国に情けをかけたら、わたしが富と名誉を得たら、わたしといっしょにいてくれますか」わたしは訊ねた。
彼女はわたしに手をあずけ、四月の美しさの顔には喜びがあった。
ひどくしずかに満ちる潮につれて歩むあいだも、この夢を手放さず、三つのものを手中にすることもできるのだとわかっていた。つまり富と、名誉と、わが姫の手とを。しかし自分がそれを拒むだろうというのもわかっていた。わたしはすでに、もっと困難な道を旅し、もっと幻獣めいた夢に心を捧げてしまったのだから。
Flowering Dusk
Things Remembered Accurately and Inaccurately
by Ella Young
Longmans, Green and Co. 1945
館野浩美訳
Image: Portrait Sketch of Ella Young
by Thomas Handforth