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本命マニュアルは破るためにある。でも、デート当日にはインカムが欲しくなる。

今日は所用があり、半年ぶりに銀座へ足を運びました。銀座に来ると不思議とノスタルジーな気持ちが溢れてくるのです。先日、勤務中にふと通りすがりの誰かからジョーマローンのライムバジル&マンダリンの香りを嗅いだ瞬間、ある日の記憶がフラッシュバックしたように、銀座の秋風も私を7年前へとタイムスリップさせてくれました。

さて、「溺愛される」「愛され女子の特徴」「本命にだけ取る行動10選」。これらのタイトル、恋愛マニュアルに詳しくなくても一度は目にしたことがありますよね。メソッドは多少異なるものの、どれもこう締めくくられています。

「本命争奪戦に勝ち残り、彼が手放せない溺愛される女になろう!」

「本命になれ」とか「溺愛されよ」といったゴールが設定されています。しかも、その先も「ずっと愛され続けるためには」なんて追加の講義まで付いてくる。これさえ守れば幸せが手に入るんだ、と。ふ〜ん、なるほどね。私割としょっちゅうやらかすタイプなのでもっと教えてください、なんて思い読み進めるわけであります。

でも実際には、この「本命」という言葉に振り回されて、恋愛が逆に難しくなることもよくありますよね。そもそも「本命」って人によって意味が違うし、絶対的な基準なんてない。にもかかわらず、「本命にならないと愛されない」とか「本命じゃなきゃ価値がない」なんて考えると、自分の幸せを他人に委ねてしまっている状態です。これじゃあ、うまくいくものもいかなくなってしまいます。

そう、そんなこと私たちも分かっているんです。 でも、真面目な私たちは「失敗から学ぼう」という真摯な姿勢と勤勉さが仇になって、本筋をす〜ぐ見失いがち。何が「ダメ」で、なぜうまくいかなかったのか、ざっと50項目くらいチェックリストを埋め始めるのであります。

• 笑顔でいられたか。 ☑︎
• ミステリアスさを演出できたか。 ☑︎
• 忙しそうに見せるために本当に予定を詰めたうえで返信を遅らせられたか。 ☑︎
• 付き合う前に一線を越えなかったか。 ×

あっ……これだ、これだったんだぁ〜!あれだけ口酸っぱく言われてたのに。だから「本命」になれなかったんだな、なんて深夜まで答え合わせをしながらスマホを握りしめてしまう。(ついでに連絡も来ないか待ちつつ……。)

久しぶりに会った女友達に「あーーあんたそれやっちゃったんだ(笑)。次、次!」なんて言われて、ネット上の恋愛カウンセラーも「それは1番のタブーだし基本的には本命になれないね。挽回する方法もあるっちゃあるけど茨の道だよ?覚悟して?」と口を揃える。「次から気を付けてね」って。

勤勉な私たちは、さらに勉強を続ける。 もうやれと言われたらマカオのバンジージャンプにトライするのも辞さない勢いで。通勤中も、休憩中も、デート前の予習は欠かさない。

そんな私も7年前の今頃、第二候補の彼との2回目のデートに行っていました。告白はまだされていないから、絶対に流されないと決めていました。ついでに終電の頃の夜の空気の催眠や魔法ににかからないようにアラームも2個かけてある。(大体この時間にほだされやすいから。)
彼は関西出身で、4人兄弟の次男、細身で背が高く犬顔が可愛らしくて愛嬌がある。ハイスペックなのに気取ってなくて同年代で気楽に接せられるし、会話もテンポが良く自然体で楽しめるから、つい気をゆるしてしまいそうになる人だった。

「あ、ここ進研ゼミでやったところだ!」とばかりに恋愛コラムで予習したテクニックを次々と実践。これなら赤ペン先生もきっとニコニコ顔で100点満点をつけてくれるし、彼の反応も良かった。そして、2軒目を出たところで彼とは自然に手を繋いでいました。数寄屋橋交差点近くを歩いていると「仕事でいつも気が張っているから、愛Cちゃんに癒されたい。うちに寄って帰る?」なんて無邪気な顔で誘ってきた。銀座から彼の家がある清澄白河まではタクシーでもそう遠く無い。

本当はめっちゃ行きたい。だけども、だ・け・ど、私にはメソッド通りにカマトトをかまさないといけないミッションがある。それは何故か。さもなければ「本命」「溺愛」「幸せ」に遠くなるらしいんだから。よし、今日は絶対に大丈夫だ。ここは予習したスマートな別れ際を演出だ。結局別れ際に挨拶程度の軽いキスをして終電に間に合って帰宅しました。

その晩、彼から「また会いたい」と連絡が来た時は、よーしよし、成功した!と思ったものです。でも、3日後、1週間、10日と音沙汰がなくなり、気づけば2週間……。沈黙のターンを信じながらも不安になっていたところ、突然「今日会える?」と連絡が。それに対して「もう今日は帰宅したからリスケしようか」と提案すると、間髪入れずに「それは無理」と断られ、さらには「俺行きの特急券はゴールデンウィークまで予約が埋まってるから」ときた。(ちなみに11月。)

はぁっっ?!!!(大声)

突然上手くいかない局面が来た時って、なんだか100点満点の対応をしたつもりでいた自分が急に恥ずかしくなりますよねー。自己嫌悪で「あー、あの日の自分、コンディション悪かったのかな?」って思っちゃう。メソッドに載っていなかった展開がいくつもあったし、あの時メソッド的に正しい答えはどうだったんだろう?って。もういっそのこと手練手管の恋愛猛者に私のキャラを把握したうえで、遠隔からインカムで指示を出して欲しいくらいでした。
「今です!お辞儀するな!笑顔だ!そこで話しを遮るな!余計な情報漏らすな!変に下手にでるな!ガミースマイルで笑うな!おでんのからしが顎下についてるぞ!そうだそうだ。よし。完璧だ!」なんて。(笑)

それにもう一つ、メソッドを完璧にマスターしたとしても、もし表情や声色から「大根芝居」が漂っていたら、どれだけ彼に寒い思いをさせたんだろうか?それなりに遊び方と女性の扱いが小慣れている彼のことだ。そこは都合よく鈍感な訳がない。私が真面目に「演技」してる姿が、相手からしたらどれだけサブかったことか…。もう、その場で思わず凍らせたかも。ポイズンアイシーならぬ、ポイズンアイビーならぬ、ミスターフリーズである。あの時「演技」と完全に見抜かれこの女ちょろいな、寒いなって思われていたのだとしたら、今頃『銀座の最強寒波2017冬』として語り継がれているかもしれない。

で、結局、どれだけメソッドを完璧にこなしても、心の中では「これ、相手に伝わってる?」と不安でいっぱいでした。その演技が何かしらこちら側の下心も透けて見えるものだったとすれば、相手から舐められた態度を取られるのも無理なかったと思います。イニシアチブはけっして手放してはいけないものですし。思い返せば、良くも悪くもスレる事が出来なかった。したたかになれず、いつまでもどこかお人好しさや牧歌的な優しさが邪魔をして、かろうじて親しみやすいくらいが取り柄のポジションの私たちは、結局いつもメソッドをこなしきれないまま、中途半端に終わってしまうのです。

ふーー。銀座に足を運んだばかりに色んなことを思い出してここまで語ってしまいましたが、結婚してしまえば、あの頃の全力で足掻いていた自分が可愛く見えるものですね。(笑)もし、今同じように恋愛迷宮に迷い込んでいる方がいれば、遠隔のインカムで全力エールを送りたい!と、そんな風に思いながら、今日も恋愛バトルの舞台裏から見守っております。

「はい、今です!妙なカマトトぶるな!いけ!一緒にいたいなら帰るな!本命とか一旦どうでも良いから楽しもうよ!」って。

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