個人レッスンの先生を選ぶポイント
部活動で演奏技法を習うだけでなく、個人で音楽教室に通って演奏技法を習得するのもいいことである。個人で先生を選ぶのに、まずはヤマハ音楽教室などの会社に属している先生を選ぶ場合と、全くどこにも属してないフリーの先生を選ぶ場合がある。ここではどちらがいいとは判断しない。どちらにしても個人レッスンの先生との相性が最も重要である。相性は実際にレッスンに通ってみなければわからないが、レッスンに通い始める前に先生を選ぶためのポイントを列挙する。
・月謝とレッスン時間と回数はどのような仕組みとなっているのか。
・家からの距離はどのくらいか。
・レッスンの希望曜日や時間帯に空きがあるか。
・発表会があるかどうか。
・普段からピアノ伴奏をしてもらえるかどうか。
・先生からの課題曲以外に、自分の弾きたい曲を教えてくれるかどうか。
・合奏(アンサンブル)の指導をしてくれるかどうか。
・演奏技術以外の音楽的教養を教えてくれるかどうか。
先生を選ぶためのポイントはこのようにいくつもある。これらの全ての希望を叶えられることは滅多にない。都内の場合、プロの音楽家はたくさんいるので先生を選ぶゆとりはあるが、東京から一歩外に出てしまえば、その地区で楽器を教えている人は一人しかいない、という状況でも不思議ではない。そうなると、遠い距離を通うか、近場の先生にお願いするかを選ぶだけとなってしまうこともある。
月謝については、ほとんどの人が事前にレッスン料を確認していると思われる。コストパフォーマンスを求めるなら、何分のレッスンでいくらかを考えてほしい。先生によっては30分5000円の人もいるし、60分7000円の人もいる。単純に5000円の方が安いと考えるのは早計である。レッスンの時間は20分くらいから1時間くらいとしている先生がほとんどである。どのくらいの長さがいいのかは、レッスンを受ける人の個人の問題なので、自分の集中力と相談して決めてもらいたい。小さい幼児に教える場合は30分が限度であるが、小学生になれば1時間でも大丈夫な子が多い。上達することは目標に入ってなく楽しむためだけに楽器を練習する場合、1時間のレッスンは長いと感じるかもしれない。先生と音楽的なおしゃべりをしたいからレッスンに通うという人もおり、2時間のレッスンで楽器を持つ時間30分、お茶の時間90分というような状況の人もいる。
家からの距離は、雨の日に傘と楽器と楽譜を持って通うことをシミュレーションしてほしい。荷物がなく晴れていれば問題ない距離でも、カバンに比べて大きな楽器を持っていくのはつらいという距離の場所もある。音楽教室によっては、レッスンの時に楽器を貸してくれる場合もあるので雨の日はその楽器を使うという手もある。しかし、基本的にレッスンには自分の楽器を持っていくものなので、そのつもりで交通の便を考えてほしい。
発表会があるかないかの違いはとても大きい。1980年代ころのバブル期は、どの先生も生徒がたくさんいて発表会をするのが当然であった。今は生徒数が少なく発表会を開催できる先生は減ってきている。何人かの先生同士でグループを組んで発表会を行っているところもある。発表会は恥ずかしいし緊張するから嫌いという人もいるが、発表会というのは上達のためにはとてもいい勉強の機会である。可能な限り発表会にも挑戦してほしい。
最近、ピアノ伴奏をしてくれる先生も減っているようである。そもそもレッスン室にピアノがないということもあるし、出張レッスンという形態をとっている先生もいる。発表会の時はしっかりと弾ける人にピアノ伴奏を依頼するとしても、普段のレッスン中にピアノ合わせを簡単にしてくれるかどうかは大きな問題である。上達するにはピアノ合わせが必須であるし、上達は度外視して演奏を楽しむだけにしてもピアノと合わせられた方が楽しみは増える。
先生によっては、生徒の弾きたい曲を教えることを渋る先生もいる。上達のためには、ある程度決まった曲順で練習した方が効率がいいという理由と、生徒が持ってくる曲がその生徒のレベルに合っていないという理由があるからである。オーケストラに入りながら個人レッスンを受ける場合、そのオーケストラの曲を教えてくれるかどうかという問題にもつながる。事前に確認できるようなら希望を伝えておいた方がいい。
1980年代後半までの景気が良く子供がたくさんいた時代では、各先生が教えている生徒数も多く、自分の教えている生徒を集めて合奏(アンサンブル)を経験させていた先生もいた。しかし現在の状況では生徒数が足りなく、合奏を教えられる音楽教室はかなり少ない、というか東京と大阪以外はほとんどない。また、合奏までいかなくても、デュオ、トリオ、カルテットなどを教えてくれる先生もなかなかいない。バイオリンの先生なら2人の生徒の時間を合わせて、チェロは誰かプロに依頼して、先生自身はビオラを弾けばそれだけで立派なカルテット編成になる。金銭的にも、2人の両生徒から1回分のレッスン料を徴収すれば、一人分は自分に、もう一人分はチェロの人にお支払いできる。だが、そう簡単なことではないようである。カルテットは難しいイメージがあるかもしれないが、小学生でも弾けるような易しい曲も存在する。そもそも、教則本に掲載されている曲のうちいくつかは元がカルテットの曲である。そういうことを経験させてくれる先生が増えればアマチュアオーケストラの活性化にもつながると個人的には思っている。
演奏以外の音楽的なことも音楽教室で体験できるといい。例えばレコードを聞かせてもらえるとか、プロの演奏会を紹介してくれるとか、めずらしい楽器を触らせてもらえるとか、色々ある。もう少し真面目なこととしては、楽典的なことや歴史的なことを教えてもらえることもある。もちろん、生徒の好みにマッチしていることが重要であるが、特に子供の場合、何がその子にとってプラスになるかわかりづらいことがあるので、たくさんの経験を促すことができるというのは指導者としての実力である。
先生を選ぶのに、先生の出身大学やコンクール入賞経験を絶対的な目安として考えてしまう人がいるが、それはやめた方がいい。もちろん、参考にしたり、一つの目安としたりすることに問題はないが、経歴や肩書のみで先生を選ぶことがあってはならない。また、演奏がうまいから指導がうまいとは限らないのが先生を選ぶ際の難しさである。例えば幼児を教える場合、演奏が上手いことよりも幼児の扱いに慣れている方が重要という場合もある。色々な観点をもって先生を選び、末永く先生と仲良くなってほしいと思う。
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