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さとなお×つだの雑談/後編(5年やって気が付いたこと/今後やりたいこと編)
「最近、どう?」
ファンベースカンパニー 会長の佐藤尚之(さとなお)と社長の津田匡保(つだ)が近況を話す対談2回目。聞き手は松田紀子(ジョン)でお送りしています。
ここまでは二人の出会いなどを伺ってきました。
↓ 前編はこちら ↓
ファベースカンパニーを5年やって気が付いたこと
ジョン)ファンベースカンパニーを立ち上げて数年経ってみて、今感じていることは何ですか?
津田)ここまでやってきた中で感じているのは、「ファンベースは世代を超える」。クライアント企業の方が教えてくれたんですが、マーケティング部署で、普段だとあまりしゃべらない若手社員さんが、ファンベースの話になると生き生きと発言するんですって。どうしてかというと、ファンベースってまだ社内の誰も経験値が少ない新しい取り組みだからみたいで。経験値が少なめの若手の方も自分の考えをオープンにできる。結果、チームの雰囲気もすごく良くなる。世代を超えて一緒にファンと向き合うことができるっておっしゃっていました。今、社員のモチベーションをあげる策はたくさんありますが、僕が一番の特効薬だと思うのは、やはりファンと会うことなんですよね。
それはファンベースカンパニーをやってみてすごく感じたことです。
ファンベースやってる時って、クライアントの社員のみなさんがすごく幸せそうで。
ジョン)ファンミーティングの現場ではみんな泣いちゃうもんね。
津田)お客さんと企業の人が、心の根っこの部分で支え合ってる。一人のファンの声に救われる社員さんがいたりするし。僕も講演をした後とかのアンケートで、すごくいい感想を書いてくれる人がいたら、それだけで一ヶ月ぐらい幸せな気持ちでいられたりします。支えられていますよね。そこは実際やってみて実感した副次的な効果っていうか。
ファンベースカンパニーをやってきて発見したこととしては、若い人もいろんな意味でチャレンジできるっていうことや、ファンと会うことは社員さんのモチベーションに大きく寄与すること。
ジョン)さとなおさんはいかがですか?
さとなお)僕の場合、「ファンベース」という考え方で会社ができちゃった怖さっていうのが最初の二、三年あったわけですよ。
僕がたどり着いた理論構築をもとに会社ができて、人が集まってきて、人生まで変えちゃうかもしれない。でも、そのことに対する責任感を重く持ちすぎないようにしなきゃっていうのが最初の三年ぐらいですかね。重くなりすぎると動けなくなっちゃうから。
ただ、いろんなクライアントとお付き合いさせていただいて、ファンにも会ってみて、分析してみて…という過程を30~40個ほどやったあたりから、ようやく「ああ、これでよかったんだ」という確信が生まれたんですよね。大丈夫だ、やっぱりファンベースの方向は正しい、と。
その過程でみんながどんどんファンベースを発展させてくれたのも嬉しかったなぁ。ファンミーティングのコツひとつとっても、みんなたくさんの経験値を持ち寄って完成してくれたじゃない? それがホント嬉しかった。僕は種を蒔いたけど、そこからメンバーがちゃんと育ててくれている。会社を立ち上げたときは「ここからどんな芽が出るかなぁ?」っていう漠然とした期待と不安があったけど、見る間にどんどん成長して、幹に枝に育っていく過程はとてもありがたかったしずっと感動しながら見ていましたね。
あと、ファンベースは2023年に人気特集記事の第一位を獲得したこともありましたよね。ここまで浸透するのにじわじわと5年もかかっているのが逆に嬉しいかな。1年とかでバズワード的にブームになっていたら逆に足元がぐらついていたと思うけど、じっくり5年かかって伸びてきている。これがとても中長期施策であるファンベースっぽくていいなぁと思っています。
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今後ファンベースカンパニーでやりたいことって?
ジョン)今後のファンベースカンパニーやファンベースに関して、どう捉えてますか?
さとなお)すごくポジティブに捉えてますね。情報過多・メディア過多・コンテンツ過多で従来の手法が通用しないこれからの時代、マーケティングやコミュニケーションは「ファン」抜きではなりたたないと思っています。そういう意味でファンベースの重要性はこれからもっと増すと思うし、ようやく機が熟してきた感があります。
あと、ファンとの「つながり」を考えていくと、この時代の「次」も見えてきた気がしています。
2023年に出版された「THE GOOD LIFE」(ロバート・ウォールディンガー、マーク・シュルツ著/辰巳出版)によると、「健康で幸せな人生を送るたったひとつの原則は、よい人間関係(つながり)に尽きる」という結果が、ハーバードによる84年に渡る科学的調査で出ているんですね。そう、「よいつながりこそが幸せの鍵」なわけです。
つまり、人がどこかの企業やブランドのファンになり、そこでつながりを作っていくことは、健康にも幸せにも直結するということです。ということは、「ファンと企業のよいつながり」「ファン同士のよいつながり」を作っていく「ファンベース」という仕事は、幸せに直結する大切な仕事、ということになりますよね。コミュニティ施策などはまさに幸せに直結している。
そしてそういう「つながり」は、人々の健康にとって重要な「ソーシャルウェルビーイング」のとても大事な要素でもありますし、「孤独」や「孤立」が問題視されていくこれからの日本においてもとても大切なものになると思っています。それらを作っていくファンベースって、なんというか、とても幸せな仕事だなぁ、と。
ファンって、「好き」という感情がベースにあるから、とてもポジティブに動くし人にも伝えたくなる。そうやって自走式につながりが増えていく。日本中の人がなにかしらのファンコミュニティに属し、企業やブランドとファン、そしてファン同士のつながりをもったりすることは「日本全体の幸せ」にもつながってくる。そんな夢をいまは見ています。
ジョン)なるほどー。なんか希望が持てる話ですね。津田さんはいかがですか? ファンベースや、会社についてのこれからなど。
津田)今、うちはファンベース実践のサポートをする会社なんですよね。
さとなおさんが書かれた『ファンベース』を読んですごいいいな、と思ったとする。でも、実際どうやったらいいのかわからないっていう実践部分をサポートしている。クライアントの皆さんと一緒にできているっていうのは、すごくいい状態だと思ってるんですけど。
その上で、この先の思いとしては、その企業や地域の方々とファンベースカンパニーで例えば一緒に何かを作るとか。「ファンベース」という考え方を真ん中に置きながら、なんかこう一緒に新しい場所を作るとか。街づくりとか、商品開発とか。そういうことがどんどんやっていけると面白いなと思っていて。
ジョン)ファンベースをもっと立体的にしていくってことですかね?
津田)そうですね、我々はそのハブとして動きながら。うちのクライアントの方々って熱心ですごく良い方が多くて、「ファンベースをやってる企業同士をつないでほしい」みたいなことをおっしゃられたりするんですよね。たしかに、こことここの企業さんを繋いだら、すごく面白い事できそうだな!っていうアイデアが結構あります。
なんかね、やっぱり一社だけで何かできる時代じゃないと思うんです。みんなでつながっていかないと。
ジョン)そうですよね。働き手も減ってますし。少子高齢化ですし。いろんな人の手を楽しく借りながら広がらせていかないと。
津田)そう、薩長連合じゃないけどさ、なんか、同志で。
ジョン)横につながって何かしたいということ、最初のころからおっしゃてましたよね。ずっと一貫して。津田さんの炎は消えない。メラメラしている。
津田)そうですね(笑)。
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暮らしの中のファンベースとは?
ジョン)最後私、これ個人的に聞きたかったんですが、暮らしの中で、「あ、なんかこれってファンベースじゃん」と思ったことって最近ありました?
津田)うーん、それでいうと、結構家庭とか子育てにもファンベースはすごく活かせるというか。うちは5人家族なんですけど、みんなで飯食ってても、結構ファンミーティングみたいになるんですよね(笑)。
ジョン)それはなんのファンミーティング?
津田)僕の癖なのかわかんないけど、話していて「あ、この人のこういうところ良いな」と思ったらポロッと言ってしまうんですよね。例えば突然息子のいいところを言っちゃったりするわけですよ。そしたらほかの姉妹や妻もみんな順番に息子のいいところを言っていったりして。
ジョン)いいご家族だ~。
津田)なんか夕飯がいい雰囲気になるんですよね。あ、これって普段やってるファンミーティングみたいだなって。
ジョン)息子の好きなところ、家族の好きなとこってなるわけですね。
津田)「そういうとこ、ホンマいいよね」とか俺が言うと、あ、みんな「そうそうそう」とか。
ジョン)うん、それはいいですね。
津田)これも息子のファンベースだなとかね(笑)。
ジョン)自己肯定感を育てるの本当に大事ですからね。
ジョン)さとなおさんはいかがですか? ファンベース的なことありました?
さとなお)僕、3年前に「一般社団法人アニサキスアレルギー協会」を作ったんです。自分がそのアレルギーになって、魚介類が生でも焼いても煮ても食べられなくなり、ダシまでNGになって、本当につらい思いをしてるので、その患者の「つながり」を作ったんですね。医師や研究者も含めた「つながり」です。
で、そこに患者が集まるのはわかるんだけど、患者じゃない「支持者」も入ってくれているんです。これは言い方は少し違うけど、ある意味「ファン」であり、とてもファンベース的だなぁと感じています。まぁ我々がいろいろなところに寄付するのも一緒ですよね。ある種ファンベース的なものを感じます。
あと、50歳以上のオンラインコミュニティを2023年に立ち上げたんですね。「グッドエルダーズ」っていうんですが。リタイア前後で孤立しがちな年代だから、お互いちゃんとつながって病気や介護などのいろんな試練を乗り越えながら楽しく生きていこう、みたいなコミュニティです。
これは何かのファンの集まりということではないですが、なんというか、シニア同士の「共感・愛着・信頼」みたいなことが育っているんですね。年を取るのは何かを失っていく過程なんだけど、そういう境遇を共有することの共感みたいなことがある。これもちょっとファンベースのアプローチに近いんですよね。共感のつながり、みたいな観点ですが。
ジョン)同じような悩みや痛みを持っている人たちだからこそ、共感は強まるし、愛着もつくられていくんでしょうね。
…という感じで終了したさとなお・津田対談。
普段忙しくてなかなかゆっくり語れないからこそ、雑談も兼ねた「思い」を伝え合うって大事だなと改めて感じました。この記事が好評だったら、また対談の機会を設けられればなと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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