#11 退職した。後悔するかと思ったけれど…。
退職と移殖
3月末に退職をして、4月に移植した(退職を決めた秋ごろに採卵していて、その際の卵の質が今まで史上最高のものでした)。卵の状態もいいし、私の体の状態も、ものすごくいいと言われました。(とにかく口の悪いおじさん先生から)そんなこと言われたの初めてでした。淡い期待を抱きながらも移殖をしたら、それがなんと着床し、私の子宮にしがみついてくれたのです!
主人は安定期になるまで毎日出勤途中に神社にお参りをし、私も安静に心豊かに過ごすようにしました。
もう、あの生徒が…この生徒が…あの親が…と気をもむこともない。ある意味、頼られない生活が私の気持ちを和ませました。
そして、私がいないと!という気持ちも薄らいだ。お給料は一馬力になったけれど、不妊治療費用もなくなったので、十分暮らせた。それどころか、日中の何気ない雲の変化や季節の変化を楽しむ自分に驚き、心の豊かさとはどういうものかを知った(今更か~い!)。
ただ、つわりがひどかったので、それどころじゃない日も多々あり。
私は教員という職業に就いたことを誇りに思うし、充実した教員生活を送れたと思っています。だから、退職したらとっても後悔するのではと内心‥自分の決めたことが正しいかどうか、ビクビクしていた。だけど…退職してやっと自分が見る世界に鮮やかな色がつきはじめた感じはした。
そして、それから数年経ちますが、
後悔した日は一日も、一瞬も、ない(笑)。
余談:通院後の喫茶店で
退職を決めて、妊娠につながった採卵をした秋ごろ、通院後に近くの喫茶店に寄った時のこと。
私のあとに入ってきた白髪の男性が、真昼の比較的すいている店内にもかかわらず、私の前にゆっくりすわりました。フリーの広い座席だったのでどこに座ってもいいはずなんだけれど。
ふと顔を上げると、その男性が、なんと私の祖父にそっくり!
小さなころから私のことを可愛がってくれた祖父です。
目を合わせたとたん、なぜだか涙が止まらなくなってしまいました。その男性は私に声をかけるというわけでもなく、柔和な顔でおいしそうにコーヒーを飲んでいるだけなのに。それにまたほろっときて…。
しばらくしてから、私が飲んでいたハーブティに珍しく甘さが欲しくなり、はちみつを取りに行って戻ると、もうその方はどこにもいない。この数十秒の間に‥外に出たならわかるはず(くらいの場所の移動だった)のに。トイレかな…とも思い、しばらくゆっくりしましたが、もう見かけることはありませんでした。私は、祖父が黄泉の国から励ましに来てくれたんだと(勝手に)思っています。