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別居婚という選択。

コピーライター仲間で、友人の女性の話。
彼女は大学時代から付き合っていた彼と最近結婚したばかり。新婚ホヤホヤである。ところが、この間飲んだときに耳を疑った。なんと、もう別居を始めたと言うではないか。

と、驚いたのもつかの間、よくよく聞けばその別居、なにも夫婦仲が悪くなったから始めたわけではないらしい。その子曰く、お互いに干渉されたくない性格なのと、大雑把で片付けがあまり好きじゃない彼女に比べ、いつもきっちり片付けておきたい彼との多少の生活スタイルのちがいから、別々に住んだ方が双方とも快適なのではないか、という結論にたどり着いたのだと言う。しかも、別居といっても同じマンションで、間にひとつ挟んだふたつの部屋を借り、それぞれ住んでいる。
 
夕食はどちらかの部屋に行っていっしょに済ませ、食べ終わったら自分の部屋に戻るようだ。さらに、すぐに連絡を取り合えるように、家にいる間の連絡手段として、なぜかトランシーバーを使っている。
また、ある日の休日。朝、洗濯物を干すときに偶然タイミングがいっしょになりベランダで顔を合わせ、夕方に取り込む際もまた同じで、思わずハニカミあってしまった、というエモいエピソードも聞かせてくれた。
 
彼女は、「別居」という言葉がよくないのだと言う。たしかに、住んでる形態が「別居」なだけで、その響きから連想される夫婦仲ではまったくない。むしろ、新婚とはいえ、結婚してもなお付き合っていた頃の新鮮さを失っていない。

ちょっと興味を持ち、調べてみたら、結婚してからも別々に暮らす「別居婚」という形が最近少しずつだが増えているらしい。実は、夫婦には同居義務があり(民法752条)、別居婚は違法とも言える。だが、この民法の規定は、一方が同居を望んでいるのに、他方が一方的に同居を拒絶する場合を想定している。夫婦双方が別居を望むのであれば、法律が強制することもないのだ。
 
多様な時代において、これからこの別居婚のようなスタイルは増えていきそうだ。ひとり暮らしだと、とことんダメ人間になる自分のような人種にはまったく向いてないように思えるが(大学時代に証明済みである)。

いまは、トランシーバーから、知らない女性の声が聞こえてこないことを願っている。

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