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群発頭痛記
「群発頭痛」
という名前を聞いたことがあるだろうか。
世界3大激痛のひとつと言われ(残り2つは心筋梗塞と尿路結石)、およそ1000人に1人の割合で発症すると言われている。一般的な偏頭痛とちがい、目をえぐられるような激しい痛みで、そのあまりの痛みに耐え切れずに、海外では銃で頭を撃ち抜く人もいるらしい(別名「自殺頭痛」と呼ばれている)。
このありがたくない頭痛に、私は20代半ばを過ぎた頃から悩まされ続けている。群発頭痛の特徴は、2年に1度の頻度でやってくることだ。
ひとたび発症すると、その激しい痛みが昼夜を問わず起こり、それが約1ヶ月にわたって続く。そしてある日、取り憑いていた悪魔が去ったかのように、パタリと治るのである。
私は先日発症し、約1ヶ月の所業を終えたばかりである。一応、対処療法は存在し、薬で痛みを緩和することはできる。しかし、予防策はなく(予防薬といわれるものはあるが、私には効かない)、発作に怯えながら過ごす1ヶ月で、身も心もボロボロになる。
「人は健康な時に、
そうじゃない自分を想像するのが、
なんて苦手なんだろう。」
という岩崎俊一さんの名コピーがあるが、激痛と戦っている間、私はいつもこのコピーが頭に浮かぶ。日頃の行いが悪いからこんな目にあうのではないかと、ひどいマイナス思考に陥る。
群発期は、決してやる気を出してはいけない。決して頑張ってはいけない。アルコールはトリガーとなるため、決してお酒も飲んではいけない。欲を出さず、日頃の自分を見つめ直しながら、静かにその時が過ぎるのを待つのだ。
2年に1度、望んでいないとはいえこのような時間を持つことは、悪いことではない気がする。
というか、私のような人間には必要な気さえする。とでも思わなきゃ、やってられない。
次はおそらく、2024年の夏。
パリ・オリンピックの頃。
訪れてほしくない未来に、1日1日近づいていく。