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ワケノシンノスが好きだ💕

 先週に引き続き、今週も郷土料理です。日本のような小さな国でも、地方に行けば独自の食文化があります。それは他の地方でも食べられる料理かも知れませんが、その地方独自の名前がついていたり、その地方独自の食べ方だったり、何かしら、その土地独自の特徴があるのです。今週はそんな郷土料理を妄想します。

シロクマ

シロクマ《鹿児島県》

 まずは、かの有名なシロクマです。昭和の誕生で、歴史は新しいのですが、その起源には二つの説があります。

 一つめは、昭和7年頃、鹿児島市の西田本通りにあった綿屋さんが夏の副業としてかき氷屋を営み、かき氷に練乳をかけてフルーツをトッピングした「氷白熊」が誕生した。練乳の缶に白熊印のレッテルが貼ってあったことから、この名前が付けられたとする説です。

 もうひとつは、鹿児島市天文館にある老舗のかき氷店「むじゃき」の創業者である久保武氏が、昭和24年、白蜜や赤蜜をかけたみぞれに練乳をかけたものを「氷白熊」と命名して販売したのが始まりだとする説です。

 おそらく、綿屋さんの氷白熊のほうが先にあったのでしょうが、現在のシロクマにつながる直接的な系譜は「むじゃき」さんの氷白熊なのだと思います。ただ、それにしても、綿屋さんの氷白熊があってこそなのですが。

    終戦から時が経つとともに、アンゼリカ、チェリー、レーズン、そしてフルーツなど、徐々にトッピングを増していく氷白熊は、天文館を中心に、シロクマとして大ヒットしていきます。今ではなんてことはないと思うかも知れませんが、かき氷にフルーツを入れ、いろんなトッピングで豪華になったのは、鹿児島の人達が賢明に働いて地元を復興させた証です。当時の鹿児島の大人達は、子ども達がそんなシロクマで歓声を上げる様子を見て、涙がでるほど嬉しかったに違いありません。

べろべろ(農林水産省「うちの郷土料理」より  https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/ebisu_ishikawa.html)

べろべろ(えびす)《石川県》

 金沢でお正月や祭りの日のお重に欠かせない一品と言えば「べろべろ」別名「えびす」です。そのルーツは、江戸時代の料理書『江戸料理通』や『料理百珍』の中に記された「たまご寒天」だと言われています。現に、山形県にはべろべろとそっくりな「卵寒天」という料理が伝えられています。

 石川や富山の沿岸部は、江戸時代から寒天の原料である天草てんぐさの産地でした。そのため、山形の「卵寒天」、富山の「べっこう」など似たような料理が周辺各地にあります。

 作り方は大まかには塩を使うものと醤油を使うものに分けられます。寒天を煮溶かした液に大量の砂糖と塩で味付けし、溶き卵を流し入れた物は、白っぽい出来上がりになります。一方、砂糖と醤油で味付けしたものは醤油の色が付きます。ですから、富山の「べっこう」は砂糖醤油味なのです。金沢でも砂糖醤油ですが、その他に、ベースが昆布出汁だったり、しょうが汁を入れたり、各地で少しずつ違います。

 昔のべろべろは、高価な砂糖を大量に使った、激甘だったらしいのですが、最近は甘さ控えめで、観光客にも人気の料理だそうです。

へしこ(農林水産省「うちの郷土料理」より https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/heshiko_kyoto.html)

へしこ

 「へしこ」は、福井県から京都府の日本海沿岸で昔から食べられている郷土料理です。魚の内臓をとりだして塩漬けし、さらに糠漬けすることで長期保存できるので、江戸時代から冬季の貴重なタンパク源でした。その名前は、無理やりに押し込んで漬け込むことを「へしこむ」という、漁師言葉に由来するという説があります。

 魚を糠漬けにするというのは、珍しいことは珍しいのですが、琵琶湖の鮒ずしや、東北の三五八漬けなど、全国に似たような例がないわけではありません。

河豚の卵巣の糠漬け(Wikipediaより)

河豚の卵巣の糠漬け 

 へしこは、サバ、イワシなどで作られたものが有名ですが、石川県に伝わる「河豚の卵巣の糠漬け」もへしこの一種です。

 フグの卵巣にはテトロドトキシンという毒が含まれているため、生食はもちろん加熱調理しても食中毒を起こします。しかし、3~5か月ほど塩漬けにした卵巣を、糠味噌で2~3年ほど漬けると、糠味噌の乳酸菌の働きで、無毒になります。この方法は、石川県の白山市美川地域(旧・美川町)や金沢市金石・大野地区で行われていますが、佐渡島では酒粕に漬けて作ります。福井県高浜町では、2年以上の塩漬けと天日干し、1年間の粕漬けで毒抜きをする「福のこ」が販売されています。

 河豚の卵巣の糠漬けは、珍味中の珍味です。いったい、誰がこの作り方を考えたのか、定かではないのですが、その作り方を試行錯誤している中で、何人も命を落としたのであろうことは、容易に想像がつきます。昔は、毒が抜けたのかを判断するには食べてみるしかなかったのですから。

ワケノシンノスの唐揚げ

ワケノシンノス

 福岡県柳川市周辺で「ワケノシンノス」と呼ばれているのは、イシワケイソギンチャクです。

イシワケイソギンチャク(ワケノシンノス)

 国内で食用にしているイソギンチャク類は、イシワケイソギンチャクの他に、ハナワケイソギンチャク、コイボイソギンチャクの3種類ですが、食品として流通しているのはイシワケイソギンチャクだけです。極めてローカルな食材で、かつては千葉県浦安でも食べていたらしいのですが、現在は有明海周辺のみで食べられています。

 有明海はムツゴロウやワラスボなど、珍味の宝庫と言われていますが、その中でもワケノシンノスはキングオブ珍味です。地元では味噌汁の実にするのがポピュラーですが、唐揚げもおいしいそうです。

ワケノシンノス(油断している状態)

 うっかりしていました。まだ名前の由来をお話していませんでしたね。上の写真をもう一度、よく見て下さい。




「ワケノシンノス」は、福岡県柳川市周辺の方言で「若者の尻の穴」という意味です。

上方落語のお料理 ①≪鴻池の犬≫

上方落語のお料理① ≪鴻池の犬≫

演じるは昭和の爆笑王 二代目 桂枝雀 !
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