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「きぬかづき」と 鉢かづき姫
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十五夜にお月見はしましたか? 今年は9月17日(火)でしたね。十五夜にお月見をしたのなら、13夜にもお月見をするのが古来よりの習わしと言われています。
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中秋の名月
そもそも「十五夜」とは、旧暦における毎月15日の夜のことです。二十四節季では立秋、処暑、白露、秋分、寒露、霜降が秋の期間です。その真ん中に当たるひを中秋と言います。二十四節季で言えばの白露の途中です。この日の月は、一年でもっとも美しく見える「中秋の名月」です。
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芋名月
中秋の名月は別名「芋名月」と呼ばれています。そう呼ばれるぐらいですから、月見団子と里芋をお供えします。どうしても里芋でなくてはならない。ということではありません。さつま芋でもじゃが芋でも、その土地の産物をお供えします。
里芋は親芋から子芋、孫芋と増えていくので、子孫繁栄の象徴です。縁起物なので里芋をお供えすることが多いのです。生の里芋をゴロゴロとお供えしてもいいのですが、みんなで御下がりをつまめるように、「きぬかづき」にしてお供えしましょう。
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きぬかづき
「きぬかづき」の作り方は簡単です。里芋をよく洗って、2:8ぐらいのところで芋の周囲にぐるっと包丁目を入れます。それを蒸しあげ、上の2割の部分をつまんで取り除いた部分に塩をふって煎り胡麻を3~4粒つけます。簡単なわりにおいしいのでついつい手が伸びます。尚、不祝儀の際には胡麻の代わりにケシの実を付けます。
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「鉢かづき姫」
享保年間(18世紀前期)、大坂の渋川清右衛門が世に埋もれた絵入りの短編物語を集め、23編からなる『御伽草子』として発表しました。その中に「鉢かづき姫」があります。
鉢かづき姫
昔、河内国交野郡に寝屋備中守藤原実高という長者が住んでいた。長谷観音に祈願し、望み通りに女の子が生まれ、やがて美しい娘に成長した。しかし母親が亡くなる直前、長谷観音のお告げに従い娘の頭に大きな鉢をかぶせたところ、鉢がどうしてもとれなくなってしまった。
母親の死後この娘(鉢かづき姫)は、継母にいじめられ家を追い出された。世をはかなんで入水をしたが、鉢のおかげで溺れることなく浮き上がり、「山蔭三位中将」という公家に助けられて、風呂焚きとして働くことになった。中将の四男の「宰相殿御曹司」に求婚されるが、宰相の母はみすぼらしい下女との結婚に反対し、宰相の兄たちの嫁との「嫁くらべ」を行って断念させようとする。
ところが嫁くらべが翌日に迫った夜、鉢かづき姫の頭の鉢がはずれ、姫の美しい顔があらわになった。しかも歌を詠むのも優れ、学識も豊かで非の打ち所が無い。嫁くらべのあと、鉢かづき姫は宰相と結婚して3人の子どもに恵まれ、長谷観音に感謝しながら幸せな生活を送った。
鉢かづき姫の「かづき」とは「被き」で、「被く」の連用形です。「被く」は、古くは「かづく」=「身に引き受ける」という意味でしたが転じて「被る」という意味になる古語で、文字通り「被る」あるいは「戴く」という意味です。
鉢かづき姫は頭からすっぽりと鉢を被ったので「鉢かづき」姫(現代語訳では鉢かぶり姫)です。
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鉢かつぎ姫
ところが、鉢かづき姫はいつの間にか「鉢かつぎ姫」と呼ばれるようになってしまいました。「かつぎ」は「担ぐ」で物を担うという意味です。鉢かつぎ姫は、鉢を肩に担いでいるのでしょう。
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鍛え上げた筋肉
鉢かづき姫が被っていたのは、市販の絵本を見る限り、頭がスッポリ入る大きな漆器です。確かな資料は有りませんがかなり重そうです。 おそらく5kgはあるでしょう。
これまで誰も指摘しなかったので、筆者が世界で初めて指摘します。5kgもの重量物を頭に被って生活するのは非常に困難です。普通の筋力では首が座らないでしょう。
このことから、「鉢かづき姫」(鉢かぶり姫)は、頭板状筋・僧帽筋を十分に鍛えた、首が座った姫だったはずです。
また、5kgもの重量物を常に担いで暮らしていた「鉢かつぎ姫」は、上腕二頭筋と棘上筋・棘下筋が十分に発達したマッチョ姫であったと考えられます。
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きぬかつぎ
里芋のきぬかづきも同じです。2:8の8の部分(下側)が服を着ているように見えるので「衣かづき」なのです。「衣かつぎ」なら2の部分(上側)に皮が残って、下が裸になってしまいます。
おかしな話ですが、現在はちゃんとした料理書でも「きぬかつぎ」と書いています。誠に嘆かわしいことです。
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十三夜
十五夜にお月見をしたのなら、十三夜にもお月見をするのが昔からの習わしです。十五夜が「中秋の名月」ならば、十三夜は「後の名月」、別名「豆(栗)名月」と呼ばれます。
十五夜のお月見は中国から伝えられた風習ですが、十三夜のお月見は日本で生まれた風習です。その月は、新月から数えて13日目で、満月から少し欠けますが、十五夜よりも気温が下がっているためにきれいに見えるようです。もっとも、十五夜も必ずしも満月ではないのですが…。 十三夜の起源は919年に、醍醐天皇が清涼殿(現在も京都御所にあります)で月見の宴であると言われています。
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ジャンボリ・ツキミー!
ちょっと話はそれますが、貴族の遊びだった月見が庶民にも流行するようになったのは、江戸・吉原が流行らせたからだという説があります。
吉原は客商売ですから、お客さんに来てもらうためのあの手この手を、日ごろから惜しみませんでした。その中に、遊女と十五夜の月見をする「花魁と月見! ジャンボリ・ツキミー!」ありました。花魁の指導でジャンボリ・ツキミーを踊る催しが当たると、十三夜の後の月見も吉原で… となります。「十五夜だけで十三夜は来ないなんて野暮ですよ。片月見は縁起が悪いんだから」なんて言って営業をかけたそうです。
それが功を奏して、紋日であるにも関わらず、十五夜と十三夜には鼻の下を伸ばした客が続々と吉原につめかけるようになったとか。
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吉原の紋日
蛇足ながら、吉原の「紋日」に客に来てもらうために十五夜と十三夜にお月見キャンペーンをしたという説がありますが、筆者は違うと思います。
「紋日」とは祝祭日や特別な行事の日のことで、通常よりも高い特別料金を設定します。今で言えば正月料金やお盆料金などの繁忙期の特別料金です。
現代の特別料金で考えると分かりやすいのですが、繁忙期の特別料金は、▶客が殺到するので従業員を一時的に増員するため ▶世間的にお休みの期間に従業員に出勤してもらうために時給を上げるため ▶特別な期間中は原材料費が高騰するため 等の理由により設定されます。この理屈で言えば、例え正月の三が日であっても、客が殺到しなければ特別料金にするわけにはいきません。中には、客が増えようが増えまいが、そんなことは関係なしに特別料金を設定するお店もあるでしょうが、そんなお店は繁盛しません。
とにかく商売のモラルから言えば、なんらかの理由在りきの特別料金なのです。何でもない日に特別料金を設定し、その日は料金が高いから客足が遠のくだろう。だから特別キャンペーンを開催する。これでは本末転倒と言わざるを得ません。
このことから、吉原の「花魁と月見! ジャンボリ・ツキミー!」は、紋日の集客キャンペーンではなく、月見キャンペーンに客が殺到するから紋日にした。が正しいと思います。
何にしても、食べる物も食べずに節約して吉原のお月見に出かける江戸の庶民は立派です。
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豆(栗)名月
話を戻しましょう。 十五夜には団子やお芋をお供えしますが、十三夜には団子の他に、ちょうど収穫期を迎える豆や栗をお供えします。ずんだ餅や枝豆ご飯。栗ご飯や、栗や枝豆入りの吹き寄せご飯、豆腐を混ぜた豆腐白玉で団子を作るのもいいでしょう。モンブランやマロングラッセも有りです。十五夜よりも十三夜の方がだんぜん賑やかでおいしいお月見になりますよ。
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すすきも忘れずに!
そうそう、すすきも忘れずに用意しましょう。すすきは中が空洞なので、そこに神様が降りられる依り代です。ただの飾りではありません。
今年の十三夜は10月15日(火)です! 吉原に出かけたりせずに、家で家族と後のお月見しませんか?
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勝手にご飯映画祭④は、リオネル・ジョスパン元フランス首相の母の実話から生まれた感動作「92歳のパリジェンヌ」のリオレ(riz au lait)を妄想します。
▶なぜ リオレなのか?
▶老いるとは?
▶自分らしく人生を終えるとは?
▶その時、子ども達に何ができるのか?
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