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音乃瀬奏は「音楽家の卵」の殻を破る
ReGLOSSのメンバーの一人である音乃瀬奏さんの勢いが止まらない。
奏さんは、先日行われたホロライブIDのムーナ・ホシノヴァさんの生誕LIVEのゲストに、角巻わためさんと参加して、虹ヶ咲スクールアイドル同好会のA・ZU・NAの楽曲「Maze Town」を二人に負けず劣らずのクオリティのパフォーマンスを披露していた。
奏さんのホロライブメンバーの生誕祭へのゲスト出演は2024年末に行われた白銀ノエルさんのライブに続き2回目である。
その2回目が、箱内でも歌唱力に定評のあるムーナさんのライブという点からも、ホロライブメンバーの中でも3Dモデルを手に入れた奏さんの評価は、一緒にライブをしたいメンバー候補として国内・国外問わずでうなぎのぼりになっているのだろうか。
今回の記事では、音乃瀬奏さんの軌跡に焦点を当てて、これまでを振り返りつつ、これからへの期待に想像を膨らませてみたい。
お時間のある方はぜひ下記もご拝読いただけると幸いだ。
草創期:音楽家の卵としてあくまでも「歌」にこだわる
ReGLOSSの歌柱・音乃瀬奏
hololive DEV_ISから2023年9月にデビューした音乃瀬奏さんは、デビュー当初から活動の軸を「歌」に据えており、「ドレミファソラシド~♪」という挨拶や、衣装にも音符や五線譜をモチーフにしたデザインが施されているなど、音楽に関するキャラクターであるということが伝わる造形であった。
実際に本人がお披露目した初めての歌ってみた「名前のない怪物」は、歌唱難度が高いEGOISTの楽曲を楽々と歌いこなしており、どんなものかと聞きに行ったホロリスの鼓膜を衝撃で震わせた。
配信活動においても、週1ペースで歌枠を開催し、ボーカロイドからポップス、アニメソングに男性ボーカル曲も難なく歌いこなすなど守備範囲が幅広く、バラードでは言わずもがなの表現力を発揮し、テンポの速いロック調の楽曲では、ふわふわとした普段のしゃべりとはガラッと変わった音圧強めの歌唱もこなすなど、出せる音域が広いことから自身の持つ歌唱力の高さを存分に披露していた。
まさに、ReGLOSSの歌柱と呼称するにふさわしい実力と発信である。
2曲目の歌ってみたとして投稿した「DAYBREAK FRONTLINE」は現在では600万再生を超える奏さんの代名詞的な投稿動画になっており、当時も早々に100万再生、200万再生と、奏さんの歌唱力の高さや多重撮りされているコーラスワーク、爽快感のあるメロディーとの親和性の高さから奏さんのファン層以外も視聴をしており、ホロライブ楽曲の週間での再生数増加を取り上げる有志の楽曲紹介チャンネルでも、奏さんの楽曲は毎回ランクインするなど持続的な視聴がされていた。
私自身、奏さんの歌ってみた楽曲の中ではこの「DAYBREAK FRONTLINE」が一番好きな楽曲であり、テンションを上げたいときやさわやかな一日を始めたいなと感じるときには優先的に再生する一曲である。
音楽に対して常に真摯
また、「音楽対談」のコンテンツを自前で立ち上げて、星街すいせいさんやAZKiさん、森カリオペさんなど、ホロライブのメンバーの中でも歌活動に軸足を置いている先輩メンバーとの対談を通じて、先輩メンバーの歌に対しての活動の思いや歩みにリスペクトを向けつつ、自身も後輩の立場として歌うまメンバーのフィールドに参戦していきますよというアピールも欠かしていなかった。
音楽対談の初回ゲストに招いた星街すいせいさんとの回では、プライベートな質問も交えながら、歌唱技術やアドバイスなど、普段すいせいさんがどのようなことを意識してレコーディングや歌唱に臨んでいるのかを丁寧に掘り下げる進行となっており、奏さんも同じパフォーマーとして共感できる部分があるのか、絶妙なタイミングでの相槌や追加の質問、そこに加えて自分の経験則に基づくコメントを付け加えるなど、共感の高いコラボレーションになっていた。
すいせいさん目的で見に来た星詠みの方々も満足させつつ、新たな歌姫メンバーとして名乗りを上げる奏さんにも注目をしてみようという良いきっかけを持つ配信になったのではないだろうか。
デビュー3か月の期間で登録者数は30万人突破など、歌に軸足を置いた活動は順調にファンを獲得していったとみて良いだろう。
音楽に対して常に真摯である姿勢は、音楽好きの視聴者への強いアピールになっていたと私は感じている。
同時期には、奏さんがホロライブを知るきっかけとなった3期生のうちの一人、宝鐘マリンさんからご挨拶のDiscordメッセージが届き、マリンさんの2人目の娘として立候補するなど、先輩メンバーとの交流の足掛かりが生まれだし、さらなる飛躍を遂げていく予感を感じさせられた。
瞬間ハートビート100回耐久でReGLOSSに注目を集める
そんなか、デビュー半年を過ぎた3月末、ReGLOSS公式チャンネル(当時はDEV_IS公式チャンネル)の配信時に発表された重大発表「半年後までに全員でチャンネル登録者数250万人突破」のノルマが課せられた。
そのノルマ発表後、先陣を切って奏さんは「瞬間ビート100回歌唱耐久」の配信を7時間に及び実施をする。
自身の喉の限界との戦いであるが、同期のReGLOSSメンバーやAZKiさんやさくらみこさんらホロライブの諸先輩メンバーにも見守られながら続いたチャレンジは、歌唱法がリラックスしたもので余計な力が声帯に入っていないこともあってか、声を枯らすことなく安定したパフォーマンスで100回歌唱を成し遂げ、この1回でチャンネル登録者数は1.1万人も増加、ノルマ達成に向けてReGLOSS全体へ勢いを与える号砲を放った。
(のちに、星街すいせいさんから「なんともなくても病院へ行って診てもらってきなさい」との助言を受け診察をしたところ、喉は軽めの炎症を起こしていたようである)
この配信は、配信終了後にはYahoo!ニュース(ここではExciteニュース記事を引用)にもトピックとして取り上げられて、ReGLOSSだけでなくホロライブを知らない一般層にも、とんでもない配信を成し遂げたVtuberがいるということで、視線を集める一番槍としての役割を果たすことができた。
この時点で奏さんのチャンネル登録者数は30万人を超えており、不足している数字としては不可能ではないラインのように一見すると見えた。
だが、「歌」一本で伸びていけるほど、Vtuberの世界は甘くはなかったことを奏さんは痛感することになる。
辛酸期:間に合わなかった登録者50万人と涙
奏さんの登録者数は記事執筆時点(2/21時点)でこそ、ReGLOSSのグループ内では5番目の人数だが、最初からこの立ち位置にいたわけではない。
少なくとも、デビュー時点の2023年9月のスタートダッシュのタイミングでは、登録者数はグループ内で3番目の人数を誇っていた。
しかし、奏さんが起因となったわけではない事象の影響により、バイアスイメージが先行してしまったことが、登録者増加を鈍化させてしまったのだろうと、1年経過した今は分析している。
影響1:マネージャー騒動
※個人を攻撃・断罪する意図も作為もないので、具体的に誰が言った(漏らした)という明言は本記事ではしない。
ホロライブでは過去、夜空メルさんのストーカー騒動が問題視され、渦中の人物が社内の男性社員だったということが発覚してからは、一部のホロライブリスナーによる「ホロメンは男と絡むな」のユニコーン論調が過激化していった。
実際問題、マネージャーを女性のみで固めるとなると、相当難しい問題が付いて回るので、社内に男性マネージャーがいることは何ら不思議ではないし、芸能人の女性タレントだってマネージャーが男性であるケースなど普遍的である。
私自身は、タレントマネージャーの性別など些事なことと考えており、タレントマネジメントの職務を全うしてくれる人材であるならばどちらでも良いという派である。
だが、これらの論者の声は大きく、とあるメンバーがぽろっとこぼしてしまった言葉尻きっかけで、当時の奏さんのサポートを行っていたマネージャーが男性社員であることが判明してしまった。
ここに目を付けた、ホロライブアンチの人間や、上記ユニコーン思想の人間がこぞって奏さんの人気や勢いを削ぐような風潮をインターネット上に生み出していった。
ただ、この影響はゼロではないものの、奏さんの人気が鈍化した主要因とするのは誤りだと思っている。
どちらかと言えば、後述項目のほうが奏さんの登録者の伸びに影響が大きかったのではないか、と考える。
影響2:海外ルーツゆえのコミュニケーション問題
本記事を執筆するにあたり、すでにホロライブ歴が長い方や、奏さんのファンであれば既知の内容にあえて触れてこなかった。
奏さんは、わかりやすくお伝えするなら、卒業生の桐生ココさん(元・4期生)と類似のバックボーンを持って日本拠点で活動するホロライブに加入したメンバーだ。
国籍自体に奏さんが明言されたことはないが、学生時代を韓国で過ごされていたことに関してはご本人が配信内で触れているし、YouTubeで活動しているボイストレーナーのしらスタさんとの音楽対談でも、奏さんの発声や語尾の置き方などの歌唱法から「韓国にルーツをお持ちの方ですか?」としらスタさんは分析されている。
(直接的な質問をしたわけではなく、あくまで歌唱法だけで分析されているところが、まさにプロのトレーナーだと舌を巻いた瞬間でもあった)
実際問題、奏さんもデビュー時点では海外在住で収録などの仕事があるときに日本にやってきていたそうで、活動を本格化していくうえでデビュー1か月後に日本へ引っ越しをされている。
もっと言えば、ホロライブDEV_ISとしてデビューする前は、韓国の大学に通学していたバリバリの大学生だったとも明かされている。
(現在は休学中のはずである)
そのため、奏さんの日本語はほぼ独学で習得されたものであるゆえに、次の弊害が出てしまった。
「ヒアリング」の問題である。
1対1の場面であれば、話者は自分か相手しかいないので、多少相手が早口でしゃべっていたとしても、前後の情報から何を言っているのかを補って反応することはある程度可能である。
だが、これはココさんもそうであったのだが、複数名、それも多人数が一斉にしゃべっているような状況下や、ボリュームの大きい環境音が鳴っている状況下では、どんなことを言っているのかを聞き取ることができずにフリーズしてしまう。
そのため、奏さんはデビュー後に行われた箱イベントのホロライブ運動会やハードコアなどのマインクラフトベースの企画やARKなどで、上手に(思い描いていた通りにという表現のほうが適切と思うが)ホロメンのコミュニティの会話の輪の中に入っていくことができず、前に出て自分のアピールを先輩方にもリスナーにも十分に行うことができなかった。
そのため、「歌が上手な大人しい子」というイメージが出来上がってしまっていったのではないだろうか?
さらに言えば、ニコニコ動画が火付け役となって始まった歌ってみた文化で様々な歌い手が台頭してきた時代から約10年が経過し、インターネット上で歌がうまいということは大きなアドバンテージにはなりえなくなっていた。
そのため、ルックスの良さでアピールする、特徴的な声質を持っている、コテコテのアレンジで歌うなど、歌がうまい「プラスアルファ」を持つ歌手が優先度高く流行する時代が現代である。
そのプラスアルファという部分がリスナー側に見えづらくなっていたことも、奏さんの持つポテンシャルを生かし切れていなかったのではないかと述懐する。
タイムリミット前の追い込みと覚醒の兆し
奏さんが素晴らしかったのは、思うように自分の登録者が伸びない現状において腐らずふさぎ込まず、今の自分にできることは何かを考えて精いっぱい活動していた点だろう。
その証左となるのは、250万人のタイムリミット直前に連続で公開した歌ってみた動画だろう。
最後の一押しに向けて、自身の原点であり強みである「歌」を再度押し出すことやShortコンテンツを駆使することで、登録者の伸びを狙おうとしていたと考える。
だが、結果は残念なことに、奏さんはReGLOSSメンバーの中で唯一チャンネル登録者数50万人には届かずにフィニッシュとなった。
この時点では、奏さんはノルマに関しての自身の胸中などは特に表であっての発信はしていなかった。
そして、ちょうどReGLOSSの登録者タイムリミットを終えた後に開催されたのが、「holo GTA」である。
奏さんはゲーム内では警察のロールを割り当てられ、署長役の大空スバルさんらとともに約1週間のホロスサントス内でメンバーが起こす群像劇の中に飛び込んでいくこととなった。
だが、ゲーム開始当初の奏さんは、警察のロールにはあまり関心を示す様子がなく、ゲーム内のギャンブル施設で賭け事をして楽しむなど、どこか輪から逸れたソロプレイに興じていたように思う。
しかし、そんな奏さんに大きな変化と影響を与えてくださったのは、ほかでもない大空スバルさん、そしてラプラス・ダークネスさんである。
仕事をさぼってギャンブルに興じている奏さんを、パトロール中に偶然遭遇したスバルさんが、大声で奏さんの名前を叫んで追いかけるシーンなどは、往年の名作「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の登場キャラクターである両津勘吉と大原大二郎の掛け合いを見ているようだった。
同じく警察のロールを割り当てられていたラプラス・ダークネスさんとはまた趣の異なったトラブルメイカーぶりで、GTA期間の序盤を盛り上げることにつながっていった。
そして、ラプラスさんはスバルさんの鶴の一声でGTA期間後半で奏さんとバディで仕事をするよう任命される。
警察に出勤していない奏さんがカジノにいることを突き止めた後、警察の仕事をすることに駄々をこねる奏さんを、殴り、蹴り、しまいには発砲するなど、ドメスティックな方法で奏さんを職務に連れ出したラプラスさん。
彼女が対等な目線で奏さんに向き合ったことで、ゲームの操作を理解できていなかったことが奏さんが警察ロールに前向きになれなかったことを見抜いてからは、「車の運転の練習をするぞ」と働きがけ、真剣に根気強く奏さんに向き合って奏さんが警察チームの一員に加われるように働きがけた。
この二人の尽力なく、最終日の奏さんのカーチェイスによる活躍は生まれなかっただろうし、奏さんの成長を目撃した視聴者が、さぼって自由に遊んでいる風来坊な奏さんに対して見る目を変えた瞬間だったのではないだろうか。
そして奏さん自身も、箱ゲーム内での成功体験を経ることができたことで、その後の先輩方とのコミュニケーションやゲームへの参加姿勢などが、holo GTA以前とはガラッと変わった前向きなものとなっていく。
奏さんにとって、holo GTAで得た経験はその後のホロライブという箱内での存在感を増していくうえでのターニングポイントになったのは間違いない。
3Dライブの盛り上がり、止まらなかった涙
盛況に終わったholo GTAの終幕後、待ちに待ったReGLOSSの3Dライブが行われることになった。
このライブには、先輩のメンバーたちも「ライブを楽しみにしている」と発信してくださり、注目度の大きいライブとなった。
その中で、「瞬間ハートビート」から始まったライブは、ReGLOSSメンバーの生歌&本人たちのダンスという、これまで励んできたレッスンの努力の成果が存分に発揮されたステージであった。
最初は緊張の面持ちが見えた各メンバーも、演目が進むごとに緊張がほぐれてきたのか、歌声もリラックスしたものに変わっていき、楽しそうにパフォーマンスをしているように私の目には映った。
その中で、奏さんが「bvdis」披露時のイントロで見せた、右腕を後ろに引いてぐるぐると回すポーズがネットミームとして広がるなど、ライブ終幕後も興奮を形に残すリスナーが多くいたことも、奏さんの認知度アップに貢献してくれていたように感じる。
のちにライブの振り返り配信をした奏さんだが、セットリストのそれぞれで、「次はもっとこうしたい」というような改善点を冷静に分析しながら鑑賞しており、彼女自身もまだまだパフォーマーとしてレベルアップをしていきたいという上昇志向を見せてくれていた。
ホロライブリスナーが「音乃瀬奏」というホロライブをメンバーにしっかりと目線を向けた時、奏さんのチャンネル登録者人数は約49.6万人と、当初の目標である50万人まであとわずかというところまで来ていた。
そして満を持して行われた2024年10が7日の50万人耐久歌枠で、奏さんのチャンネル登録者はついに50万人の壁を越えた。
デビューして1年1か月、単身日本にわたってきてからちょうど1年が経過するであろうタイミングであった。
デビュー曲である瞬間ハートビートのオフボーカルバージョンが流れる中で、「イエーイ!」と喜びを爆発させた奏さんだったが、そこからは誰にも打ち明けてこなかったであろう心境をぽつりぽつりと語り始めた。
「ReGLOSSの250万人という、「3Dへの道」ということで。
皆のチャンネル登録者が250万人って掲げられたときに、合計250万人は行けたけど、自分だけ50万人行けてなかったときに、『うわぁ、これ素直に喜んでもいいのかなぁ』って思ったわけですよ。
『大丈夫かな?これ、3D(モデルを)喜んでもいいのかなぁ』って思いがあったんですけど…
こうやって、迎えられて良かったなって思います
(※ここからすすり泣く音がマイクに入りだす)
(中略)
50万人ってね、ReGLOSSにおいては特別な目標みたいな感じだったじゃないですか、3Dに向けてね。
普段そういうのは気にしないタイプだったんですよ。
みんなで合わせて250万人って(目標が)出てたから、『行けたらいいか』って思えるタイプの人だったんですけど、いろいろあり、「本当は一人50万人なんですけどね」とか、そういうのがあったりして…。
(自分だけが未達成で)いいのかなって、思ってたんですよ。
こんなめでたい日に…めでたい日なのに、なぜ…?涙が止まらないよぉ…!」
「【歌枠】50万人耐久!!歌います!!縦型です!【音乃瀬奏】#hololiveDEV_IS #ReGLOSS」より
該当箇所を書き起こし引用
250万人という強制的な目標に振り回されたReGLOSSメンバーは、見方によっては運営に振り回された被害者ともいえるだろう。
それに、唯一の50万人未達成だった奏さんがユニットに貢献できなかったと感じてしまったこと、単身日本にやってきて仕事と生活をするだけでも、我々には想像しえない大変さの中でそれをおくびにも出さずに頑張っていたことなどを考えると、彼女が50万人という当初の目標数値をクリアできたことの感慨は計り知れないものだっただろう。
それだけに、上からの圧力で「根性見せろ」と発破をかけられたこの経験は、奏さんを配信者としてだけでなく、一人の人間として強くなるために意味のある期間になったと思いたい。
そして、奏さんの躍進はこの50万人の枷から解き放たれてから始まっていったのだ。
飛躍期:愛される「クソガキ」は新世代の歌姫へ
交流の輪が広がり、天真爛漫さが際立つように
奏さんはホロライブ加入後から(加入前から好きな食べ物だったかもしれないが)しゃぶしゃぶにはまり、ことあるごとにメンバーとしゃぶしゃぶを食べに行く機会を経て交流を深めていった。
デビューから1年経ち、箱企画を複数回終えてから取り組んだホロメンとの相関図企画では、かなりの人数としゃぶしゃぶを食べに出かけていたことが奏さんの記載から見て取れる。
奏のホロメン相関図(ホロライブ1年目)
— 音乃瀬奏🎹✨ReGLOSS (@otonosekanade) September 30, 2024
配信でしゃべりながら書いたので語尾安定してないです!(全部敬語で書いたつもり)
これからももっともっと仲良くなりたい!🫶#生音乃瀬 pic.twitter.com/w7zf5Bb2Lb
奏さんに対する印象として、多くのホロメンがファーストコンタクトの際には礼儀正しく、大人しいという印象を持っている方も多かったのだが、奏さんとReGLOSSの4人との関係性を見ていただけるとわかる通り、交流を重ねて仲が深まってくると、奏さんの持つ天真爛漫な明るくかわいげのある言動が増えてくるのである。
そんな奏さんが娘という立場に回り、ママと呼び慕う3人のメンバーとの関係性も、それぞれのキャラクター性にフィットしたものとなっており掛け合いが非常に面白い。
実際に、ママ同士が醜く争いあうこととなった「Liar's Bar」配信は、さすがホロライブで長年活動してきたベテランの皆さんの技が光るもので、奏さんもおいしい場面でしっかり活躍をするなど見どころたっぷりな内容であったので、まだご覧になられていない方や見逃してしまっている方は、ぜひアーカイブからご視聴いただきたい。
一番最初のママとなった宝鐘マリンさんとは、毒親ロールプレイのマリンさんと反抗期の奏さんとのプロレスの応酬ができるようになった。
マリンさん自身が、ガンガン向かってきてくれるタイプとコミュニケーションが取りやすいということもあるが、奏さんがマリンさんの娘になったタイミングのちょうど後に、ひとり目の娘ポジションだった湊あくあさんがホロライブを卒業する運びとなり、あくあさんとの交流を優先していた結果奏さんにかまってあげられる時間がほとんどなくなってしまった。
このあたりの事情は奏さんも意図を組んでいたと思われ、その後自身に対して優しい包容力でコミュニケーションを取ってくれた白銀ノエルさんを新たなママとして甘えるようになっていった。
(結果として、マリンさん側も「私のことを捨てやがって!」と奏さんに強く出るきっかけを得ることにつながったので、おいしいと思っているのではないだろうか)
ノエルさんをママと慕い懐くようになったのは明確なタイミングは分かりかねるが、ノエルさんが奏さんを「よしよし」と甘やかしていたら自然とママになっていたというところだ。
ノエルさん自身も、上述のライブゲストに「娘の奏ちゃんと歌ってみたかった」という理由でゲストに招待していたり、先日のバレンタイン前夜のBIG3の企画では奏さんのチョコがラミィさんに渡されることになったときに目に見えて落ち込んでいたりと、後輩のくくりを超えて溺愛しているように思えるのがまた面白い。
そして、3人目のママとなった大空スバルさんは、先述したholo GTAが決め手であり、GTAの終盤には手を焼いていた奏さんが立派に警察の職務を果たすカーチェイスをしたことに大いに感動をされていた。
スタンスとしては、アルプスの少女ハイジに登場する家庭教師・ロッテンマイヤーさんのような厳しい教育ママと言ったところだろうか、根底には奏さんのことをかわいいがゆえにという愛からの厳しさのように感じられる。
そして奏さんもその気持ちを分かっているからだろうか、口では不満を言いながらもきちんと感謝をしているし、喉のコンディションが芳しくないスバルさんに上記の相関図の際に「お大事にしてくださいね」と労わっている。
ただ、奏さんもこの3人のママで満足するつもりはないようで、不知火フレアさんを新たなママのポジションとして目を付けていたり、鷹嶺ルイさんをママに加わってもらおうとアプローチしたり(ルイさん側から、「私は親戚のおばさんポジでと固辞されてしまっているので、攻略はなかなか難しそうか?)といい意味で節操がない。
直近のマインクラフトでは最近母性に目覚めつつある兎田ぺこらさんがママに立候補したり(その後すぐママを辞めてしまったが)、AZKiさんがママ軍団の中に加わったりと、奏さんの人たらしで先輩メンバーの母性をくすぐるコミュニケーションからどんどん交流の輪が広がっているようである。
クソガキムーブから繰り出すプロレスで存在感を増していく
また、奏さんも箱企画やしゃぶしゃぶ外交を通じて自信をつけたのか、俗にいう「クソガキ」ムーブによるプロレスを積極的に仕掛けられるようになっていった。
ラプラス・ダークネスさんとは、彼女の少年味のある個性的な声質も相まって彼女も「ガキ」扱いされがちという共通点から、悪友のような立場で互いに応酬を仕掛けるようになっている。
奏さんが自宅のインターネット料金を支払い忘れてしまい、自宅環境が復帰するまでカバー社のスタジオから配信をすることになった期間に、スタジオで目撃したラプラスさんの様子を発信し、そこにラプラスさんが応戦し返すというやり取りなどは、まさに子供同士の喧嘩という表現がぴったりな微笑ましいものである。
そのほか、上記マリンさんやスバルさんへの反抗的な舌戦や、兎田ぺこらさんの悪戯に対して「クソウサギ!」とやり返せる胆力、直近ではデバイスAmong Usでの綺々羅々ヴィヴィさんとのやり取りなど、プロレスムーブを通じて視聴者にエンタメを届けられるポジションをしっかりと固め、奏さんのことをよく知らなかったリスナーにも「なんだこの子は!?」と存在感を増していく好循環を生んでいるように思える。
ただ、上記のプロレスは人によっては「失礼な人」という映り方をしてしまいかねないし、受け取られ方によっては奏さんのアンチを生み出してしまいかねない。
その点のケア(根回し)もきちんとされているのが奏さんのクレバーなところであり、「配信上ではクソガキだけど、裏では非常にまじめで礼儀正しい」という真逆の側面が大空スバルさんや桃鈴ねねさんなど、各先輩メンバーの雑談配信等で触れられている。
このアクションがあることで、箱推しリスナーであればあるほど、奏さんのクソガキムーブは一つのエンタメの形として享受でき、奏さん起点で始まるプロレスからのドタバタに対してナチュラルに面白いと思ってコメント欄で盛り上げたり、感想ポストを投稿するアクションに繋がっていくのだろう。
極めつけは、リスナー相手に煽る「月曜日ムーブ」だ。
発端は何気なく口ずさんだ「明日は月曜日~♪」というものに対して、リスナーが反応したところから、毎週好例となっていくプロレスが始まったと記憶している。
奏さんが「おまえら~、明日は月曜日~」と煽れば、リスナー側は顔を真っ赤にしたスタンプで応酬し返すやりとりは定番化してきている。
ただ、奏さん自身がほぼ休みなく配信・収録など仕事をしているので、リスナー側から「でも奏ちゃんのほうが忙しいのでは」とツッコミが入ると、「おまえらはそんなの考えなくていい」と、あくまでもプロレスの体裁を崩さずにやり取りを楽しもうとしてくれている。
そうやって奏さんが箱内企画やコラボ配信で存在感を発揮していくのに比例して、チャンネル登録者数は日々コンスタントに増加のグラフを描ているのである。
歌中心の配信内容からの変化
奏さんの成長と比例するように、奏さんが自分のチャンネルで行う配信内容にも変化が表れ始めた。
ゲーム配信やコラボ配信の率が上がっているのである。
例えば、上述していたGTAに関しては、箱ゲーム期間が終わった後に奏さんはストーリーモードのプレイにチャレンジしている。
マインクラフトなどが好例になるのだが、奏さんは自身が気に入ったゲームがあると、企画が終わった後も自発的にそのゲームの配信枠を立ててリスナーとともにプレイを楽しむ傾向がある。
そう考えると、GTAの楽しさを知ったことで、言い方を変えると、楽しさを知るのが企画終了直前になってしまったからこそ、もっとGTAを楽しみたいという気持ちが芽生えていたのだと私は考えたい。
そのほか、holo GTAでギャンブルに狂っていたのを引っ張るかの如く、Buckshot RouletteやLiar's Barなど心理戦込みの駆け引き系統のゲームをコラボしたりリスナー参加型で開催したりなど、勝負師としての素養も出し始めている。
(奏さん的には競馬もトライしてみたいらしいが、ルイさんがストップをかけているので実現はいつになるだろう…。意外と、前走データや過去の着順傾向など、ゴリゴリのデータ派な勝負をしそうである)
ただ、歌枠が完全になくなったわけではなく、開催ペースはデビュー当時よりゆったりとしながらも継続して開催されている。
やはり奏さんの活動原点であり、モチベーションでもある「歌」は、どれだけ彼女が配信者としてのスキルが高まっていっても大切にしたい居場所であるのだろう。
どれだけ多忙な日々の中でも、新譜のインプットが速いので自身の歌枠でリスナーのリクエスト等に応じて披露することができるのは奏さんの隠れた強みの部分であろう。
ReGLOSSとしてのレッスンを重ねていく中で、ピッチの安定感やグルーブの乗り方など、配信スタート時よりも進化している部分を感じることができるのもまた、奏さんの進化の歴史をたどっていくことができるし、やはり上手な歌はいくらでも聴き続けていることができるくらい心地が良い。
音乃瀬奏のここがすごい
ここまで、奏さんのデビューからの約1年半の歩みを時系列に沿うような形で振り返り、各時期ごとの奏さんの活動面に対する総評的な内容を書いてきた。
そして、奏さんの人気はコンスタントに上がっているが、まだまだこの勢いは衰えないだろうとみている。
奏さんが人気を獲得していけるポイントはどのようなものがあるのだろうか?
この項目では、奏さんの魅力に迫ってみたい。
① 歌がうまい
これは言わずもがなだろう。
ReGLOSSとして発表されているオリジナル楽曲の音源では、奏さんのソロパートは楽曲構成において目立つポイント、言い換えればライブ等でのパフォーマンスの際に絶対に失敗が許されないパートを任される傾向が強い。
これは、ReGLOSS楽曲のボーカルディレクションを行っている方をはじめとしたスペシャリストの方々からの厚い信頼があるからこそだろう。
また、直近の発表楽曲では音感センスの良さを生かして、ハモリパートに奏さんが回ってボーカルの厚みを大きくしていることも目立ってきた。
主役にもなれるし、主役を立てることもできる。
コーラスワークが必要なユニットにおいて、絶対的な歌の能力が高い奏さんがいてくれることで、ReGLOSSは様々なタイプの楽曲にチャレンジしていくことができるのは、本当に心強い。
② ダンスがうまい
ReGLOSSにはダンスを本職としてきた轟はじめさんがいるため注目ははじめさんに集まりやすいのだが、実は奏さんもダンスがうまい。
まず、音楽センスの高さもあって、奏さんはリズム感が良い。
そして、体の柔軟さや体幹の強さなども水準以上のレベルにあることが、奏さんが投稿したShortsの内容から見て取れる。
2月のReGLOSSの日の企画として行われたオリジナルカードバトルの幕間でも、フリーでダンスを踊るシーンが奏さんに何度かめぐってきたのだが、出てくる振り付けはバレエベースのような柳のようにしなやかな動きで、はじめさんのビシっとしたキメを重視するダンスとは異なるアプローチでのダンス力を垣間見ることができた。
はじめさんとシンメトリーのポジションでパフォーマンスが務まるのは、奏さんしかいないだろう。
③ 地頭が良い
デビュー当初の自己紹介では「6か国語を話せます」と語っていた奏さん。
話せる言語の中に「ちんあな語」など、明らかにネタ味のあるものが混じってはいたが、少なくとも日本語・英語・韓国語の3か国語を使いこなすことができるのは判明している。
そのため、マインクラフトなどで海外勢のメンバーとのコミュニケーションも英語で難なく交わしているし、その能力があるからこそ上述のムーナさんの生誕ライブ出演のきっかけへとつながっていったのだろう。
海外勢の生誕ライブは来日してスタジオ収録される流れとなっているため、今後も海外勢のライブゲストとして奏さんに白羽の矢が立つ機会は多くなりそうだ。
また、地頭の良さはホロライブの必修科目のひとつでもある「五目並べ」からも大いに伝わってくる。
さくらみこさんの敗北RTAのインパクトが強すぎて、どうにもホロライブの五目並べはPONプレイに目が向きがちであるが、奏さんの五目並べは定石を理解して、複数の勝つ機会を伏線を張って狙いに行くプレイングが光るものである。
それはオンライン対戦が可能な五目並べゲームを配信した際にもよく表れていて、自分よりも強者との対局の際、盤面を見て自分が詰んでいる状況に気が付いて相手を褒めたたえたりなど、状況理解力も高い。
五目並べに限らず、先の項目で上げたプロレス相手になった方へのお詫びの連絡を入れるときにも、時候の挨拶から丁寧にメッセージを送るなど、教養面の高さも随所に感じることができる。
そう考えると、実はReGLOSSのジーニアス担当は、奏さん…なのか…?
おわりに
奏さんの評価がぐんぐん上昇していることをきっかけとして、今回彼女の歴史を振り返りながら魅力に迫る記事を執筆してみたが、配信を見直したり、奏さんに対して言及しているメンバーのコメントを収集する中で感じたのは、奏さんがホロライブの中でとても愛されている人なのだな、ということであった。
多くのお姉さんメンバーに囲まれながら、たくさんの愛情に囲まれて活動していける環境、そして自身のことを応援してくれている人が増えている現状を、奏さんは大きな感謝で喜んでいると思いたい。
上記記事の中では言及を避けたが、奏さん自身は自己評価は厳しめ、むしろ低く見積もっている節がある。
そのため、歌がうまいメンバーとメンバーにもリスナーにも認知されている中で、まだオリジナル楽曲の公開をされていないのは、自分の名刺的存在となる1曲目を納得できない状況の中でリリースすることは自分自身を許すことができないからなのだろうと私は解釈している。
とはいえ、奏さんのキャラクター理解も広がってきた現状であれば、歌唱力を存分に生かした高難度の楽曲でも、天真爛漫さを利用したポップな楽曲でも、ミームにされやすいという点を活用したネタに振った楽曲でも、奏さんが「これでいく!」と心に決めた楽曲は多くの人々の耳に、生活の中に届くと思うのである。
公開のタイミングとしては、自身の生誕ライブ前後になるだろうか?むしろ、このタイミングが直近では一番ベストなようにも思える。
音楽家の卵の殻が破られて「音乃瀬奏」という魅力的なアイコンが、どんな自信作を引っ提げてくるのか。
その時が来るのを、私は楽しみに待ちたい。