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【おうちで発酵】#13 初めて起こした酒粕ヨーグルト酵母でカンパーニュを焼く

ある時、茄子の辛子漬けをつくるために酒粕を買った。
――わかっていた。酒粕が苦手であることは。私は酒呑みではあるが酒粕の匂いや味がどうも好きになれず、わさび漬けや奈良漬けも苦手だ。たぶん日本酒も元々さほど得意ではないのだろう、他のお酒に比べて量は呑めない。秋田県人なのに。

そんな私でも、自分で漬ければ酒粕を使った漬物も好きになれるかも!とチャレンジしたがやはり駄目で、余った酒粕をなんとか使い切ろうとケーキに入れたりグリルで焼いたりいろいろ試した。
それでもまだ残る酒粕を、いっそパン酵母にできないかと思い調べたところ、酒粕酵母でパンを焼く方のブログや動画に行き着いた。

天然酵母パン。
これまた巧妙に避けて来たジャンルである。パン屋巡りも趣味、それもハード系と街のパン屋さん的レトロパン好きな私にとってある意味親しみある分野なのだが、自分で焼くとなると話は別。ドライイーストを使った簡単なパンしか焼いたことのない私に、天然酵母のハードパンなんて焼けるのか??
との疑問はあったが、それ以前に酵母がちゃんとできるだろうか。
とりあえず2種類試すことにした。酵母を起こす際よく使われるご飯と、もうひとつは単純に興味があって(酒粕の風味が目立たなくなりそうだし発酵もしそう)ヨーグルトを使ってみる。

《酒粕酵母(2種)》
◆今回使った材料
・酒粕(混ぜもののない純粋なもの。今回は新潟産):80g
・酵母材料その① 温かいごはん(あまり熱いと発酵しない。やや冷ました60℃くらいが適温):40g(秋田産あきたこまち使用)
・その② プレーンヨーグルト:40g(ビヒダス無脂肪使用)
・砂糖:大さじ1(三温糖使用)
・水:160cc
◆今回試したつくり方
1)酒粕を常温に出して柔らかくし、半分に分けて消毒済ガラス瓶に入れ、それぞれ酒粕と同量のごはんとヨーグルトを入れる。

2)各瓶に入れた材料と同量の水、大さじ半分程度(発酵材料の1/5程度)の砂糖(なくてもよいが発酵を促すフィードとして)を加えてよく混ぜ、瓶の蓋を軽く閉める。固く閉めると酵母が息をできず、発泡した際逃げ口がないので軽めに。今回の瓶は発酵対応タイプ。

3)日々1〜2回、瓶の蓋を開けて新鮮な空気を取り入れ静かに回し、全体に空気を入れて発酵を促す。
全体がぶくぶくしてかさが二倍〜三倍に増えたら完成と言われるが、今回使った酒粕は開封からかなり期間が経過し、量も少ないので発泡はかなり控えめ。日数もかかった。

時々振っているため上部に酒粕が付着しています

2日目くらいから酒粕+ごはんが先に発泡しだした。やはり糖質は強い、と言ってもネットで見る酵母ほど派手にぶくぶくはしない。
さらにフィードを加えるか迷ったが、初めてなのでとりあえずこのままできた酵母を全て使ってパンを焼いてみることにした。この時、約1週間経過。

酵母がおとなしいので成形があまり気にならず、発酵時間長めのリュスティックにしてみたが、やはりあまり膨らまない。

分割し、二次発酵させても殆ど膨らまず、

ほぼそのまま焼きあがった。見るからに素朴パン。

手でちぎるとこんな感じ。生地はそこそこ重たい。

でも、香りは良い。
酒粕の優しい匂いがほんのりと辺りに漂う。それに、味は悪くなかったのだ。
やはり天然酵母、人工的な要素がない(小麦粉は北海道産はるゆたか)ので風味が良い。固すぎないし、ほんのり甘みも感じて割と好きな風味と味だった。

一方その頃、酒粕ヨーグルトの方はようやくわずかにぶくぶくしだしていた。

控えめだけど頑張ってぶくぶくしているのが可愛い

こちらは気長に発酵させようと、手元に置いて日々何度も空気を取り入れ、時に話しかけ(健気にぶくぶくしているのを見るとだんだんかわいくなって来る)活性化に努め、その甲斐あって1週間(計2週間)ほど経つと酒粕ごはん酵母と比べてかなりぶくぶくして来た。…というところで旅行⇒胃腸炎&休養を挟んだため、しばらく冷蔵庫で眠ってもらった。

随分長く頑張らせたので冷蔵庫から出してそのまま使うのも忍びなく、一部取り分けて強力粉をフィードし、2日ほど活性化させて中種をつくり、カンパーニュっぽく焼くことに。
YouTubeで各種パン焼きチャンネルを見まくり、1日半ほどかけて生地をつくり、オーブンの中にルクルーゼ鍋を入れる焼成方法でどうにか焼いてみた。

最も参考にさせて頂いたのはこちらのチャンネル。

焼けました。

ライ麦粉が足りず、あまり色はついていないが思ったより膨らんでくれた。かわいい。
冷めるのを待っておそるおそるナイフを入れてみると…

おお…控えめながら気泡もできている(空洞もあるけど)。通常買うハードパンよりややずっしりしているが、先の酒粕ごはん酵母パンよりはるかにそれっぽい。
それはちぎってみてさらによくわかった。

弾力がかなりある。生地の伸びが良いのだ。そして生地をちぎったりする際漂ってくる香りがとても良い。酒粕ヨーグルト酵母って、こんなに良い香りになるんですね。酒粕ごはん酵母よりもさらに良い香り(あくまで個人の好みです)。うれしい。

スライスして鉄板でトーストし、キャベツのソッフォカート(太目に切ったキャベツとスライス玉ねぎを炒めて蓋をして蒸らし、仕上げに白ワインビネガーを加えた蒸し煮)に合わせて食べてみた。

美味しい。シンプルな味わいのキャベツにとてもよく合います。
いや〜…なんだかしみじみする。
あの使途に迷って長い間冷蔵庫で眠っていた酒粕が、ヨーグルトと混ざって日数をかけて酵母になり、そこから何日ものばしたりたたんだり冷蔵庫でオーバーナイトしたりの末にこんなに香り良く美味しいパンになるとは…。
やったじゃないか酒粕!すごいよ酒粕!!

そんな訳で、今回たまたま酒粕が余って酵母にしてみたが、天然酵母ってとても良い風味のパンが焼けるんですね…。実は昨年ホームベーカリーを買い、様々な粉や水分で試行錯誤していますがなかなか思うような味や香りにならず、配合や作り方の調整がきく手ごねは良いなと思っていたところ。酒粕ヨーグルト酵母はまだ少し残っているので、もう何回かパンを焼きたい。

そんな訳で、パンを焼かれる方、酒粕ヨーグルト酵母もなかなか良いですよ!というお話でした。

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