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【おうちで漬物】#5 赤かぶ漬は甘いかしょっぱいか~山形の甘くてジューシーな赤かぶ漬を試作

かつて初めて飛騨高山を訪れた際、街歩き中に赤かぶ漬をよく見掛けた。赤かぶ漬は私の大好物。なんと岐阜で出会えるとは!と嬉しくなって、土産物屋の目立つ位置にあったものと、「めしどろぼ漬」という千切りの赤かぶをしその実等と漬けたものの二種類を買い(しその実も好物なのだ)、楽しみにして帰った。

帰宅後さっそく赤かぶ漬を食べた。
・・・あれ?
動揺した。これは私の知っている赤かぶ漬ではない。何だろうこの味、食べたことがない。というか、知っているのと違い過ぎて正常に舌が働かず、味がよくわからない。
続いてめしどろぼ漬。うん、こちらは馴染みやすい。「めし泥棒」と言われるのも理解できる。でもやはり想像した味とは相当異なる。なるほど、これが岐阜の人々の好みなのか・・・。
今ではめしどろぼ漬は大好きで、岐阜へ行く度毎回買う。でも岐阜方式の赤かぶ漬は、未だにあまり馴染めずにいる。

そんな訳で、私が食べて育った赤かぶ漬と岐阜のそれは大きく異なる。味付けが真逆なのだ。
そう、甘いかしょっぱいかの違いである。
岐阜は塩分薄めの優しい味だが、私が幼少期から食べて来た赤かぶ漬は山形に住む父方の祖母が漬けたとても甘くてジューシーなものだった。
毎年冬になるとずっしり送られてくるそれは、厚めに切られ漬け汁ごと厚手ビニール袋に入り、口は厳重に輪ゴムで縛られていた。液に浸っているためジューシーで、噛むとじゅわっと甘い汁が溢れ出る、それが好きだった。食感も良い。
甘いのでごはんのおかずと言うより口直しやお茶請け、おやつに近い感覚で、甘過ぎるとも思ったがそれが赤かぶに適していると教えられた。
それ以外の調理法で食べたことがなかったので、幼い頃はかぶとは元々甘いと信じ込んでいた、それほど私にとって「赤かぶ=甘い」だったのだ。
――が。
甘くない赤かぶ漬がこんなにも当たり前に世の中に存在していたとは。食感も随分違う。
びっくりした。心の底から驚いた。
狭い日本と言われるけれど、食文化って本当に地方によって違いますよね。

――という出来事から15年ほど経ち、その後自分で赤かぶを漬けたことはなかった。神奈川のスーパーで赤かぶはまず見ない。
そんな中、近年直売所へ出掛けるようになり、三浦や湘南の辺りでは冬には大きくて立派な赤かぶがたくさん並ぶことを知った。しっかりした実はもちろん、葉や茎も緑黄色野菜として使えてとても美味しい。

葉付きのかぶは実と葉っぱの二倍楽しめて得した気分(※今回漬けたのは「もものすけ」とは違う品種です)

赤かぶも買えたことだし、山形の祖母亡き今、あの味を思い出して漬けてみることにした。

山形各地の漬け方を調べたところ、大きく分けて①塩で下漬けしてから本漬けするものと、②初めから塩・砂糖・酢を混ぜた漬け汁を作って漬け込むものに二分され、後者はより砂糖の分量が多く、漬け込み期間も長かった。塩漬けで水分を抜かない分、漬け汁を濃くして長く漬ける必要があるのだと思う。
どちらの方法をとるか迷ったが、初回なのでなるべく砂糖の量を減らしたくて下漬けすることに。また長期保存を目的としないため、甘さは元レシピよりやや控えた。

12月半ばに仕込み、中まで赤くなるのに10日ほどかかった。その時点でも食べられるが漬かりはやや浅く、しっかり甘く美味しくなるのは半月ほど経った頃。こんなにも時間がかかるものをあれほどたくさん惜しみなく…と今更ながらにありがたく思った。
参考に、元レシピと今回漬けたレシピを併記しておく。

《山形の田舎の味・赤かぶ漬(下漬け有・砂糖控えめバージョン)》レシピ:赤かぶ大2個分
1)赤かぶは茎を落として(祖母は茎も一緒に漬けていましたが、茎は甘漬けには向かないと思い除いています)よく洗い、縦半分または四つ割りにしたのを7mm厚さに切って保存袋に入れ、正味重量の2%の塩を加えて軽く揉み、かぶと同じくらいの重石をして1~2日常温で下漬け。

ひと晩下漬けして水がだいぶ出た。この時点では中は真っ白

2)上がった水を捨て、軽く水洗いして再度重さを計り(今回は元の重量500g⇒下漬け後380g)、以下の割合で合わせた調味液に漬け込む。北国では倉庫等屋外に置くが、首都圏以西は冷蔵庫が無難。
・砂糖:正味重量の6%(元レシピは10%。今回はざらめ53g)
 ・酢:正味重量の9%(元レシピは12%。今回はりんご酢80cc)

 ・焼酎:消毒のためごく少々(入れないレシピも多い。砂糖を減らしたので念のため)

下漬けした袋を洗い、軽く洗って水気を切ったかぶとざらめ、りんご酢を入れたところ。このまま封をして冷蔵庫(野菜室)で保存

3)本漬けから1週間くらいから食べられるが、2週間後ぐらいからが最も食べ頃。日持ちはこの分量の場合1ヶ月くらい。

↓  漬け始めから10日後。中まで染まったが味はまだ少し淡い

↓ 漬け始めからひと月。この頃にはしっかり甘く、ジューシーで美味しい。その1週間後にはわずかに酸味を感じたので、食べ頃は半月~1ヶ月ぐらい。祖母のはもっと甘くて2ヶ月はもったので、保存目的ならやはり元のレシピぐらい砂糖と酢を使う必要がありそう。

試作のつもりが、思ったよりもはるかに美味しくできたので手順と分量を記録しておく。食感は昔食べていたものと近く、祖母宅でも下漬けしていたのかも知れないが、下漬けなしの方法も試してみたい。
おそらく食感が異なると思うので(そちらの方がサクサクしていると思う)その結果も踏まえてより好みの方を自分スタンダードにしたいと思う。

これぐらいの量なら気軽に漬けられるので、よかったら是非、山形の味をお試しください!

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