【家と介護保険】 親の介護サービス利用体験、そして、工事業者側で介護サービスに関わる経験、双方から感じたこと
介護保険制度のもと介護認定され、ケアマネジャーさんと話し合いながら様々なサービスを利用して在宅介護生活をしていきますが、
①福祉用具のレンタル
②福祉用具の購入
③住宅改修
を検討する場面も出てくるでしょう。ここでは、私が別居する親の介護で介護保険サービスを体験した立場から感じたこと、そして、仕事柄しばしば複数のケアマネジャーさんから依頼される介護保険住宅改修工事で工事業者側として関わった経験から感じてきたことについて少しだけお話しです。
まず、担当ケアマネジャーさん との関り方
役所や社会福祉協議会さん等に相談して介護認定されれぱ担当のケアマネジャーさんが付いて、様々関わりながら親の在宅介護生活を支援してもらうことになります。ケアマネジャーさんから一方的に諸事の提案を受けることはありませんが、やはり重要なのは「父の日常生活で何が支障になっているのか」同居する母と別居する私と実態を共有したうえで、ケアマネジャーさんと随時話し合いできたことが良かったと思っています。
在宅介助とデイサービス通いから始まり、介護状態~ショートステイ入所~病院への難病療養入院するまでの約2年間、その都度、父本人と家族の意見をまとめてから、或いは、家族意見が割れる場合もそのまま実態意見として「ケアマネジャーさんと話し合い」が出来たことが良かったと思っています。
福祉用具のレンタル で助かったこと
父の場合、在宅生活に必要な福祉用具をレンタルしました。どこで転んだとか、どこで動くとき不安定になるのか、をケアマネジャーさんと父を交えて話し合い、福祉用具の活用を提案してくれ、更に後日、福祉用具事業者さんを交えて必要用具のレンタル使用開始に至りました。当然、父の変化に応じて用具を変えたり増やしたりとなりました。
福祉用具を購入する場合の情報も都度質問すれば教えてくれ、「レンタルすると月いくらかかるのか」比較しながら検討できました。父は進行性難病だったため日常動作も変化するだろうし、伴って介護する母と介助する私の動きも変わることから、総じて利用した複数の用具は購入ではなく全てレンタルしました。
便利だったレンタル用具とは?
レンタルは、宅内使用の車いす2種類、介護用リクライニングベッド、屋外用スロープ、ベッドサイド手摺、車いすのまま食事できる簡易テーブルなどをレンタルしました。一度にレンタルしたのではなく、父の状況に沿ってケアマネジャーさんと話し合いながらです。
その中で、介助する私にとって、そして、介護する母にとって、助かったものがあります。
①通院などで助かったもの 屋外スロープ
父は介護サービス利用中、通院が多数ありました。難病指定通院だけでなく、泌尿器科と眼科(共に開業医)もあり、月に3~5回、家の介助用ベッド~玄関段差~屋外階段段差~車乗り降り~病院乗り降り の往復で、抱きかかえ作業が必要でした。用具手配が間に合わず一回だけ、全てをおんぶで移動しました。足腰は弱くはない自覚がありましたが、難病でほぼ脱力している父をおんぶすることは想像を超えました…
「体が持たない! もう二度とできない!」
車いすが届き、ケアマネジャーさんに連絡して追加で屋外スロープを頼みました。階段勾配に関係なく長さが数種類あり、折りたたみ板のように保管でき、アルミ製で木材や鉄より軽く母も動かせるタイプで重宝しました。
②狭小用車いす
祖父が保持した土地と家・・・・
22年前に父が建て替えました。木造住宅は規格寸法に「尺寸法」歴史があります。メーターモジュールが途中で出来ても、尺寸法の材料は普通にあり、今でも「特に要望しない限り」大工さんや工務店でも標準です。 父が建てた家も尺寸法、かつ、宅内で車いす使用可能の設計はしていません。
レンタルで借りた標準サイズの車いすは廊下やドアなど切り返しが難しい場所で使いにくいことが実際にわかりました。常に介護している母は不快が蓄積し、ベッドからトイレまでの移動に四苦八苦になったため、もっと幅が狭い車いすにレンタル変更しました。
それに変えてから、母も父をトイレまで車いすで無理なく移動できるようになり、介護者の負担軽減になりました。ちょっとした使い勝手を大切にしてレンタルしていきたいものです。
住宅改修枠は使用せず作った「玄関スロープと手摺り」
屋外スロープはレンタルしましたが、玄関や段差のスロープは自費工作しました。建築の現場職人ではありませんが、新築~修理までの設計や現場監督キャリアが功を奏し、多少の修理や工作も見た目気にしない自分で出来るようになっていたからです。
簡単シンプルに玄関20㎝段差のスロープを作成、これで父のベッド~車までの車いす移動は、介助者の私が無理なくできる状態になりました。さらに、玄関やトイレなど父が必要な箇所の手摺りも自ら設置しました。
まだこの時は、ショートステイや療養入院によって在宅介護しなくなる展開まで考えていなかった為、住宅改修20万円枠をまだ使わずに様子を見たかった理由もありました。
建築業者側から感じる住宅改修
さて、自分の親のケースはこれくらいで、仕事として介護保険の住宅改修に関わったケースから感じたことを皆さんと共有したいです。住宅改修に該当するケースは一般的に次の通りです。
①手摺りの設置(屋内外) ②段差の解消
③床材の変更 ④扉の取り替え
⑤便器の取り替え ⑥上記に付帯する工事
ここでは①~⑥の事例紹介ではなく、工事業者ができる工夫や配慮について触れたいと思います。
「手すり設置」について感じていること
介護保険の住宅改修を利用する際には、ケアマネジャーさんの手配で建築業者さんと住む家族と3者で、現地で内容すり合わせを行います。
手摺設置の場合、いつも感じることがあります。どういう手摺をどの辺に付けたいかをケアマネジャーさんから説明を受け、どんな手摺りをどの位置に、どの位の高さで取りつけるか?を建築業者と話し合って決めていきます。
建築業者でなければ判断できないことがあります。それは、付けたい箇所に下地があるかどうかです。一方で横に付ける手摺では「どの高さに付けるか」、縦に付ける手摺は「どの高さからどこまで付けるか」については、必ずしも建築業者の意見だけで補えないことがあります。
取付け高さに目安はあるが…
横でも縦でも手摺の取付高さには、建築的な目安があり、それに準じて決めていれば大きく支障が出ることはない一方で、付けてからやっぱりもう少し上とか下とか…も出てくることもあります。
一般的な目安というのは「人の身長や使う人の状況=個別」を全て補えません。
腰がある程度曲がってしまったご高齢者もいれば、歩行に難がある方います。対象者が女性か男性かによっても違うし、同じような身長の方でもちょっと上とかちょっと下が良い場合もあります。
腰の高さを参考にするなど、建築目安だけでなく人間工学的な参考指標や福祉事業者さまの声も活かせる事ができます。
このような「当事者に出来るだけ使いやすいように、確認や質問する」という、ちょっとした配慮については当事者さんやご家族さんはじめ、ケアマネジャーさんによって熟知しているとは限らないですから、だからこそ、現地に来られた建築業者さんの質問や提案に影響を受けます。
より良い介護生活のために…
団塊ジュニアにあたる私の世代は人口が多く、私の年代はあと20年すれば70歳を越え、確実に今後、介護保険や住宅改修の制度の充実は避けられません。それと同じくらい、現場に関わる方々の対応力や配慮向上も重要ではないでしょうか。
福祉住環境コーディネーターという資格もありますが、持っていれば頼りになるわけでなく、当事者やご家族に寄り添った使い勝手に近づくように、現場にくる建築業者さんがアドバイスできる社会を目指したいですね。