離婚⑤
「ちょっとお時間いいですか。」
木曜日。朝一で上司と会議室。
まとまった休みを取りたい旨を話した。
離婚については前々から話していた。
プライベートと仕事は別物だが、平日にやらなくてはならないことなども出てくるかもしれない。だから事情は話しておいた方がいいと思ったからだ。
今回の休みについても、元々の体調不良の上に離婚問題がのしかかって来たため、持ち堪えられなくなったと説明した。事実だ。
上司は分かったと言ってくれた。ただ、万一職場や仕事で改善できることがあれば話して欲しい、実現可能かは断言できないけど、何かないのか、とも言ってくれた。
なくはない。苦手な人がいる。いい人なんだけど、こだわりが強くて波があり、その波にのまれて私は削られている…
けれども今はそれよりもプライベートの問題が原因なので、それは話さなかった。
(職場の人間関係については↓に書いてます)
上司はすぐに休みの手続きについて教えてくれた。
その日の夜。
私は悩んだ。
本当に休んでいいのか。
いざ職場に話してみると、急に今の職場環境の恵まれ方に焦点が合った。残業はほとんどない、上司からの圧もない、みんな体調第一と言ってくれる、テレワークがしたいと言えばさせてくれる、その上福利厚生は完璧。
ここでやれなかったら俺はもうどこでも働けないんじゃないか。そんな不安が頭をぐるぐる。本当にいいのか。いいのか?本当に?
「休む」という選択には、なぜこれほどの勇気が必要なのであろうか。周りと同じ流れから降りてしまう恐怖は言葉で表せない。だけど。
「自分の心に正直でいいんじゃない?」
相談した同期からの言葉で腹が座った。
しっかり休もう。
俺は頑張った。よく頑張ったよ。
新月の夜だった。
【離婚⑥に続く】