初めてのエンゼルケア
先日、エンゼルケアを行った。
看護助手の仕事をして初めてのことだ。
エンゼルケアとは、亡くなった人に対する死後の処置である。
私の勤める病棟が精神科の慢性期の病棟ということもあり、あまり内科的に重症な方がいらっしゃらないというのもあるのだろう。
私はそこそこの年数従事しているわりに、
これまで患者さんの最期に立ち会うことがほとんどなかった。
もちろん、過去にこの病棟で亡くなった方は何人かいらっしゃるので亡くなること自体は特別珍しいことではない。
ただ、私はいわゆる「死神」ではないようで(言い方が不謹慎で申し訳ない)、患者さんの最期の日は大抵休みや夜勤明けでこれまで不在だったのだ。
その日は、私は日勤だった。
朝の申し送りが終わり、全患者のバイタルチェックを行い、今度はオムツ交換。
そんな最中、内科的に状態の悪かったある患者さんが急に心停止となった。
元々、そんなに永くないと分かってはいたものの、朝から訪室した際は体動も活発だったのに。ゆえにあまりの急変に驚いた。
看護師や医師が心臓マッサージなどの処置をするも結果は虚しく、最初の発見から20分後には息を引き取られた。
看護師が関係者に電話したり書類を作成したりとバタバタしている最中、私含め他の看護助手はエンゼルケアの準備に入る。
まず、着ていた衣服を脱がせる。
亡くなっているため、当然動くはずもなく
だらんとした腕から衣服の袖を脱がせるのは
なかなか難しい。
脱がせ終わると、お湯を張ったバケツにタオルを濡らし絞って、丁寧にお顔や身体を拭いていく。
状態が悪かったため、しばらく入浴できていなかったためかかなりの落屑がある。
髭も剃り、口の中もスワブできれいにする。
触れると、まだほんのり温かい身体。何だか亡くなっていないような気さえしていたが、真っ白な口腔内を目の当たりにすると、やはり亡くなっているのだと思い知らされる。
それから肛門部に綿を入れてから新しいオムツと浴衣を着せ、合掌バンドや顎バンドなどを施す。
数分にわたるケアのあと、
彼はすっかりきれいな姿になっていた。
年齢もまだ60歳頃と若かっただけあって、
その短い生涯を想うと少し感傷的になってしまう。
彼の人生って一体何だったのか。
人生の半分くらいをここの入院生活に費やした日々。
面会に来る人もいなかった。
長期にわたる精神科病棟生活で、身寄りもなくこのように一人静かに亡くなって行く人。
きっとこれからもっと増えるに違いない。
職業柄仕方ないとはいえ、できるだけここで亡くなる患者さんが増えないことを祈る。
とはいえ、この貴著な経験をさせてもらうことができ、看護助手として一方で成長できた気がする。
感謝とご冥福をお祈りします。
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