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再びトロミ調整剤の話し

施設でも自宅でも、最近は介護する中でトロミ調整剤は当たり前の様に使われています。

しかも大量に。

私の義父が要介護になった時も、パーキンソン症候群という病気のせいで嚥下に問題があったので、義母がそれこそ口に入る物全てにトロミ調整剤を振りかけて食べさせていたのを覚えています。

後に自分が介護施設の厨房で仕事をするようになっても、しばらくは何の疑問も抱かずにドカドカと毎日大量のトロミ調整剤を料理に使っていました。

しかし今では、少なくとも家庭ではトロミ調整剤は極力使うべきではないと考えています。

そう考えるようになったのは、あるお年寄りからのクレームがきっかけでした。

そのお年寄りはWさんという女性だったのですが、新しく施設に入ってこられた時に最初はソフト食の指定でした。

理由は歯が悪いからなのですが、体は元気な様子でしたし、頭もしっかりしていて何かと介護士さんに注文を付けるタイプのうるさ型のお婆さんでした。

案の定、ソフト食は美味しくないから刻み食に変えて欲しいとご自分でオーダーされまして、介護士さんと色々相談した結果、トロミも上から掛けて提供する「刻みトロミ食」に落ち着きました。

それで1週間ほどその「刻みトロミ食」を続けたところで、Wさんから再びクレームが入りました。

「刻み食はそのままで、トロミはやめて欲しい。まるで拷問を受けているようだ」といった内容のクレームです。

Wさんの口から「拷問」という言葉が出た事で、私もトロミ調整剤について何も考えずに使ってきた事に気づき、自分でもトロミ調整剤を大量に使った食事を初めてしっかり一人前食べてみました。

今までもトロミ調整剤付きの料理を少量味見する事は当然行っていましたが、それをしっかり一人前食べることはしたことがありませんでした。

それで感じた事は、確かに「拷問」でした。

味噌汁も煮物も、全てトロミ調整剤が入った状態の食事は、何を食べても口の中が独特のベタッとした食感で覆い尽くされてしまい美味しさが感じられません。

そんな食事を毎日三度も出されたら、どんどん食欲が無くなってしまいますし、食べたい気持ちはあるのにそんな食事しか食べられないとなると、それはまさに「拷問」です。

そしてもう一つ思ったのは、トロミ調整剤は無害とされていますが原材料は「デキストリン」と「増粘多糖類」です。どちらも天然素材由来の食品(デキストリン)であり食品添加物(増粘多糖類)とされていますが、他の加工食品の様に少量が添加されているのではなく、トロミ調整剤に関しては全部が「デキストリン」と「増粘多糖類」で出来ていますから、それを大量に毎食食べ続ける事は本当に問題ないのかといった疑念も頭に浮かびます。

まぁ施設の場合は致し方ない面もありますが、ご家庭で介護されている場合は、なるべくそのままの状態で食べさせて欲しいと思います。

その方が食欲も維持されますから、結果的に体力も維持されると思いますし、何より毎日の食事を楽しむことが出来ます。

嚥下障害がありどうしてもトロミが必要な場合でも、なるべく片栗粉や小麦粉など普通の食品を使ってトロミ付けする工夫をしてほしいと思います。

要介護のお年寄りの食事は、毎回毎回が人生最後の食事かもしれないと思いながら日々の介護生活を送っていただきたいと思います。

※元記事は「食べごろclub

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中嶋洋二郎
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