見出し画像

【詩】図書館

図書館は思想の動物園
そこはえらく静かな動物園
そこいらの動物園なんかより
たくさんの動物がそこにはいるのに

パンダフィーバーが起こるみたいに
その動物園でも、ときによってブームは違う

情報の世紀キャンペーン
映画の原作キャンペーン
年末年始キャンペーン

番号で管理された檻の中で動物たちは静かに、いる

もしも、この動物たちに鳴き声があったら
ここは、とてもいられた場所じゃないだろう

もしも、この動物たちに手足が生えていたら
みんな両手を広げて背伸びをして
今みたいに檻の中には収まってくれないだろう

もしも、この動物たちに意思が芽生えたら
辞書は先生みたいになり、雑誌はおしゃれをして、
小説はマイペースで、マンガは冒険にでも出かけるのだろうか

もしも、この動物たちが人間のような知能をもったら
自分たちが皆、遠い親戚にあたることを知るだろうか、
君のおかげで私は生まれて、私のおかげであなたは生まれたのよ、
と言うのだろうか

もしも、この動物たちに寿命ができてしまったら
人間たちはどうするのだろうか、
亡くなった動物を人間と同じように祀るのだろうか、
忘れたくないその存在をきっと別の形で残そうとするのだろう

人間と動物と本と

人間は本を生み出した、人間は本の産みの親
人間は動物を殺すことで生き残る
人間は動物に生かされている、動物は人間の育ての親
人間は動物の一種でしかない、人間も動物
しかし、人間だけが本を産む、他の動物は本を生まない
本は人間の子孫

僕より先に生まれた本は僕より先輩ってことになる
図書館には大先輩ばかりがいらっしゃる
急に肩身が狭くなってきた
本の前を通る時、映画館で人の前を通る時みたいになってしまいそうだ

みんな大人だから、こうして静かにしていられるのか
確かに、最新のマンガや雑誌は定位置からズレてることがよくある
まだ新入りだから勝手が分かっていないみたい

新入りから大先輩まで、揺るぎない自己主張を持った動物たちが静かに堂々と時を過ごす場所、それが図書館
新入りから大先輩まで、ぐらぐらした自己主張を抱いた動物たちが騒がしくこそこそと時を過ごす場所、それが世界
なのだろうか

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集