自己肯定感を高める親子の会話術:誉め方・叱り方
『自分でできる子に育つ 誉め方叱り方』は、子どもの自己肯定感や自立心を育むための「誉め方」と「叱り方」の具体的なアプローチを解説した本です。親や教育者が日常生活でどのように子どもに接するべきか、心理学的視点や実例を交えて解説しています。
子育てにおける褒め方や叱り方の重要性は多く語られますが、その根底には「条件付きの愛情」か「無条件の愛情」かという大きな違いがあります。この違いを理解し、実践することで、子どもの自己肯定感や自立心を大きく育むことができます。
条件付きの愛情と無条件の愛情の違い
条件付きの愛情とは、子どもの行動に応じて親の愛情を示すことです。たとえば、「いい子にしていたら褒める」「言うことを聞かないなら叱る」という接し方。これを繰り返すと、子どもは「褒められる=愛されている」「叱られる=愛されていない」と感じるようになります。
一方、無条件の愛情とは、子どもの行動にかかわらず、常に「あなたは愛されている」というメッセージを送り続けることです。たとえば、子どもがぐずっても「それでもあなたは大切な存在」と示すことで、子どもは愛されている安心感を得られます。
条件付きの愛情の例
子どもが寝る前に絵本を読んでほしいとせがんだとします。親がイライラして「今日はわがままを言ったから絵本を読むのはやめる」と判断すると、子どもは「愛されるためには親の言う通りにしなければならない」と思い込む可能性があります。
無条件の愛情の例
子どもがぐずっても、まず絵本を読んでから、落ち着いたタイミングで「さっきはどうしてぐずったの?」と対話をします。これにより、愛情を引っ込めずに子どもの行動を見つめ直す機会を与えることができます。
ポイントは、無条件の愛情を示しつつも、親の気持ちを「私メッセージ」で伝えることです。例えば、「さっきは悲しい気持ちになったよ」と自分の感情を伝えることで、子どもは親の気持ちも考えるようになります。
無条件の子育てを実践する5つの条件
1. 褒め方と叱り方に気をつける
能力や結果ではなく、努力や過程に焦点を当てた具体的な声かけをする。
2. 子どもに対するイメージを見直す
子どもは1人でできる力を持っていると信じ、必要以上に手を出さない。
3. 良きリーダーでいる
気持ちに寄り添いつつ、自由に伴う責任の大切さを教える。
4. 子どもへの要求を考え直す
年齢や成長段階に応じた現実的な期待を持つ。
5. 子育ての長期的ゴールを持つ
自立心や責任感を育む長期的視点で接する。
具体的な褒め方:3種類のスタイル
褒めることはポジティブな行動ですが、方法を間違えると逆効果になることもあります。
1. おざなり褒め
「すごいね」「上手だね」といった表面的な褒め方。具体性がなく、真意が伝わりにくい。
2. 人中心褒め
「優しいね」「頭がいいね」など、性格や外見に言及した褒め方。子どもが評価基準を外部に求めがちになる。
3. プロセス褒め
「最後まで頑張ったね」「失敗しても諦めなかったね」など、努力や試行錯誤に焦点を当てる褒め方。これが最も効果的とされています。
子どもの感情や欲求に寄り添う
大人が「泣かない」「早くしなさい」と要求するのは、しばしば大人の都合によるものです。子どもは本来、泣いたり失敗したりすることで成長していきます。
また、男の子だから泣いてはいけない、女の子だからおしとやかにすべきといった性別による固定観念は、子どもの選択肢を狭めてしまいます。子どもが自分らしく成長できるよう、親が柔軟な見方を持つことが大切です。
子どもを自立させる接し方のポイント
子どもの自立を促すためには、親の接し方に一貫性があることが重要です。一貫性が欠けると、子どもは「どこまで自由にしていいのか」「親が本当に期待していることは何か」といった混乱を抱えやすくなります。
1. ルールを明確にする
家の中での基本的なルール(たとえば、寝る時間や片付けの習慣)を明確に設定します。ただし、子どもがそのルールに疑問を感じたり、自分なりの理由を話したい場合は、その声にもしっかり耳を傾けることが大切です。
2. 選択肢を与える
すべてを親が決めるのではなく、子ども自身が選べる場面を作ります。たとえば、服を選ぶ、今日読む絵本を決めるなど、小さなことでも自分で決断する経験を積むことが、自立心を育てます。
3. 「今の気持ち」を受け入れる
「そんなことで怒るのはおかしい」「泣くな」といった否定的な言葉は避けましょう。子どもの感情を認めた上で、少しずつ冷静になる方法を一緒に探すことが成長につながります。
長期的視点で親ができること
親は目先の結果や行動だけに囚われるのではなく、子どもの未来を見据えた接し方を意識する必要があります。
1. 失敗を恐れない環境を作る
子どもが何かに失敗したり間違えたとき、「どうしてこんなことをしたの?」と責めるのではなく、「その結果から何を学べたかな?」と問いかける姿勢が大切です。失敗は成長の糧であると教えましょう。
2. 親自身が学び続ける
親自身が新しいことに挑戦したり、学び続ける姿を見せることで、子どもにとって「成長は一生続く」という価値観を自然に教えることができます。親が楽しみながら学ぶ姿勢は、子どもに良い影響を与えます。
3. 自分の価値観を押し付けない
親としての理想や希望は大切ですが、それが子どもの夢や意志を圧迫しないよう注意しましょう。たとえば、進路や趣味について、親の望みではなく、子どもの興味関心を中心に考えるべきです。
愛情を土台にした自己肯定感の育み方
自己肯定感が高い子どもは、困難に直面しても乗り越えやすくなります。これは無条件の愛情を土台にして育まれます。
1. 失敗しても愛されていると感じる安心感を与える
「間違えても、あなたのことを変わらず大切に思っているよ」と伝える習慣をつけましょう。
2. 褒めるだけでなく承認する
特別なことをしなくても、子どもの存在そのものを認める言葉かけを意識します。たとえば、「今日は一緒に過ごせてうれしかった」と伝えることが、自分自身の存在意義を感じさせます。
3. 感情を共有する
親が喜びや感動、悲しみなどを素直に表現することで、子どもも自分の感情をオープンにしやすくなります。
子育てにおける「無条件の愛情」と「自己肯定感の育み方」は、どちらも長期的な視点でのアプローチが必要です。日々の小さな積み重ねが、子どもの心の強さを形成し、将来の自立を支える力となります。