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家庭裁判所調査官補試験対策のすべて

家庭裁判所調査官補試験 受験対策レジュメ

目次
0,はじめに
1,家庭裁判所調査官とは
2,出題科目と内容
3,試験対策(総論編)
 ⑴いつ、何を勉強するか
 ⑵予備校か独学か
 ⑶情報収集ツール
4,試験対策(筆記編)
 ⑴基礎能力試験(一次試験)
 ⑵政策論文試験(二次試験)
 ⑶専門記述試験(二次試験、法律科目のみ
5,試験対策(面接編)
 ⑴集団討論(人物試験Ⅱ)
 ⑵面接カード面接(人物試験Ⅱ)
 ⑶事例面接(人物試験Ⅰ)
6,受験ドキュメント
7,おわりに

0,はじめに
 本レジュメは家庭裁判所調査官補(採用後、約2年間の研修を経て家庭裁判所調査官になります)を目指している方ないし目指そうか悩んでいる方に向けて、作成したものです。家庭裁判所調査官(家裁調査官や調査官と略して呼ばれることも多い)という職業を知り、その対策の一助となれば幸いです。なお、専門科目については、法律科目(民法・刑法)のみを記載していますのでご注意ください。また、情報は古い可能性がありますので、最新の情報については、必ず公式の資料を参照してください。(※一応、購入していただいたときに、記事の見直しを行ってはいますが…)

1,家庭裁判所調査官とは
 ごく簡単にいえば、裁判所という組織の中で、裁判官から命を受けて、少年事件や家事事件について調査を行い、その結果を報告書という形で裁判官に提出をする仕事です。その過程で当事者に話を聞いたり、さらに状況を詳しく知るために試験観察を行ったりすることもあります。処分等について、最終的な決定権限を持つのは裁判官ですが、調査官も処分等について報告書に意見を付すため、結論に大きな影響を与えることになります。また、家庭裁判所調査官はあくまで専門職ではなく総合職であるため、裁判所の運営(司法行政)にも、事務官や裁判官とともに関わることになります。詳しくは、以下のサイトを参照してください。

・家庭裁判所調査官の説明…https://www.courts.go.jp/saiban/zinbutu/tyosakan/index.html
・裁判所パンフレット…https://www.courts.go.jp/saiyo/pamphlet/index.html
・離婚調停での家庭裁判所調査官の役割…
https://rikon-terrace.com/kasai-chosakan
・家庭裁判所調査官の研修体制と少年事件の実務について…https://www.moj.go.jp/content/001228068.pdf

 上記4つのサイトは見ておくとよいかと思います。書籍はこれといったものがないのですが、『家裁調査官の仕事がわかる本』が無難です(少し古いので若干注意が必要です)。また、裁判所職員パンフレットもHPで見ることができますし、取り寄せることもできるので、必ず目を通しておきましょう。また裁判所の採用案内ページに先輩のメッセージが乗っているほか、少年事件や家事事件について、動画もあります。また、フェイスブックにも関連する動画が多数あるため、できるだけ目を通しておきましょう。また、毎年家庭裁判所が実施する(例年。今年は不明)家裁調査官ワークショップには参加した方がよいでしょう。
 
2,出題科目と内容
 大きく分けて、①基礎能力試験②専門試験③政策論文試験④人物試験Ⅰ⑤人物試験Ⅱに分けられます。①が1次試験で、②~⑤が2次試験です。ただし、②③と④⑤は別日に行われますので、感覚的には④⑤が3次試験といえるかもしれません。合否は①~⑤の合計点で決まりますが、①~⑤の科目ごとに足切りがあります。また①で一定の点数を取らないと、②以降の試験を受験することができません。
 ①はいわゆる一般教養を図る多肢選択式試験で、民間のSPIをやや難しくしたようなイメージです。知能分野24題、知識分野6題(後に詳述。令和6年度から問題数が変更されました!)で構成されています。②は、家庭裁判所調査官補に必要な専門的知識を問う論述式試験で、5つの学問領域(心理学、教育学、福祉、社会学、法律学)から出題される15題のうち任意の2題 (当日試験問題を見て、解く問題を決めることができます)を選択して回答します。③は、組織運営上の課題を理解し、解決策を企画立案する能力などについての論述試験です。④は、人間関係のトラブル事例を読み、その時の登場人物の心情を読み解き、また、その事例に関連する自身のエピソードを話すという家裁独自の面接と、それに続く一般的な面接(人間関係や挫折経験などが多く聞かれる印象です。前述のトラブル事例と関連している場合もあればそうでない場合もあるようです。)を組み合わせたものです。⑤は、集団討論と、それに続く面接カードに基づいた一般的な面接です。
 配点比率は①が15分の4、②が15分の4、③が15分の1、④が15分の2、⑤が15分の4です。面接試験(④⑤)で配点比率の4割を占めますので、面接試験の対策が特に重要になります。
 詳細は、裁判所の受験案内をご覧ください。
 令和6年度は→https://www.courts.go.jp/saiyo/juken_annai/index.html

3,試験対策(総論編)
 ⑴いつ、何を勉強するか
 家庭裁判所は試験範囲が広く、また面接の準備にも時間がかかるので、できる限り早く対策に着手すべきです。1年前から対策は始めておいた方がよいでしょう。2年前から対策をはじめておくと、さらに余裕が出ると思います。ただ、たとえば半年では間に合わないと決まったわけではありません。ただ、相当に効率よく勉強を進める必要があります。
 公務員試験では、筆記試験対策に時間を取りがちですが、裁判所職員試験の場合には、面接試験の準備が非常に重要です。なぜなら、前述したように面接試験の配点比率が極めて高いからです。面接カードの記入自体は数日あれば終わるでしょうが、記入するエピソードは面接カードを作成しようと思った時からではなかなか作れません。早めに、面接カードの作成を見越して、そこに書きたい経験は事前にしておくべきように思います。
 家庭裁判所調査官であれば、少年事件や家事事件に関係するアルバイトやボランティアは事前に経験しておくことが望ましいでしょう。また、これに限らず、後述するように、面接では人間関係ついて、しつこく質問されますので、人と密にかかわる経験は多いに越したことはないと思います。
 筆記試験では、専門試験の勉強が圧倒的に時間を食うので、最優先で取り掛かりましょう。専門試験の基礎的なインプットが完了したら(またはこれと並行して)、基礎能力試験の知能分野の中の数的処理に取り掛かりましょう。暗記科目ではなく、習得に時間がかかるためです。数的処理の典型題がおおよそ解けるようになれば、次に専門試験の論述の勉強を開始してください(同時並行でも大丈夫です)。
  その後、一次試験の直前期(3か月前から1か月前)に(余裕があれば)知識分野を一気に詰め込み、過去問もやって一次試験を迎えます。一次試験終了後は、専門試験の最終確認と政策論文試験の対策を手短に済ませ、二次試験の筆記試験を迎えます。筆記試験終了後は、直ちに、面接カードの作成に取り組み、合わせて面接対策をして、人物試験に臨むといったスケジュールが標準的であるように思います。
 まとめると、

1年以上前~  人物試験のための経験づくり(ゼミ、バイト、サークル、ボランティア等)
1年前~  専門試験のインプット+アウトプット(典型題のみ)
半年前~  数的処理(必須)+英語・現代文(苦手な人のみ)
3か月前~ 専門試験のアウトプット(典型題+α)
1か月前~ 過去問(知識分野は無視でもOK)+時事(最低限でよい)
      +(余裕があれば知識分野のインプット+アウトプット。捨て  
        るのも可)
1次試験後~ 専門記述の総仕上げ+政策論文試験対策
筆記試験後~ 面接カード作成、面接準備

 という感じです。

 ⑵予備校か独学か
 家庭裁判所調査官のコースを設けている大手予備校がありますので、そこを利用するのが手っ取り早いでしょう。LEC、TAC、クレアール(心理系の場合)が最有力候補になると思います。ただし、近年では市販の参考書、問題集も充実しているため、予備校なしでも合格は不可能ではありません。
 ただ、試験問題の中でも、独学で対策しやすいものとしにくいものがあるため、順に説明します。まず、①の基礎能力試験は、裁判所事務官とも共通で、他の公務員試験のそれと同様のオーソドックスな問題なので、市販の問題集で十分に対応できます。ただし、問題のクセ(それほどありませんが…)や時間配分(割と余裕がありますが…)になれるため、過去問は解いておきましょう。市販されているものもありますし、LECなどでも販売していました(今年は不明)。次に、②について。心理学については、『試験にでる心理学』という定評のある問題集がありますが、他の科目については参考書はあるにしても、家庭裁判所調査官補試験に適した参考書は少なく、ゼミなどで信頼できる先生や先輩がいて、勉強の相談や問題の添削が頼める人がいるといった事情があれば別として、そうでない限り、独学はなかなか難しいように思います。また、法律学については、刑法の論述講座は公務員試験レベルではおそらく存在しないため、司法試験の講座や問題集を流用することになるかと思います。

 ⑶情報収集ツール
 試験対策とは直接関係ありませが、裁判所HPの家裁調査官に関連する記載、動画は必ず確認しておきましょう。面接や政策論文試験で役立つかもしれません。また、予備校のツイッターなどのSNSなどから、試験情報や講座の情報が得られるので、調査官専用のアカウントを作るなどして、フォローしておきましょう。
 
4,試験対策(筆記編)
 ⑴基礎能力試験
 出題分野は以下の通りです。出題数は目安です。

・文章理解(現代文)…内容把握3題、空欄補充1題、文書整序1題
・文章理解(英文)…内容把握3題、文書整序1題
・数的処理…判断推理7題(うち図形2題)、数的処理7題、資料解釈1題
・知識分野…6題(時事問題中心)

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