【読書感想4】楽園にて(エビハラ)
エブリスタでも活躍されているエビハラさん 蛯原テトラ - 小説投稿エブリスタ (estar.jp) の短編集。(NOTEでも書かれている)
5つある短編は「楽園」をテーマに書かれています。
2編については感情のおもむくまま感想を書いて、壮絶なネタバレになりそうなので、下記3編について書かせてもらいますたい。
①『週末にはコーヒーを』
村上春樹風味の達観した主人公と、どこか抜けている可愛らしい悪魔。
登場人物の濃いキャラクターを楽しみながら、最高のコーヒーをめぐっての話が進んでいく。読者としては「主人公よ、コーヒー豆欲しさに魂を売っていいのか?」と真相が気になる。
恋愛をめぐる良作でもあり・・ラストは伊坂幸太郎ばりの解決っぷり。
すげえっ!
②『楽園にて』
魂を入れられたゴーレム(トーマ)と、それを作った先生、そしてゴーレムの世話係(シイク)の話。3者の視点で物語はかたられていくのだが、ゴーレムの世話係であるシイクにすごく惹かれた。
はみ出し者である彼がいかに、仕方なく悪に染まっていったか。はたしてそれを単純に悪、と断言していいのか。
シイクはトーマから文字を学び、聖書を読んで考え、対話をするようになる。そして、しだいにトーマの境遇を思いやるように。最後に二人はある決断をくだす・・。
結果はどうなるか分からないが、前に進む終わり方が好みだった。
名作でした。
③『白い河』
シュールな世界観で良き✨。白い河から牛乳瓶を釣りあげるのは、なかなか思いつかないだろう。
現実世界から天国にいく間の話? と想定していたら、あとがきでヘブライ人の伝承「ガフの部屋」(魂の住む部屋)を下敷きに書いた、と記載があった。うーん博識。
どこかから白い河に流れやってきた主人公は記憶が解けてなくなっており、そこの住人スズメの世話になる。 主人公とスズメの恋物語にも思え、ラストが切なかった。
余韻にのこる読みつづけたいお話でした。
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