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【読書感想3】クリエイターを殺すうた(百百百百)

あたらよ文学賞主催者にして、出版社eyedearを営む百百百百(ささもも)さんの『クリエイターを殺すうた』を読了しました。

16作品が掲載されている短編集です。
さすが賞の主催者としてさまざまな作品を読まれているからか
純文学から青春物、SFにホラー、ファンタジーとなんでもござれ! でした。幅ひろく書ける方なんだな~とひたすら感心。

タイトルが『クリエイターを殺すうた』なので、物書きの挫折についてや、漫画研究部の先輩が筆をおってしまった話などあり。
自分のお気に入りは下記4点でした。

【ネタバレ注意】
①『平成最後の夏、一撃、雀色時でランデヴー』
灼熱の夏、二人の女子高生。新元号を考えたりなどたわいもない話をして、偶然きた海。
《遮るもののない川沿いのサイクリングロードは、太陽をあたしたちに全力投球でぶつけようとしていた》の一文や、
《せんぱいの横顔が、夕陽をうけてきらきらとしていた。黄昏時、せんぱい、平成最後の夏の夕暮れは、どこか寂しい》など。
文章からあふれる青春の空気で胸いっぱいに。素敵な文章群を味合わせていただいた。

②『アニュラス』
微ホラー?
ひーちゃんの胸に十センチの円をした黒い穴があいた。うちは穴に指をいれたり、いろいろと調べてみるが・・。
穴はアニュラスと呼ばれ、できてしまった人は姿を消してしまうと言われている。
「普通でいたい、変な子ではいたくない」というひーちゃんの葛藤とともに先が気になる話だった。

③『アノニマスは嗤ったよ』
WEB小説書きが作品への誹謗中傷に、心折れかけるお話。
《名無しさんたちのために、ゴールテープを引くつもりなんてない》の前向きな一文にぐっときた!
そうだよね、坂本竜馬も「世の人はなんとも言わば言え。わがゆく道はわれのみぞ知る」と言っていたもの。

④『あたしが死んだおとが聴こえた』
解散した劇団員の主人公が、泣きながら繁華街を歩く。すると路上ミュージシャンと出会い、彼女の境遇に共感して・・。
なんといってもラストシーン。絶望感から絶叫して、感情を爆発させるような。こういうシーン書きたいなあ。
そして《死んだおとが聴こえた》につづく最後の一文がとてもとても素敵だった。


傾向として自分は、先に光が見えたり前進する話が好きなんだな、と改めて思いました。
一緒にどーんっと落ち込んでくれる話は、それはそれでインパクトや美しさがあるのだけど、心の体力がいるのよ。だからタフな時に読むと違うのかも知らんけど。
Anyway, 青春物からSFにホラーまで、様々なお話が読めて楽しかった。多ジャンル好きなのでありがたい本。eyedearさんは文フリに出店されていることが多いので、そこで購入できるかと。
今後とも有限会社eyedearさんと百百百百さんには注目していきたい。

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