読書note : 2023年振り返り<民藝編>
2023年はあちこち頻繁に旅行に出かけましたが、本もたくさん(自分比)読んだ一年でした。
何かに興味を持つと、一通り本や雑誌を読み漁らないと気がすまないので、いつも積読だらけ。。。
中でも気に入った本、よく読んだ本はこんな感じです。
📗『リーチ先生』/原田マハ
棟方志功にはまった流れで、民藝運動に興味を持って、『もっと知りたい 柳宗悦と民藝運動』のようなムックや、ガイド本で勉強していたのですが、原田マハさんのこちらの小説が、フィクションでありながら、バーナード・リーチを中心に民藝運動周辺の人物や大まかな流れ、白樺派や大正時代の若い芸術家たちの動きなど、わかりやすく書かれていて、主人公の陶工の青年の青春物語としてもなかなか感動的でよかったです。高村光太郎や岸田劉生などの芸術家が、白樺派やリーチと関わっていたことは、この小説を読んで初めて知って、驚きと同時に、大正時代の芸術史にもっと興味を持つきっかけになりました。
ちなみに、この物語(フィクションである陶工の親子以外)は、バーナード・リーチの『日本絵日記』と、自伝『東と西を超えて』の内容がベースになっています。
📗『日本絵日記』&『東と西を超えて(Beyond East and West)』/バーナード・リーチ
『リーチ先生』は第二次大戦前の、来日後〜イギリスへ帰国してセント・アイヴスでLeach Potteryを開くまで、がメインのお話でしたが、こちらは1950年代に来日した時の滞在記と、晩年の1970年代後半に書かれた自伝的エッセイです。
1.『日本絵日記』
当時の日本の慣習・社会に対する疑問や、民藝・工芸・芸術の世界の問題点など、割と率直に述べられていますが、70年後の日本人の目で読むと、却ってリーチ先生の意見のほうが、現代の自分の感覚に近いことに気づきます。
ラフカディオ・ハーンの『日本の面影』にも似た、今は殆ど失われた日本の風景が、詳しく描かれているのも、とても興味深かったです。風景や動物、味のある、友人たちの肖像画(教科書で名前を見るような面々、当時はまだ健在だったんだな〜と思います)など、ペン画のスケッチも沢山掲載されています。
時折ホームシックとも取れる感情をふと漏らしたりしていますが、自分が外国へ行ってふとした時に感じる疎外感、自分が異国人だと意識する瞬間と同じ感覚がして、沢山の日本人と交流して、各地の窯元に滞在して製作して、乾山の免許皆伝を受けていて、民藝や日本の文化について、日本人以上に理解して深く関わってはいても、やはりそういうことは感じていたんだなぁと、共感できました。
2. 『東と西を超えて(Beyond East and West)』
自伝のほうは、『日本絵日記』と被る部分はあるものの、自らの生い立ちから、ロンドンで留学中の高村光太郎に出会って、そのツテを頼って日本に来るまでの来歴など、詳しく描かれています。wikipediaにはあまり詳しく書かれていない、ロンドンのスレード美術学校やロンドン・スクール・オブ・アート時代の話や、最初の奥様ミュリエルとのお話など、興味深い話がたくさんありました。
スレード美術学校出身でピンときたのが、ブルームズベリー・グループの面々。ほぼ同世代だし、もしや・・・と思い読み進めると、画家のヘンリー・ラムとは同郷で友人、アトリエを訪ねるとオーガスタス・ジョンがいて。。。という話に思わずびっくり。民藝とブルームズベリー・グループが繋がっていたなんて。彼らが開いていた展覧会にも、作品を出品していたそうです。
日本にポスト印象派を初めて紹介したのは雑誌『白樺』(1912〜13年頃)で、イギリスよりも先んじていた、と読みましたが、ブルームズベリー・グループに関する書籍には「1910年、ロジャー・フライがイギリスで初めてポスト印象派展を開いて、それがイギリスの美術界に衝撃を与えた」といったことが書かれていて、同時発生的に日本とイギリスで同じようなことが起こっていたかと思うと、偶然でも面白いなと思います。柳宗悦にウィリアム・ブレイクの本を紹介したのはリーチだそうで(リーチはヘンリー・ラムから教えられたそう)、ブレイク研究が後の「直観」や宗教美学に繋がったそうなので、実は民藝運動にもイギリスの影響があったんですね。
こちらの日本語版は絶版のようで、現在は英語版ペーパーバック・電子書籍が手に入りやすいようです。(私の地元の図書館には日本語版がありました)