昔の下北沢(再開発前)
狭い路地に騒然と並んだ服。小さいブティックが軒を連ねる。ボクと下北沢の出会いは19歳の夏。専門学校に通っていた自分は小田急線をいつも利用していた。そう、自分の中ではこの街がただの「通り過ぎる駅」に過ぎなかった。準急列車がいつも停車し、それなりに多くの人が行き来する駅。
ふとある日曜日、自分は友人のライブがあるのでこの駅で初めて下車した。改札を抜け、階段を下りた時の第一印象。
ずいぶんごみごみした窮屈な街だな。
眼前のマクドナルドが「ようこそ」と迎えてくれているよう。しかし、テレビ等で「若者の街・住みたい街No.1」と称されるだけのことはある。あちこちに小さなブティック・古着屋・アクセサリー屋・雑貨店が立ち並ぶ。劇場や飲み屋、そして楽器屋までもがそこら中にあるcafeだって少し歩くとある。
それでも自分の中では「新宿やはは原宿・表参道の方がおしゃれ」であり、取り留めて下北沢の魅力は感じなかった。しかし、ここの店で売っている服のデザインはどこか『和』を感じさせるものや『ハイブリッド』を感じさせるもの、そのコンセプトは多種多様であった。テレビ・雑誌の影響を全く受けない奇抜なデザインのファッションがたくさんあった。
歩いていくうちに、マンションの一室で店を開いていたり、ほんの小さな路地でも服を販売していたり、この街全体がそれぞれの色を持ち、輝きを放っていた。
それからというもの、ぶらり一人旅をすると、自分は必ず下北沢に立ち寄った。
この曲がり角を曲がると、どうなっているんだろう。
この小道は何があるんだろう。
毎回楽しみでしょうがなかった。
その中でもよく見ていたのがBlueberryというブティック。果たして今でもあるのだろうか。
それと、アジアンテイストの雑貨屋『カリマンタン』
この2店は、大学生になってからも、何かと立ち寄り、買い物をしたものである。今となっては再開発の波に勝てず、昔の下北沢らしさは無くなってしまった。
2017年11月。
震災を乗り越え、自分は再びこの街を訪れた。もう、昔のゴチャッとした街ではなくなっていた。小ぎれいなミニ表参道のような街になってしまった。ノスタルジアに浸ること10分。時代の波には勝てないけれど、ボクの心の中にあのおもちゃ箱をひっくり返したような街がいつまでも残っている。