復興シンドローム【2016/11/01~】㉓
「福岡さん、この町ってどうなっちゃうんでしょうね……」
事務所でふと声をかけた。
一仕事終えた福岡さんは、スマホを取り出しながら軽く切り返す。
「もうどうしようもねぇべ。コンビニできて、それで終わりじゃねぇの?もう人は戻ってこねぇよ。もうジジババしかいねぇよ。電車が通ったって、バスが再開したって利用者いねぇんだから。新築の家も誰も住んじゃいねぇ。復興関係の金で家建てて、誰も住まずに取り壊されてんだろ。バカみてぇなことやってんべ。壊すのだってどっかから金出てるんだよ。作業員に貸せばいいのに。もうこの地区はこれ以上どうもなんねぇ」
妙に説得力がある。それをサラッと言ってしまう福岡さんはいつも明るくひょうきんに振舞ってはいるが、実はここまで見通しているなんてこの時まで知らなかった。
「それで福岡さんはこれからどうするんですか」
「ん、ここでちょっと働いて、あとは貰えるもんは貰って、あとはのんびり生きるさ。ここにいる限り食うには困らねぇしな。いつまでも続くとは思わねぇけど、俺が生きてる間はどうにもなんないだろ」
母親と二人暮らしの福岡さんは、これ以上どうにもならないと悟っていた。少し事務所が重い空気に包まれる。
どうしようもねぇべ……
この言葉がいつまでも自分の耳に残っている。
もうどうしようもない……これが彼が刹那的に生きる理由。
下世話な話にパチンコ、そして楽しく仕事をして4時間後にはさっと帰る。家で何をしてるのか、それは分からないが結局は毎日変化のないずっと単調なこの生活がいつまでも続いていくかのような錯覚に心をお落ち着かせているように見える。残酷だが、彼の心の中にも震災が落とした闇が見え隠れする。絶望なんてみんな分かっている。分かってはいるが、分からないふりをして生きているんだ。福島という足枷を見ながら、見ていないふりをして。
「おはよう」
オーナーが午前7時には出勤してくる。
「終わようございます」
自分たちは朝8時に仕事を終える。毎日のルーティーンの中にもオーナーが毎日顔を見せ、世間話をしてくれるだけで大分気がまぎれる。
荒っぽい作業員客の対応にヘキヘキしたボクらは事務所に駆け込むと、パートのお姉さんたちと切り替わるのだ。自分は夕方からの仕事に備え、帰宅し、仮眠をとる。福岡さんは高齢のお母さんと二人暮らしの復興住宅に帰っていく。そうやって毎日が消化されていく。
「おつかれさん」
福岡さんの元気な声が自分の背中に響いた。
もう震災から数年過ぎた。
でも、ボクらの生活は震災中。
そしてこの災いがいつまで続くのか誰にも分からない。
そんな沈黙の絶望感が僕らの心に深い影を落としている。気づかないふりをしていても、それは鈍重にぼくらの心の中に根をはっていた。
福島の地に張り巡らされた「根」はボクらをこの地に引き留める足枷となって、さらに多くの被災を産んでいた。