【健康経営度調査2021直前セミナー!健康経営の深化に向けて持つべき視点】MS&ADインターリスク総研 森本真弘部長をお招きして その4
2020年10月6日、MS&ADインターリスク総研の森本真弘部長をお招きして弊社主催のセミナーを開催しました。森本氏が理事を務める一般社団法人 社会的健康戦略研究所へは、私(吉田)も事業者ユニットの会員として入会させていただいております。
前回から続く
その関連で先ほどのアンケートにもう一度話を戻します。「最も重視している目標」は、上位三つに回答が集中したと申し上げました。その3つである「ワークエンゲージメントを高めたい」「生活習慣を改善したい」「従業員の幸福度を高めたい」回答した企業群の特徴を見出そうと比較した表がこちらになります。結論からいいますと、あまり大きな差が出てこなかった。特に①ワークエンゲージメント型と③幸福度型には大きな差がありません。この結果について経産省・ヘルスケア産業課に行ってお話をしたことがあります。その際に、「ワークエンゲージメントと幸福度を分けているけど、実は一緒なんじゃないですか」とのご意見を頂きました。
「ワークエンゲージメントを重視したい」と回答された方は、会社寄り、経営者目線で回答をした。一方、従業員目線、より従業員に近いスタンスでの場合は「幸福度を高めたい」と回答した。その差があるだけで、実は同じことを目指してるのではないでしょうか、と言われたんです。「なるほど、そんな見方もできるのか」と思って改めてこの表を眺めてみると、幸福度型は中小規模法人に多いとの結果が出ています。確かに中小規模法人は従業員との距離が近くより従業員寄りのスタンスで回答いただいたケースが多くなった結果とみることもできます。一方、大企業の比率が比較的高いワークエンゲージメント型。大企業であれば、絶対数として女性従業員の数も多くなるため、女性に着目した取組みがクローズアップされがちになったということも考えられる。両者(①と③)を同じと考えるのであれば、社員の幸福度に着目した取り組みも有効になってくると考えた次第です。
その幸せというものについて慶應義塾大学の前野隆司教授が因子分解をされています。幸福度を高めていこうというと、何となくふわっとした感じ、漠っとした感じで、人によっては宗教じみた感覚を感じる方もいると思いますが、前野先生が仰るの四つの因子に分けて捉えることで具体的な打ち手が見えてきやすいと思います。
四つの因子を高めることで幸福度が高まると前野先生はおっしゃっています。1つ目の「やってみよう」因子。夢や目標、やりがいを持たせることでこの因子が高まりますが、健康経営に取り組んでる企業の中には、冒頭「ストーリー」につながる話ですけれども、自社の経営理念とか目指している姿、それを従業員としっかり共有、理解してもらうためのミーティングを重ねている企業さんは結構あります。自分の仕事が会社の理念、目指す姿にどうつながっていくのか、最近、ジョブクラフティングという言葉もよく聞きますが、そういった効果が期待できます。
2つ目は「ありがとう」因子。自分が他人に感謝をするだけではなくて、自分も人から感謝をされるような利他的行動を取ることによって、このありがとう因子が高まると言われています。その感謝の気持ちを、見える化しようということで、サンクスカードを贈り合う取組みも、健康経営に取り組む企業で増えてきています。
3つ目は「なんとかなるさ」因子。これはポジティブに考えていこうということですけれども、自己受容を高めていくことで、「なんとかなるさ」因子が高まっていく。これも最近注目されていますが、マインドフルネスを取り入れる企業が増えてきています。マインドフルネスによって自己受容感が高まっていく効果が期待されるそうです。
もうひとつは、「ありのままに」因子ですけれども。必要以上に人の目を気にしすぎないことで、「ありのままに」因子を高く保てるようです。最近在宅勤務も含めて多様な働き方を認めてあげる。人それぞれのやり方を認めてあげる。1on1ミーティングでしっかり話を聞くことで、自信を持って仕事に臨んでもらうことで、この因子を高めていく効果が期待できるようにも思います。
しあわせという漠っとしたものを、4つの因子に分解をしてみると、いろいろ打ち手が見えてきますし、従業員の幸福度を高めてあげられる。それがエンゲージメントを高め、何度もお話をした、いきいき・ワクワクとした状態をつくることにつながっていく、このような視点を持っていただくことも重要になってくると考えています。
「Society 5.0」次にやってくる社会だと言われています。
Society 5.0の大きな要素として、経済的発展と社会課題の解決、これを料率していくことが期待されています。従来この2つは相反するものと考えられてきましたが、これらを両立させていくことが求められる社会がSociety 5.0です。ここで言われている経済的発展が自社にとっての持続的な成長になります。一方、社会的課題の解決として、SDGsの取組みがあります。
そのSDGsの取り組みについて経済産業省が報告書をまとめています。この記述の中に面白い記述があります。社会課題の解決。これまで解決できなかった社会課題、それを解決していくにはやっぱりイノベーションというものを生み出さないとなかなか実現できない。SDGsの達成にはイノベーションというものが重要な要素になっています。
さらにいうと、その社会課題の解決というものを重要な事業機会、つまり自社にとって発展していく機会と捉える。先ほど言ったSociety 5.0の経済的発展と社会的課題の解決を両立させていく、そんな機会だ捉えるにはやっぱりイノベーションがないと難しいよねと言っています。
冒頭ご紹介したスライド、実はこのスライドの中に健康経営を進めていくことによって「イノベーションを生み出す源泉の獲得、拡大につながっていく」ということがきちんと書かれています。冒頭からお話を思い出していただくと、「健康経営に取り組むに際してのストーリーをきちんと描きましょう」「企業として何を目指して取り組んでいくのかということをはっきりさせましょう」「その取り組みの中でどういった人財を求めているのか」という流れでした。イノベーティブだったり、クリエイティブだったり、チャレンジング。そんな人財を求めている。そうした能力・素養がいかんなく発揮されるために、いきいき・ワクワク、しあわせを感じられるような環境を整えていきましょう。
それによって社員が力を発揮し、イノベーションを生み出す源泉になる。そのイノベーションは社会課題の解決にもつながるし、同時に自社に新たな事業機会を創り出し、より大きな成長、持続的な成長を実現していく、そんな流れにつながっていきます。実はその大きな流れをつくる大元にあるのが健康経営なんだと、そんな風に捉えていただくことができます。
こうした文脈で捉えていただくと、健康経営への取り組みというものがさらに大きな深い意味を持ちますし、取り組む意義、価値というものがより大きく感じられる、と思います。ぜひ、これからもより深い意味のある、効果の大きな健康経営に取り組んでいっていただきたいと思いますし、その辺りのお手伝い、サポートができればぜひお手伝いさせていただきたいという風に思っております。
私のお話は以上になります。ご清聴どうもありがとうございました。