【傍聴記】すすきのラブホテル首狩り事件、父親の第2回目公判【田村修被告】
2025年1月14日から札幌地方裁判所の新年一発目の裁判員裁判が始まった。被告人はすすきのラブホテル殺人首切断事件の田村瑠奈被告の父親である田村修被告である。
修被告の初公判は傍聴席49に対し305人が並び、私も並んだが案の定外れてしまった。翌日の2回目公判は初公判より明らかに傍聴券求める人が少なく、当選番号を見るに半分くらいの人が当たったように思う。私も運良く当たったので早めに805号法廷に並び、真ん中列の記者席の後ろ(前から3列目)をもぎ取った。この位置は被告人入口と被告人席が見えやすい。
相手は超大物被告人なのでセキュリティチェックが非常に厳しい。法廷に持って行けるのは筆記用具とメモ帳のみ。上着はハンガーにかけ、カバンはロッカーの中へ。法廷に入る前にセキュリティチェックあり。
先月も結構大きな殺人事件の裁判員裁判をやっていたが、ここまで厳しいチェックはなかった。と言うか他の被告人と同じように普通に入れた。改めてこの事件の大きさと注目度の高さを伺えた。
被告人:田村修
事件名:令和6年(わ)第156号
罪名:殺人幇助、死体遺棄幇助、死体損壊幇助、死体領得幇助
被告人:田村修
弁護人は若い男性、中年男性、女性の3人
間もなくして被告人入口から田村修被告が警備員1人を携え入廷。スーツ姿で逮捕時よりかなり痩せており頬がこけているが妻である田村浩子の公判に出廷させられた夏頃よりかは幾分か元気そうに見える。身長は173cm程度で白髪がかなり目立つ。柔和な顔立ちをしており著名な精神科医としての知性のようなモノを目の奥に感じた。席に着くと修被告は裁判資料に目を通し始めた。
刺殺&首狩りビデオの内容と詳細
証拠調べの続きが始まった。
若い女の検察官が昨日の続きを読み上げる。
以下、ホテルレッツすすきの202号室での田村瑠奈被告と被害者との会話。瑠奈撮影のハンディカムには刺殺&首切断動画(お嬢さんの作品 by浩子)が残っていた。ホテルの浴室テレビの上に置いて撮影した模様。
犯行時の被害者の様子はアイマスクで視界が覆われ両手を後ろ手に結束バンドで縛られており、上半身は裸(下半身は写ってないため不明)
瑠奈はレインコート姿、金髪ウィッグとゴーグル付きマスクを着用。両手にナイフを逆手で持っている。
分かりやすいように瑠奈のセリフを女の検察官、被害者のセリフを男の検察官が読み上げた。
2023年7月1日23時11分頃、撮影開始
瑠奈「うんうん」
被害者「新人さんは手の抜き加減分からないと思うけどしっかりやってね」
瑠奈「真面目にやったら疲れちゃうよ」
ここで浴室へ移動
撮影から1分40秒後、被害者はバスタブの縁に座っていて後ろに瑠奈が構えてる状態。
瑠奈「シースルーのスケスケの服に着替えたよ」
被害者「私も凄くいやらしい服持ってきた」
瑠奈「前(陰茎のこと?)見せて、いやらしいから」
被害者「ゑ?」
瑠奈「いやらしいこと、想像してるんでしょ?」
瑠奈「人生で1番後悔してることは、私との約束を破ったことでしょ?」
被害者「・・・ゴム付けなかったもんね」
瑠奈「過去には?」
被害者「なかった」
直後、瑠奈は被害者の右頸部を9回刺した。
被害者「うわああああああ!!!!ごめんなさいごめんなさいごめんな(ry」
画角外でゴン、ゴンッ、ゴン!!!と被害者がバスタブ内に倒れる大きな音。
瑠奈はバスタブに向けてシャワーをかけ、レインコートに付いた返り血も洗い流した。
23時17分
バスタブに倒れてる被害者を引き出そうとするも重くて持ち上がらず「嘘でしょ?」と瑠奈。
23時19分
被害者の首の切断開始
約29分後、頭部と胴体の切り離しに成功。
瑠奈は被害者の頭部を持ち上げ床に置き、セルフィー。その後、金槌で被害者のスマートフォンを叩き割った。
23時59分
スーツケースとキャリー付きリュックサックを浴室に移動。バスタブにお湯を貯め、浮力を使って被害者の身体を持ち上げ、何とか引き摺り出した。
そして強力カビハイターで浴室内の掃除をした。
その後被害者の足を持ち上げ胴体をスーツケースに収めようとするも「入らない!」と瑠奈
日付が代わり24時過ぎ、瑠奈のハァハァという息切れの音と画角外でスーツケースを閉じる音。
撮影開始から1時間20分後にスーツケースに被害者の頭部を入れて24時34分頃に撮影終了。
瑠奈が所持していた凶器たち
①ナイフA→令和5年5月28日(瑠奈被告が初めて被害者と出会った日)に楽天市場で購入。DNAの付着無し
②ナイフB→6月25日、修被告のAmazonアカウントから購入。被害者を刺殺した際に使われたもの
③ノコギリA→6月8日、修被告が1人でDCM旭ヶ丘店に立ち寄り購入(瑠奈被告が背負ってたキャリー付きリュックサックなども同日同店で購入)。刃に被害者の組織片が付着しており、首を落とす際に使用された。
④ノコギリB→6月19日、瑠奈被告と修被告が2人でドンキホーテ平岡店で購入。刃に被害者の血痕が付着しておりこちらも犯行に使用されたものと思われる。
⑤キャリーケース→6月25日、瑠奈被告と修被告の2人でドンキホーテ平岡店で購入。
⑥強力カビハイター→6月30日、修被告が1人でツルハドラッグ新札幌店で購入。
⑦金髪ウィッグ、アイマスク、ゴーグル付きマスクなど→7月1日(犯行当日)、瑠奈被告と修被告の2人でドンキホーテ平岡店で購入。
※後に出てくるお嬢さんの作品こと被害者の顔剥ぎ頭部損壊ビデオに使った多機能ナイフ(スプーン、フォーク付き)は6月2日に瑠奈被告と修被告の2人でドンキホーテ平岡店で購入した。
瑠奈と被害者の馴れ初め
令和5年5月中旬頃、瑠奈被告が修被告に「クラブに行ってみたい」とお願いした。
修被告は札幌市内のクラブイベントを調べ、5月28日にキングムーの閉店ナイトなるイベントを知り、瑠奈被告に伝えた。
瑠奈「行ってみたい」
■その前後の浩子被告と修被告のLINEのやり取り
5月27日
浩子「お嬢さんが楽しめそうなイベントはありますか?」
修「キングムーのラストナイトにお連れします。こちらはいつでも行けます」
浩子「お嬢さん、まだ下りてらっしゃいません」
5月28日、深夜1時頃
浩子「お嬢さん、先ほど起床しました」
同日、深夜3時頃
瑠奈被告と修被告がキングムーに入店。店内の防犯カメラによると、瑠奈被告がステージで踊り狂う様子を人を何人か挟み修被告が後ろでジトッと観察。
瑠奈被告と被害者の間にいた人が移動、2人は急接近。抱き合い、瑠奈被告は笑顔を見せる。瑠奈被告は被害者の首に手を回し、瑠奈からキス。
※修被告は娘が女装の中年男性とイチャイチャする様子を後ろでずっと見つめていた。
同日朝の7時頃
瑠奈被告が修被告に被害者を紹介、これから2人でカラオケに行ってくると伝える。
修「お嬢さんはクラブで知り合った人とラウワンに行きました」
浩子「すごい!」
■同日朝の10時頃
修「ススキノのラウワン前、お嬢さんまだです」
浩子「了解です」
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修「今お嬢さんと合流、寄るところがありますが後で話します」→浩子と20分間LINE通話
修「後でお嬢さんから内容聞くと思うが、アイツ(被害者)はトンデモナイ奴だ!」
■被害者と別れ、修被告の元に戻った瑠奈被告、様子がおかしい。
瑠奈「ベロチューされてホテルに連れて行かれた。社会見学がてらと促され着いて行ったら、ゴム付けずにやられた。シーツに血が着いた。アイツはごめんと言って逃げた」
修被告、それを聞くや否や同区の予約無しで即日行けるウィメンズクリニックに瑠奈被告を連れて行きアフターピルを処方してもらった。
■5月28日の瑠奈被告の日記より
「間違ったヤツに連れて行かれた。薬と検査費用で17000円。自分の手で始末する」
被害者探し開始
被害者が「ともちん」と名乗っていたことから
6月8日、職場のパソコンから
「札幌 女装 ともちん」「札幌 女装 ともちん クラブ」とGoogle検索
■6月17日~18日にかけての修被告と浩子被告のLINEのやり取り
浩子「鹿(被害者のことだと思われる)がいるかどうか、クラブに潜入できますか?」
修「22時~短時間なら行けます」
浩子「あなたなら20分で見つけられるとお嬢さんが仰っています」
修「今日は22時から(クラブが)やってるみたいです」浩子「活動資金は有りますか?」
修「あります」
■瑠奈被告、怪談バーに入店
修「お嬢さん、スリラーナイトに行きました」
浩子「了解です、お疲れ様です」
修「リサーチしたクラブがタバコ臭いです。お嬢さんはもう1件のクラブに入ります。私は待機」
女装ネーム「ともちん」見付かる
目撃情報により瑠奈被告と被害者がクラブに一緒にいるところが見付かる。情報提供者は24歳男性。以下、彼の証言である(長かったので要約)
「私は6月18日の朝の4時頃、女の子(=瑠奈被告)をナンパし、電話番号を教えたことをはっきり覚えている。女の子は明らかに女装だと分かる中年のおじさんと一緒にいて、2人は向かい合って話していた。二人の間に険悪な様子は見られず普通に会話を楽しんでいた。女の子がトイレに向かった時に話しかけて自分の連絡先を教えた。その後ハグして別れ、女の子は女装おじさんの所へ戻って行った。気付いたら2人は居なくなっていた」
田村家の冷蔵庫に上記の情報提供者が書いた連絡先が貼ってあった。
田村親子の狂った犯行計画
■修被告の検索履歴
6月20日
職場のパソコンから
「ハイターで指紋は消せる?」「物に付いた指紋は布で擦ると消える?」といった内容のYahoo知恵袋を閲覧。
また「ハイター 皮脂汚れ」「ハイター 浴室用」と検索
6月25日
修被告所持のスマートフォンから
「エース エキスパンタブル 重量」「スーツケース 耐荷重 100kg」「スーツケース 耐荷重 どのくらい?」と検索。
また「LLサイズのスーツケースは何kg入れたら車輪が壊れる?」という内容のYahoo知恵袋を閲覧。
この時間帯、瑠奈被告と修被告は犯行に使ったスーツケースを購入したドンキホーテ平岡店にいた。
6月29日&7月1日
修被告所有のスマートフォンより
「殺人 時効」
また瑠奈被告所有のスマートフォンからも「殺人 時効」と複数回検索した形跡あり。
■浩子被告の行動
上記の通り犯行に使った凶器たち以外にも、殺人&首狩り計画に関わりがあると強く推認されるモノを浩子被告も購入。
■瑠奈被告が被害者に初めて会い、ホテルで性行為をした5月28日からツルハドラッグ新さっぽろ店に7回来店、刺殺&首狩りビデオ撮影以後は3回来店
6月22日→カビハイター、カビハイター付け替え、エタノール500ml 2本購入
6月23日→エタノール500ml3本
■同様にイオン新札幌店には5月28日から合計29回来店。事件前22回、事件後に7回来店
6月22日→エタノール500ml2本
6月29日→エタノール500ml
このように用途・目的は不明だが浩子被告も尋常ではない量のエタノールを購入していることが分かった。
修被告と浩子被告のLINEのやり取り
令和4年2月27日~令和5年7月24日まで約1万1000通のやり取りがあった。家庭内で普通に行うような会話すらもLINEでやり取りしていたという有様だった。
■ディスカッションとデモストレーション
令和5年6月18日から「ディスカッション」と「デモストレーション」なる単語が頻出するようになる。それ以前にディスカッションというワードを使った形跡無し。
■6月27日の浩子⇆修のLINE
浩子「ディスカッションしたいので、上に来て下さい」
浩子「デモストレーションをするから来てと、お嬢さんが仰ってます」
上記の犯行に用いた凶器を集めた直後に2人はこのようなやり取りをしていた。
ディスカッション→殺人計画の話し合い?
デモストレーション→SMプレイと首落とす練習?
■犯行直後の2人のやり取り
浩子「昨日はお疲れ様です。本日はどうなさいますか?」
修「昼過ぎに帰ります」
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修「これからお嬢さんをリビエラにお連れします」
修「14時からひまわり会の掃除ですが、丸1日寝ていないのでボンヤリしてます」
■7月7日の瑠奈被告による頭部損壊ビデオについてのやり取り
修「帰ります、今スタバにいます」
浩子「撮影カメラマンするでしょ?」←浩子トーク削除
修&浩子が削除したLINEのやり取り
LINE株式会社に2人のトークを差し押さえして復元を試みた。なお双方が削除しているものの一部は復元できなかった。
6月12日
浩子「お嬢さんがドンキに果実酒用のリン酸やアルコールは売ってる?と仰っています」
6月17日
浩子「鹿がいるかクラブに短時間潜入できますか?」
6月21日
浩子「デモストレーションしたいから上に来るようお嬢さんが仰っています」
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修「お嬢さんはクラブで知り合った人(被害者?)と鞭を使ったプレイをするそうです」
浩子「その後はいかがですか?」
修「先程はご機嫌な感じで出てきまして、私はこれからメガドンキで鞭を買ってきます」
6月28日
浩子より瑠奈の様子やディスカッションをする旨など
6月29日
修より車の中で瑠奈が暴れ、首を絞められたことを報告
7月1日~2日
浩子「昨日は大変お疲れ様でした」
双方の発着信履歴あり
7月4日
巨大なガラス瓶(被害者の目玉を入れてたもの)についての内容
7月7日
先述の浩子が修に撮影カメラマンするよう依頼した内容など
7月14日
週刊誌についての内容
復元できなかったが浩子被告のスマートフォンの文字入力履歴を抽出した内容
7月1日「そういえば車のGPSは残りますか?」
ここで16時45分となり2回目の審理が終了した。
比較的ゆっくり読み上げていたので、詳細にメモすることが出来た。
所感など
休廷を何度か挟んでいるものの11時~17時までの長丁場、一瞬たりとも目が離せなかった。
裁判員裁判は基本的に審理時間がとても長く、集中力の無い私はうたた寝したりボンヤリしたり途中退席もデフォだが、田村修被告の2回目の公判は一度も寝ることもボンヤリすることもなく、ペンを走らせる手が止まらなかった。そのくらい見応えがあった。
報道では婉曲表現に書き換えてあったが、冒頭の瑠奈と被害者の会話が非常に生々しかった。
驚いたのはカメラを回してものの数分で躊躇なく被害者を滅多刺し、30分かからずして無学で無力で引きこもり20代女性が成人男性の首を落としたこと。あまりに手馴れているというか効率がよすぎる。これも修被告とのデモストレーションの賜物か。
ついでに被害者が瑠奈に避妊具無しの性行為を強いたことがほぼ間違いないものになった。しかし会話のやり取りが面白すぎて不謹慎ながら笑ってしまった。その後に追い討ちをかけるように若い女の検察官が大真面目な顔で「札幌 女装 ともちん」などと読み上げたときは我慢出来ず吹き出してしまった。
さて最大の争点である殺人幇助についてだが
スーツケースの耐荷重について詳細に調べていたことやディスカッションやデモストレーションなどのワードから修被告(と浩子被告)は娘の殺人計画&死体損壊計画を事前に知っていたと強く推認できる。
しかし相手は勤医協中央病院精神科科長を勤めた著名な精神科医である田村修大先生、その辺をネチネチ突っ込まれてものらりくらり上手く交わしそうではあるが・・・
まさに真実は小説より奇なり、を体現した狂った家族。
後に映画化されウン十年ウン百年経っても語り継がれる事件になることは間違いない。
2025年1月21日追記
本日の田村修被告の3回目公判は外れました。
まだ被告人質問に入ってないので、これからが勝負。せめて判決言い渡しだけでも当たることを祈るのみ・・・