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推しと推しが繋がる



「ねぇ、キングウィステリアって今なっちゃんが出てる舞台だよね?」

「そうだ。昨日見てきたぞ。結構面白かった」

「いや、周平くん界隈のアーティストさんの1人、今日見に行ったみたい。時間的になっちゃんの回見てるわ」

「はあ? なんで? どういうことだ? なっちゃんと知り合い?」

「いやいやそれはないっしょ。知ってる役者でも出てたんじゃない? この子アーティストだけど役者やってるから」

「それにしては界隈狭すぎるな」

「謎だね。でも勉強のために他人の舞台見たりライブ見たりするのってすごい大事だよね。それがさ、毎回おんなじ対バンしかしなくて、勉強のためじゃなくて営業のための馴れ合いになってくると身内感強くなってさー、マジであの界隈みたいにク」

「チャラ男界隈の悪口はそこまでだ」

 主人の推しのなっちゃんが出てる舞台を、私の推しの周平くんが出てるフェスのアーティストが見に行ったらしい。

 どういう繋がりか謎で、我が家で今大事件である。
 もしかしたら主人の推しとわたしの推しが繋がる日が来るのではないか。いやまさかそんな……。妄想が膨らむ。


 作家も勉強のために片っ端から本を読む。小説だけではなく、自己啓発やエッセイ、特定の知識が必要なら参考書なども読み漁る。
 それだけではなく、映画も舞台もライブも見る。それを見て何を感じたかを、頭の中で細かく文章にして書き起こす。
 ライブを見ながら常に頭の中の自分に喋りかけているイメージだ。

 楽しいことも嫌なことも、どう文章で表現するかいつも考えている。経験が大事。経験が乏しければ心理描写は書けない。

「ライブもさぁ、良いライブする人ってそれだけ色んなライブ見てんのよ。ううん、ライブだけじゃなくてさ、舞台も映画も、あと写真も見るね。どの角度がカッコいいかとか分かるじゃん? 低レベルな対バン相手のライブとか、友達のライブしか行かないやつがさ、良いライブが何かなんて分かるわけないんだよ」

 技術が追いつかなくても、「良いライブ」が分かっていれば、それを目指して努力できる。
「武道館に行く」と言ってるアーティストは、武道館でライブを見たことがあるのだろうか。何回? 横アリは? 東京ドームは? ブルーノートは?
 一流を知らなければ、一流を目指せるわけがない。

「その子は? あんた的にどうなんだ?」

「どうもなにも、普通に音楽的に好きだから一回ワンマン見に行ってるよ。周平くん目当てじゃないよ、この子弾き語りだから」

 推しがサポートギターだとサポート目当てでライブに行っていると勘違いされそうだけど、わたしは良いと思ったアーティストは周平くんがいてもいなくてもライブを見に行く。

 ただ「周平くんがいたらもっと良いな」と思う程度である。所詮サポートはサポートだ。主役ではない。

「チャラ男繋がりがなんでなっちゃん見てるんだ?」

「わたし前に何回かXになっちゃん関係ポストしてるけど……いやまさかね」

 真相は謎だけど、想像すると楽しい。
 もしなっちゃんたちと周平くんたちが繋がったら、現場に主人のオタクさんたちが集まる。
 なっちゃんはまだまだオタクついてないけど、騒げるオタクが3人は確実に集まるので、オタク少なくても普通にアイドル乗りにはなるだろう。

 どんな場所でも楽しむことは大事。
 人それぞれ、幸せだと感じる人生レベルがある。
 人気があってもなくても、今に満足することとで幸せだと感じるから。

 でも、それがわかっている人は、もう少し上を目指してもいいと思う。

 もう少し、クオリティーをあげてもいいと思う。
 喜ばせたい相手はだれなのか。
 見てもらいたい相手は誰なのか。

「なんか面白いよね。ライブ行ってると色んな人同士が繋がってて。まぁ周平くんところは身内同士が繋がっててあんまり客を見てないけどさ、アイドルはオタクしか見てないしオタクを1番大事にしてるから、ライブ見ると学ぶことはあるんじゃないかな」

 推しと推しが繋がるかもしれない。 
 楽しみだ。

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