文学フリマから武道館へ
「見て、周平くんのお礼動画。一人だけ縦なの。めっちゃウケる」
「チャラ男バカだな」
12月にあった推しのサポートギタリスト、周平くんのライブのお礼動画が今日届いた。
プレミアムチケットを買った人の特典だ。
ちなみにこのライブ、わたしは来場と配信セットのプレミアムチケットを買っていたのに、現地にわたしが大っ嫌いなアーティストが客で来ていたので、わたしはライブに行くことができず配信で見た。
みんな横で撮影しているのに、周平くんだけ縦で撮影しているという、さすが我が道をいく金の鳳凰らしいバカっぷりである。
「でもまぁ、お礼動画に周平くんを入れただけマシだね。映ってなかったらこの界隈のチケット2度と買うかってなったもん」
「そこは空気読んだな」
推しがサポートギタリストだと、ライブではいつもアーティストの後ろにいる。
配信ライブだと、カメラに向かってキメ顔をするアーティストを見ながら、
「わたしが見たいのお前じゃないんだけど! そこどけ! 周平くんが見えないだろ!」
と、イライラしながら見ることになる。なんとも切ない。
まともなライブをするアーティストなら楽しめるけど、本当にどうしようもないライブをするアーティストもいるので、いくら周平くんが出ているとはいえ、時間の無駄なので見ない。
「この日の配信最悪だったなぁ。立ち位置悪くて全然映らないし、ツイキャスの画質悪すぎだし、商売なめてんのかって感じ」
「ツイキャスは画質悪いな。映らないのは仕方ない。サポートなんだから」
最初から最後まで全部周平くんだけを映す映像があるなら、わたしは5000円くらいだったら買うと思う。
周平くん固定カメラ。誰かよろしく。
「でも大丈夫! 5月11日にわたしが本売って、全力で周平くんを有名にするから、周平くんと周平くんに付随するアーティストを根こそぎ推しあげるんだ」
「なんだそれ」
「有名になるっていうのはね、良いとこも悪いとこも目立つってことなの。それに耐えられるアーティストじゃないと、トップにはなれない。だから今から目立つ準備しておけよって感じ」
「あんたすごい自信だな」
自信というよりは妄想だ。
「文学フリマなんてさ、読書家ばかりで普段ライブに行かないような人たちなんだから、ここの層をライブに興味持たせたらすごいと思うんだ。アーティスト呼んで身内ライブしているのとは全く別になるわけだからね。周平くんの界隈のアーティスト、武道館に行くって言ってんだよ。武道館に行くんだったら、アーティスト束て身内ライブしている場合かっての。一般客囲い込めよ」
【小説を音楽に】で、YOASOBIが跳ねたじゃないか。もっと上手くやる方法があるんじゃないかと思う。
「わたしのmixi2での周平くんコミュニティも、5月11日以降、見る人が増えると思うんだ。だから読者の楽しみのためにも、今から作り上げておくんだ」
「あんたそこまで考えてるのか」
「考えてるよ。文学フリマとライブと周平くんとギター、全部繋げる。これは多分、わたしにしかできないと思うから」
50冊か、100冊か。いくつ作っていくつ売ればいいんだろう。100円で売るつもりなので、作りすぎも痛い。
何冊作るか。今はそれを考えている。